日本の対中ODA終了「中国が先進国の援助を軍事力増強に利用」との指摘も

2018/10/31
更新: 2018/10/31

世界第二位の経済大国である中国は現在も、先進国から政府開発援助(ODA)を受けている。過去30年間、中国は世界最大のODA受け入れ国の1つとなった。専門家は、先進国からの経済援助と世界貿易機関(WTO)加盟後に取得した経済利益を、中国当局は国民生活改善に拠出したことがないと指摘した。また「欧米諸国から得た資金援助を、欧米をその支配下に置く目的で、軍事力拡大・ハイテク技術の開発に使っている」と警告した。

日本政府の対中ODA

安倍首相は10月25日、人民大会堂で開催された日中平和友好条約締結40周年記念イベントに出席した際、「中国は世界第2位の経済大国へと発展した。日本の対中ODAは歴史的使命を終えた」と述べた。

日本は1979年、「文化大革命」が終わったばかりの中国に対してODAを供与し始めた。

外務省の発表によると、2013年までに対中ODA総額は、有償資金協力(円借款)が約3兆3164億円、無償資金協力が1572億円、技術協力が1817億円に達した。

日本は中国にとって最大の経済支援国で、世界の対中経済援助の約67%を占める。同時に、中国は日本の対外ODAの最大受給国である。

中国国民「日本に感謝」

中国国内インターネット上では、日本メディアが10月23日、日本政府の対中ODAの終了方針を報じたことを受け、ネットユーザーが次々と支持の意を示した。なかには、過去40年間日本政府の対中支援について、中国当局がほとんど言及してこなかったことを批判する人もいた。

1979年の中国は、10年間続いた「文化大革命」が終わったばかりで、国内経済が破綻の危機にさらされていた。日本政府からのODA供与は中国当局にとって「命綱」であった。80年代に入ってから、当局はこの資金で、交通・通信・病院などのインフラ整備、鉄鋼業を含む国内産業の振興・発展を可能にした。

いっぽう、中国当局は国民に対して、日本政府の対中ODAを言及、あるいは明示したことがなく、逆に情報統制を行ってきた。

同時に、当局は中国の幼い子どもから大人まで、学校教育や抗日ドラマなどを通じ、反日教育を繰り返し、日本に対して「恨む」感情を植え付けてきた。日中関係が緊迫すれば、中国当局はたちまち学生や若者を動員して、「反日デモ」を行わせた。世界各国のメディアが、暴徒化した若者らが日本料理店、日系自動車などを破壊する様子を次々と報道した。

日本政府の対中ODA中止の報道を受けて、中国人ネットユーザーの間では、「日本に感謝する」との声があがった。

また、「(日本のODA中止を)賛成!中止しなければ、中国人は日本政府が中国に援助したと知ることができなかっただろう」と恩知らずの中国当局を非難する人もいた。

中国外務省の華春瑩報道官は23日の定例記者会見で、日本政府は対中ODAプロジェクトを通じて「実益を得た」と述べた。

これに対して、ネットユーザーは「日本は(対中ODAで)何の利益を得ただろうか?(日本は)逆に中国の反日感情、日系店舗への破壊行為を目にしてきたのではないか。『すごい!我が国』の人は、簡単にデタラメを言う。世界一の恥知らずだ」と反論した。

英国などの先進国も

英メディア・デイリーメール2013年の報道では、近年著しい経済発展を遂げた中国に対して英政府は、毎年政府援助を実施していることについて、英国内から疑問の声が上がっている。一部の英国民は政府に説明を求めているという。

英政府は2011年に中国向け政府援助を中止する方針を示した。英メディアにの報道によると、英政府は12年、中国に対して2740万ポンド(約40億円)の援助を実施した。

デイリー・メールが今年4月26日、国際開発省が対中政府援助をすでに終えたにもかかわらず、英国の他の行政機関が2016年、中国に対して4690万ポンド(約67億4851万円)の援助を行ったと報じた。

英国会議員のポーリーン・ラッサム氏は4月25日、国会質疑でビジネス・エネルギー・産業戦略省の高官、サム・ジマ(Sam Gyimah)に対して、中国向け援助の必要性について質問した。

中国と英国は1999年『発展協力に関する覚書き』に調印した。英政府はこれ以降、国際開発省(DFID)を通じて、中国の貧困対策、エイズ予防、教育などの分野において政府援助を実施したという。

日本と英国のほかに、ドイツやフランスなどの国も70年代末以降、中国当局に政府援助を行っている。

経済協力開発機構(OECD)と世界銀行の2008年の統計によると、国際機関から拠出される多国間援助と二国間援助を受給した国のランキングで、中国は4位となった。中国が毎年先進国から受給した援助金額は、約26億ドル(約2944億円)にのぼるという。

中国ポータルサイト「網易」が2013年12月に掲載した記事で、中国向けの二国間援助のうち、年間援助金額1~6位までの国は、日本、ドイツ、フランス、英国、スペインと米国になっている。同記事によると、1979年から2003年まで、中国当局が受給した先進国政府の資金援助総額は1072億ドル(約12兆1379億円)に達した。

同記事によると、先進国の多くは12年ごろ、直接的な対中資金援助を中止した。しかし、先進国は中国当局との経済協力プロジェクトを通じて、中国の環境問題や貧困問題、衛生などで支援を続けている。

海外援助で軍事力増強

日本メディアを含めて、欧米諸国政府とメディアは中国当局が先進国からの政府援助を中国軍の軍事力拡大に使っていることに強い懸念を示した。産経新聞は10月26日、対中ODAは「戦後最大級の失敗」と評した。

在米中国問題評論家の朱明氏は大紀元に対して「毛沢東時代、飢え死にする国民が続出しても、当局は核武器の研究・開発を盛んに行っていた。中国経済が良くなった今も、当局は同じことをしている。北朝鮮も同様だ」と述べた。

また「中国当局は、経済援助を提供した外国政府との約束も守らないだろう」とも述べた。朱氏は、海外援助資金は、国内貧困対策などに投じられることがなく、最終的に中国共産党の腐敗幹部らの懐に入ると指摘した。

いっぽう、中国当局の国防費は1989年から2016年まで、2010年を除いて2桁成長を続けてきた。16年からは1桁増となった。

中国当局は今年3月、2018年の国防予算案について、前年実績比8.1%増の1兆1069億元(約17兆9900億円)と決定した。17年の国防費(実績)は1兆226億3500万元(約16兆6200億円)だった。

中国の年度軍事費は米国に次ぐ規模だ。欧米諸国政府と研究機関は、未計上の軍事費を加算すれば、実際の中国の国防予算は当局の公表よりも多いと推測している。

大紀元時事コメンテーターの夏小強氏は、中国当局は軍事力増強とともに、欧米各国のハイテク技術も窃盗していると指摘した。「当局は軍事用途の目的に、外国の技術を盗み、国内ハイテク産業の発展を図り『中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025』を実施している。世界各国に大きな脅威を与えている」

(翻訳編集・張哲)