米国の安全保障上の懸念を受けて、イスラエル第二の規模を誇るハイファ港の管理運営権が中国上海の企業に渡る契約は、イスラエル政府により見直されている。
イスラエル主要メディアのエルサレム・ポストによると、同国の交通省は2015年、国が運営するハイファ港の運営権を上海国際港務グループ(SIPG)に貸し出す契約を結んだ。
SIPGの株式は中国政府が過半数を保有する。契約内容によれば、25年の管理権で2021年にSIPGによる運営が始まる。中国共産党機関紙によると、SIPGは、ハイファ港の拡張工事に20億ドルを投じて国内最大の港湾にする計画がある。
イスラエルと米国の海軍は長年にわたり軍事訓練を継続しており、ハイファ港にも定期的に米軍艦船が寄港している。
報道によると、米国防省関係者から非公式の懸念の通知を受けて、イスラエル政府は内部で特別審査会を設けて計画の見直しを始めた。情報筋によると、政府高官はハイファ港の運営権契約はイスラエルの安全保障の観点から適切に検討されていなかったと考えている。この高官は、これがビジネスの側面だけ重視した契約であり、米国海軍との関係に影響を及ぼすべきではない、と情報筋に語ったという。
イスラエル地域を担当する米国第6艦隊代表カイル・レイネス司令官は、中国企業に管理権が渡ることの影響について「現時点ではわれわれの行動計画に変更はない。2021年以降の影響はまだ推測できていない」と同紙に述べた。
報道によると、ハイファ港の中国企業への運営権貸し出しの見直し審査会は、契約を交わした2015年当時から現在まで交通大臣を務めるイスラエル・カッツ氏が承認した。
引退した米海軍司令官ゲイリー・ロフヘッド氏は、11月にハイファ大学で講演し、中国企業が港湾を管理するならば米軍の行動に変化をもたらすと述べた。「中国の港湾運営側は、米国の船舶の動きを監視し、メンテナンスや修理現場に立ち入って米軍の整備に介入する恐れがある」
ロフヘッド氏はまた、中国側が新規インフラ建設に関わることで、最新の情報収集システムや監視機能をあらかじめ組み込むことが予想され、さらに米軍の情報セキュリティーの懸念材料になると語った。
ハイファ港は、潜水艦隊の拠点となるイスラエル海軍基地からも遠く離れていない。SIPGが船舶の出入港を管理することで、イスラエルの安全保障にリスクをもたらす可能性もある。
(編集・佐渡道世)
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