どうすれば止められるのか 中国の臓器収奪 英国で民衆法廷スタート

2018/12/10
更新: 2018/12/10

中国では無実の人々が臓器を移植手術のために強制摘出されているとの懸念について、専門家や証言者ら30人が集い、証拠や分析をまとめる「民衆法廷」が始まった。英国ロンドンで8日~10日に公聴会が開かれている。

民衆法廷は、国際法上問題があると考えられる議題を有識者らが検証する模擬裁判。これまでイラン、ベトナム、北朝鮮における人道犯罪や人権問題を取り上げ、世界各地で開かれた。民衆法廷は主に過去の戦争に絡んだ人権問題を取り上げてきたが、現在進行形の人道犯罪疑惑を取り上げる例はまれ。

中国が国家ぐるみで無実の囚人の臓器を移植ビジネスのために利用しているという人権団体・中国での臓器移植濫用停止ネットワーク(ETAC)の申し出を受けて、民衆法廷は「開廷」する。国際法や人権問題に詳しい有識者が陪審員役に就き、医療関係者や被害者が証言者として出廷する。

中国臓器強制収奪についての民衆法廷は、旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷で検察官を務めたジェフリー・ニース卿が議長を務める。ほかの陪審員役は、ロンドン拠点の弁護士でイラン政府による大虐殺を調査する民衆法廷顧問を務めたハミッド・サビ氏、ロンドン大学心臓外科医マーティン・エリオット教授など、専門家6人からなる。

公聴会では、問題に関わったとみなされる中国政府機関や個人を調査していく。初日を迎えた8日、6人の専門家のほか、中国国内で信仰を理由に拘束された経験を持つ中国からの難民3人が証言台に立った。法輪功学習者である3人は拷問のほか、詳細な身体検査を受けたと述べた。

ETACのスージー・ヒュッジ代表は、複数の人権団体による報告から、2000年代から中国で起きた臓器移植ブームでは、共産党政権から弾圧を受けている気功修煉法・法輪功を学ぶ人々の臓器が利用されていた可能性が高いと述べた。

中国の臓器移植について、2016年にカナダの人権弁護士デービッド・マタス氏、同国政府の元アジア太平洋地域担当大臣デービッド・キルガー氏、在英ジャーナリストのイーサン・ガットマン氏が発表した調査報告書「血塗られた臓器狩り/大虐殺―更新版」によると、中国では年間6〜10万の臓器移植を実施している。中国衛生部は約1万~2万件と発表している。

報告書によると、中国共産党政府は精神と宗教の自由を大規模に弾圧するために「大量の法輪功学習者、ウイグル人、チベット人、家庭教会信者の殺害に関わっている」と指摘している。

12月8日、臓器収奪の民衆法廷の顧問を務めるハミッド・サビ弁護士(Justin Palmer)

ハマッド・サビ法廷顧問は証言を聞き「数々の拷問を受けた上に臓器を略奪されるとは、あまりにも惨いことだ」と述べた。

民衆法廷による「判決」や報告は、法的拘束力を持つものではないが、調査や証言記録を用いて国際機関に働きかけたり、広く大衆に問題認知度を高めることが可能だ。2019年の初めに新たな証言者を招いて第2回目の公聴会が行われる予定。

中国の医療における臓器強制摘出の証拠収集は困難とされる。前出の調査報告書によると、臓器収奪の犠牲者の身体は証拠隠滅のために焼却炉で処分されている。

加害者の多くは、医師や医療従事者である可能性が高い。民衆法廷で自身の調査を語ったデービッド・マタス弁護士は「数多くの医師が(臓器ビジネスに)関わっている」と述べ、ナチスによる大虐殺にも多くの医師が関与していたことを思い起こさせると、8日の閉廷後に大紀元に語った。

権力による弾圧や貧困層を狙う違法な臓器ビジネスを根絶するために、2008年、国際移植学会は渡航移植を実質禁止とするイスタンブール宣言を採択した。中国は2015年、国営メディアや在外大使館発表文書のなかで、死刑囚の臓器を移植手術に使用を中止することや、移植目的による海外からの渡航者への移植手術は中国臓器移植法で禁止されていると書いた。

しかし、英BBCは2018年10月の報道で、取材チームが中国の移植病院に電話したところ「すぐに手術は受けられる」と回答したと報道した。こうした背景から、移植臓器確保のための非人道的な臓器収奪システムが今もなお存在すると推測されている。

中国「臓器移植界の権威」とされる黄潔夫・元衛生部副部長は同年7月にスペイン・マドリードで開かれた国際臓器移植会議(TTS)の年次総会に出席した。黄氏がBBCの取材に、中国の年間移植手術回数は1万5000件と述べたうえで、記者が「毎年10万件と言われている」と聞くと、「質問はナンセンスだ」「誰かの政治的意図がある質問には答えない」と煙に巻いた。

中国の移植医は米国や日本で移植技術を学んでいる。米国では11月、医療ポリシーを決める米国医師会の総会事前会議で、非人道的な虐殺とビジネス化を防ぐための決議案が提出された。法案では、医療技術を学びに訪米した医療関係者は、倫理を含む米国医師会のガイドラインを必ず順守するよう求めている。

生命倫理問題に取り組む医師会「臓器の強制摘出に反対する医師会(DAFOH)」副代表ウェルドン・ギルクリス医師は、中国の移植ビジネスに関わらないよう呼び掛けている。「私たちは、2つの点で共謀者になる恐れがあることを懸念している。1つは、倫理に反して臓器を求めに中国に行く渡航移植希望者。2つめは、中国医師に移植技術を指導することで、臓器を強制摘出し移植手術をさせること」

(文・ジェーン・グレイ/翻訳編集・佐渡道世)