中国上海市に本部を置く電動自動車(EV)メーカー、蔚来汽車(NIO)の上場申請の資料に虚偽記載があり損失を被ったとして、米国の3つの法律事務所は今年3月、原告を米国人株主とする集団訴訟を起こした。訴状によると、昨年9月米株式市場に上場した蔚来汽車は、米国証券取引委員会(SEC)に提出した上場届出書や投資家向けの事業説明書に、株主をミスリードする文言を記載したという。
「中国のテスラ」を目指す蔚来汽車は昨年9月12日、米ニューヨーク証券取引所に新規上場(IPO)し、約10億ドルの資金を調達した。株式の公開価格は1株=6.26ドルと設定した。中国新エネルギー車(NEV)企業として、初めての快挙だという。同社は、中国IT大手の騰訊控股(テンセント)、百度、京東集団、小米科技(シャオミ)、聯想集団(レノボ)をはじめ、中国企業56社からの出資を得て2014年に設立された。
米企業ニュースリリース配信企業、ビジネス・ワイヤ(Business Wire)は3月11日、ローゼン法律事務所(Rosen Law Firm)の声明を掲載した。声明は、同法律事務所が蔚来汽車の米国株主を代表して、損害賠償請求を求める訴訟の調査を始めたとした。
株主らによれば、蔚来汽車が2018年9月11日と12日にそれぞれ公表した上場届出書と目論見書で、「重大な虚偽記載と誤認を与える記述」があった。株主らは、蔚来汽車の電気自動車への需要が大幅に低迷したことを知らされなていなかったと主張している。
起訴状によれば、蔚来汽車は上場登記資料において、「上海で生産工場を建設中。2020年末に完成する」と記した。しかし、今年3月5日同社が発表した2018年第4四半期決算報告では、2017年に決定した上海市嘉定区での工場建設計画が、取り消しになっていた。さらに同社は、EVの生産を中国自動車メーカーの江淮汽車(JAC)に委託すると決定していた。
同決算報告は、蔚来汽車のEV販売台数は2018年12月の約3000台から2019年1月の1805台に減少し、2019年2月は811台まで激減した。
中国当局は今年から10年間続いたEV業界への補助金制度を段階的に撤廃する意向を示した。
決算報告が公表された以降、ニューヨーク株式市場で蔚来汽車の株価相場は下落し続けた。
3月6日の同社株価は前日比約37%安の8.01ドルとなった。3月14日のニューヨーク株式市場で、蔚来汽車の株価は公開株価の6.26ドルを下回り、6.03ドルで取引を終えた。4月8日、同社株価終値は前日比1.12%安の5.3ドルを付けた。株主らは、株価の急落で損失を被ったと訴えた。
米カプランフォックス&キルスハイマー(KaplanFox & Kilsheimer)法律事務所とポメランツ法律事務所(Pomerantz)も3月6日と4月2日にそれぞれ、蔚来汽車に対して株主集団訴訟を起こした。ローゼン法律事務所と同様に、両法律事務所は、蔚来汽車の虚偽報告と誤認を与える記述があると指摘した。
ポメランツ法律事務所によると、今年1月、蔚来汽車の上層幹部は米投資家に対して、同社新型EV「ES8」と「ES6」への需要は堅調で、中国当局が補助金制度を段階的撤廃しても、同社の業績に影響を与えないと繰り返し強調したという。
この3つの法律事務所は、蔚来汽車が今年1月と2月の販売台数が大幅に低迷したと知りながら、米証券当局や投資家に嘘の説明を行ったと強調した。
(翻訳編集・張哲)
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