台湾立法院(国会)で24日、台湾大手コングロマリット(複合企業)鴻海グループ傘下の企業は、中国共産党政権から9億元(約149億4000万円)以上の補助金を受けていると、出席した議員が指摘した。鴻海の会長・郭台銘氏は国民党からの総統選挙出馬を表明しており、助成金を通じて中国共産党による台湾への影響の拡大が懸念されている。
時代力量党所属の徐永明議員は、立法院経済委員会で、鴻海グループの2企業、工業富聯と富士康は2018年に中国政府から9.42億元(約150億円)の補助金を受けていると述べた。
富士康工業互聯網(フォックスコン・インダストリアル・インターネット、工業富聯)は深セン拠点で、産業向けIoT関連事業を手掛ける。富士康(フォックスコン)は、世界大手の電子機器受託生産 (EMS)。本社を台湾に置くが生産拠点は主に中国本土だ。
また徐永明議員は、台湾の食品製造大手の旺旺集団は、同社財務報告から、中国政府から10年間で152億元(約2430億円)を受けとっていると指摘した。
徐永明議員は質疑で、中国政府による補助金が台湾にまで及んでいるとし、蔡英文総統政権に対して、総統選への影響に注意するよう求めた。
「鴻海グループの2企業は、昨年30億~40億元(約498億~664億円)の補助金を受けた。(中国共産党の)権力者が、台湾の大統領を選びたがっている。投資審査委員会、経済部、国家安全局も、選挙のプロセスに注意するべきだ」と徐議員は述べた。
これに対して、沈榮津・経済部長(大臣)は、総統選に影響を及ぼす事態があれば、適切な注意を払うと述べた。
徐永明議員はさらにFacebookで、「中国政府が経済力で総統選に影響を及ぼす可能性がある。『経済は経済、政治は政治』といったスローガンに騙されてはいけない」と議員は述べた。
鴻海グループは中国政府の政府補助金を受けているほか、ケーブルテレビにも投資している。台湾メディアの独立性を維持するため、2003年に「政党・政府・軍はメディアから撤退する」と規定した。徐永明議員は、郭氏がこれらの問題を解決してから総統選に臨むべきだと指摘した。
金融業ジャーナリスト・蔡玉真氏はラジオ・フリー・アジアの取材に応じて、鴻海グループの企業が台湾政府からも受注していることを問題視している。
「中国共産党からの資金を受けて、台湾で民進党の政治活動に従事することは問題だ」と蔡玉真氏は指摘した。
ラジオ・フリー・アジアは鴻海グループに取材を試みたが、この問題には対応しないとの返事だったという。
台湾議会の大陸委員会によると、中国大陸では産業振興のため企業に補助金を支給しているため、台湾企業も受け入れている。「中国政府が補助金を通じて総統選に影響を及ぼす可能性について、台湾政府はすでに注視している」とした。
(編集・佐渡道世)