米が核廃棄条約離脱を表明、中国のミサイル配備強化を念頭に

2018/10/23
更新: 2018/10/23

トランプ米大統領は20日、訪問先の米ネバダ州で記者団に対して、米国と旧ソ連が1987年に合意した中距離核戦力全廃条約INF)から脱退すると表明した。

大統領は「ロシアが条約に違反し続けてきた」と批判し、「われわれは条約を遵守してきた」と述べた。

米紙ニューヨークタイムズ19日の報道によると、近年中国の中距離ミサイルの実戦能力の向上も条約離脱の一因だ。

条約の制約を受けない中国は冷戦時代末期から、中距離ミサイルなどの開発・生産に力を入れ、唯一、海外に輸出している国。1988年中国当局はサウジアラビアに対して、中距離ミサイルDF-3A、50~60発を輸出したとされている。

米メディア、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、トム・コットン米上院軍事委員空陸小委員会委員長(共和党)は、トランプ政権に対して、INF条約からの離脱を助言した。「ロシアが明らかに条約に違反しているし、制約を受けない中国は同種類のミサイルを大量に保有している」

近年、中国が増長する軍事力に米国は懸念を抱いている。その好例となったのは中国軍が現在稼働中の中距離弾道ミサイル「東風-21D」。最大射程距離は1700キロで、航行中の米海軍空母などの艦艇を撃破する「対艦弾道ミサイル(ASBM)」。中国近海に米海軍の空母戦闘群が接近するのを妨げる戦略の柱と位置づけられる兵器だ。

その後、東風-21Dの改良版、東風-26(DF-26)は射程3000~5000キロ。グアムの米軍基地への核攻撃が可能で、「グアム・キラー」との異名を持つ。

中国国防省は今年4月、DF-26を戦略ミサイル部隊「ロケット軍」に実戦配備したと発表した。

ハリス米太平洋司令官(当時)は昨年4月下院軍事委員会で、中国が保有する弾道・巡航ミサイルの9割が(米国が条約に縛られ)保有できないものとし、INF全廃条約を時代遅れな条約だと訴えた。「条約に署名していない国によって詐欺に遭い、無一文にさせられたようなものだ」

オバマ前政権で国防総省副次官補(東アジア担当)を務めたアブラハム・デンマーク氏は19日ツイッターで、INF離脱で米軍は中国の軍事脅威に対抗するためのシステムを構築することができるとの見方を示した。

VOAは、今後米政府は海軍が保有する巡航ミサイル・トマホーク(BGM-109)をGBIミサイル(ミサイル防衛用の弾道弾迎撃ミサイル)に改造し、日本およびグアムに配備する可能性が高いとの見解を示した。

INF条約は冷戦時代、当時のレーガン米大統領とソ連のゴルバチョフ書記長によって1987年に締結された。射程500~5500キロの地上発射型弾道ミサイルと巡航ミサイルの保有を禁じた。

22~23日にロシア訪問を予定している米のボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、ロシア政府に対して米のINF離脱を説明する見通し。

(翻訳編集・張哲)