中国系医療ツーリズムに揺れる韓国済州島 2カ月半放置された営利病院 裁判沙汰に

2019/02/20
更新: 2019/02/20

韓国有数のリゾートアイランド・済州島は、中国人向けの病院開設で揉めている。現地政府は2018年12月、中国不動産大手・緑地控股グループによる高級ホテルのような美容整形と健康診断を行う病院の開設を許可した。しかし、予定された医師、スタッフの雇用もなく、2カ月半経っても運営する気配がない。

不動産開発大手の緑地控股グループ(上海拠点)は医療ツーリズム事業として、済州島に「緑地国際病院」を建設。77.8億円を投じて2018年7月に完工した。

済州道政府によると、認可した緑地国際病院は、整形外科・皮膚科・内科・家庭医学(健康診断)科の4診療科目をそろえる医療施設。訪韓中国人観光客を主な顧客として、人気のある美容整形や皮膚施術をする予定。

2015年の計画発表から3年にわたり、住民や市民団体は反対運動を行った。世論調査委員会も不許可の勧告を出し、認可はこれまで6回見送られた。しかし、知事側は「雇用創出や経済回復」のために、2018年12月に開設許可を出した。公共医療を目的としない、営利目的の外資系病院の国内開設許可は韓国で初となる。

しかし、この緑地病院への許可は条件付きだ。元喜龍(ウォン・ヒリョン)済州道知事の声明によれば、韓国人の診療を禁じ、来島外国人医療ツーリストのみを対象とする。韓国は皆保険制度だが、この病院の患者には国民健康保険は適用されない。

済州道政府の規定によると、医療承認から90日以内に、営利病院は運営を始める必要がある。保健福祉部長・江明莞(ガン・ミョンワン)氏は「もし3月4日以降も開業せず、緑地グループが何の措置も取らなければ、医療免許の撤回も検討する」と、2月9日聯合ニュースに述べた。

計画案では医師、看護師、国際コーディネーターら134人のスタッフの雇用が盛り込まれていた。しかし、保健福祉部によれば、緑地病院は現在まで、医師や医療スタッフを一人も雇用しておらず、募集も行っていない。

すでに認可された条件 覆そうとする中国の緑地グループ 行政裁判へ

こうしたなか、中国の緑地グループは2月14日までに韓国人に対する医療を禁じることは違法だとして、済州道政府を相手取り行政訴訟を起こした。同政府が同月19日に発表した。政府は、開設条件の変更はないとして争う構え。

聯合ニュースによれば、緑地グループは病院開設準備のために弁護士を派遣して、外国人に対するビザ制限に関する条件交渉を行っているという。

韓国のリゾートアイランド、済州島(チェジュド)(anokarina)

美容整形や健康診断を求めて、韓国には毎年800万人以上の中国人観光客が訪れていた。しかし、2017年に在韓米軍の終末高高度防衛ミサイル(THAAED、サード)設置に対する中国共産党政権の報復に遭い、訪韓中国人は7割ほど激減した。来島人数は回復傾向にあるが、騒動前の水準には戻っていない。

医療の収益化阻止のために活動する市民団体代表・呉商源(ウ・サンウォン)さんは「外資営利病院を許可すれば、医療の拝金主義の波が外国人向けから国内向けにまで広がりかねない。時間の問題となる」と見ている。

2002年金大中(キム・デジュン)政権に改正された医療法では、済州島と8つの自由経済特区に、50%を外資とする資本500万ドル(約5億円)以上の営利病院の運営を許可している。

もし、緑地国際病院が撤退した場合、中国の投資家は済州道政府への投資に対する損害請求訴訟を起こす可能性がある。総額は約800~1000億ウォン(約80~100億円)に上るとみられる。

(翻訳編集・佐渡道世)