ケニアの国家環境審判所は6月25日、インド洋沿岸の同国南部に予定されていた、中国支援の石炭火力発電プロジェクトを保留にする裁決を下した。
予定されていた敷地は、歴史遺産の多い観光名所ラム(Lamu)島。環境審判所は、この火力発電所計画は住民に適切な説明を行っていないこと、有毒な石炭灰の取り扱いや貯蔵が十分に考慮されていない点など、複数の不明確さや不足があると指摘。アミュ(Amu)電力が国家環境管理当局を通じて提出した開発許可申請を却下した。
この決定は、地域の環境活動家と地域社会の3年にわたる活動の勝利といえる。活動家たちは、石炭火力発電所が大気汚染だけでなく、海洋生態系にも甚大なダメージを与え、漁業従事者は暮らしができなくなると主張していた。
NPO環境正義の弁護士マーク・オダガ氏は、石炭火力発電所の建設計画の保留を受けて、「(反対意見者の)声が届いて良かった。ただの反開発運動ではなく、環境を懸念する声が反映されたということだ」とコントを発表した。
ウフル・ケニヤッタ大統領は2020年までに、国を100%グリーンエネルギーに移行する計画を発表した。しかし、石炭火力発電所は、中国企業から20億ドルの資金援助を受けて進められていた。約975エーカー(約396万平米)もの土地を使用する発電所は、毎時1050メガワットを生産すると見込まれていた。
環境保護論者らは、水力発電と地熱発電からエネルギーの大部分を生産しており、さらに国内では石炭が十分供給できないと主張。石炭火力発電所の建設に反対する抗議運動を始めた。
予定地であるラム島は、東アフリカでも最古のスワヒリ文化の建造物が多く保存され、2001年にユネスコ世界遺産に登録された。建設反対派は、リゾートアイランドとしても知られる同島にとって、石炭火力発電所は観光業にも打撃を与えると主張している。
このラム島の計画は、石炭火力発電所を海外で開発するという中国共産党政府の外交戦略の一つでもあった。中国国内では、再生可能エネルギー計画への投資が急増する一方、何百もの石炭火力発電所を海外で建設してきた。これには、国内で過剰に生産された石炭を輸出して消化する狙いがあるとみられる。
海外における石炭火力発電プロジェクトは、政府が補助金を出しており、中国投資を歓迎するアフリカ諸国に多い。
今回、ケニア環境審判所は石炭火力発電所プロジェクトを保留したが、完全な停止ではない。アミュ電力は環境当局に再度、申請する予定。
NGO環境団体セーブ・ラムの副代表ムハンマド・アブワナ氏は英字メディアQZの取材に対して、反対運動を継続する意向を明かした。「老いた私たちは、祖先から最も清らかで健やかな環境を受け継いできた。次の世代の子どもたちにも、同じ環境を提供するのが私たちの義務だ」
(翻訳編集・佐渡道世)
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