中国国内ではこのほど、製薬会社の上海新興医薬股份有限公司(以下、新興医薬)が製造した血液製剤、静脈注射人免疫グロブリン製剤がHIV(ヒト免疫不全ウイルス)抗体検査で陽性の結果が出たと報じた。同製剤は血小板減少、免疫不全、敗血症、血友病などの治療に使われる。
中国紙・毎日経済新聞5日付によると、中国河南省の医療機関関係者は、国家衛生健康委員会から、同製剤の使用を中止するよう通知を受けたと話した。
また、中国ソーシャルメディア上での投稿によると、陝西省や山西省など省政府は省内の医療機関に対して、問題になった血液製剤を使用しないよう指示した。
「中国経営報」の報道では、問題になった血液製剤は全部で1万2226本で、1本は50ml。生産番号20180610Zで、有効期限は2021年6月8日。上海市食品医薬品検験所が検品し流通を許可した。
米ラジオ・フリー・アジア(RFA)6日付によれば、北京大学医学部免疫学部副主任の王月丹氏は、新興医薬は同血液製剤を製造する際、HIVに感染した供血者からの血液を原料にした可能性が高いと指摘した。「不正行為があったと思われる。国家の規定では製造前、必ず原料のHIV抗体検査をしなければならない」と王氏は事態の深刻さを示した。
王氏は、同製剤の使用でHIVに感染した人がいると推測した。
新興医薬は、2000年8月に創立された。2009年、企業統合により、中央政府の管轄管理を受ける国有企業で総合商社の中国通用技術(集団)控股有限公司の傘下企業となった。
現在、新興医薬が製造する血液製剤は当初の3種類から11種類に拡大している。同社は、湖南省と江西省にそれぞれ1カ所の採血拠点を構えている。年間約70トンの血漿を採取できるという。
2月6日現在、中国のネット検閲当局はネットから同関連報道を削除し始めた。
いっぽう、中国国家衛生健康委員会が昨年11月23日の記者会見で、同年9月末までに中国国内のHIV感染者は85万人で、死亡件数は26万2000件と発表した。
中国経済学者の何清漣氏は、実際の数値は当局公表の10倍以上で、国内のHIV感染が深刻化していると批判した。
中国当局はHIV感染拡大の主因について、「性交渉による」と強調してきた。しかし、2017年中国当局は国営新華社通信の報道を通じて、初めて「注射器」と「血液による感染」に言及した。
米国に亡命した中国人女性医師・高耀潔氏(92)は長年、深刻なエイズ感染の実情を国際社会に訴えてきた。高医師は長年の調査を経て、中国でのHIV感染拡大は主に、採血と輸血によるものだと主張してきた。
高医師が、昨年2月に海外中国語情報サイト「縦覧中国」で評論記事を発表した。高医師は記事で、1990年代河南省で当時省トップだった李長春氏らが主導した「血漿経済」で、省内の多くの住民がHIVに感染したことを明らかにした。
当時、李氏らは省内農村部の住民に対して、「小康(生活にやや余裕がある状態)になるには、早く血を売ろう」と促した。しかし、不衛生な採血設備を使ったため、大規模なHIV感染が起きた。問題が発覚した後、李長春らは隠ぺい工作や情報封鎖を行った。2001年、中国当局は河南省で「売血」によるHIV感染被害を認めた。
(翻訳編集・張哲)
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