悪魔が世界を統治している 九評編集部:悪魔が世界を統治している

第九章:共産主義がしかけた経済的な罠(下)

2019/09/19
更新: 2022/05/23

目次

4.国有化と計画経済ー奴隷制度
a. 国有化:全体主義が繋ぐ鎖
b. 必ず失敗する計画経済

5. 善悪を逆転して惑わすマルクスの搾取理論

6. 憎悪と嫉妬ー絶対平等主義の根源とは
a. 経済的平等の推進:共産主義への布石
b. 労働組合を利用して自由社会を阻む共産主義

7. 人間を自滅へと誘導する共産主義の「理想」

結論:道徳のみが繁栄と平和をもたらす

参考文献

 

4.国有化と計画経済―奴隷制度

 

天は人間を創造し、彼(彼女)に智慧と強さを授けた。人間は労働を通して生活するに足るだけの恵みを得るよう運命づけられている。アメリカ独立宣言には、「すべての人間は神によって平等に造られ、一定の譲り渡すことのできない権利をあたえられており、その権利のなかには生命、自由、幸福の追求が含まれている」と書かれている。【1】

この中には当然、財産を所有し、それを配分する権利も含まれている。

一方、マルクスは『共産党宣言』の中で次のように述べている。「共産主義の理論は一言に要約できる。つまり、私有財産の廃止である」【2】 これは財産の国有化であり、つまり計画経済のことである。この制度は天の摂理に反し、人間の本質と真っ向から対立する奴隷制度である。

a. 国有化:全体主義が繋ぐ鎖

反共産主義の先駆者であるフレッド・シュワルツ(Fred Schwartz)は、彼の著書『共産主義者を信じられる…共産主義者になるために』(You Can Trust the Communists … to Be Communists)の中で、ソビエトの車体工場とアメリカの車体工場で行ったインタビューについて、次のようなジョークを綴っている。【3】

(ソビエトの工場で)
「この工場を所有しているのは誰か?」
「われわれだ」
「工場が建つこの土地を所有しているのは誰か?」
「われわれだ」
「工場が生産した商品は誰が所有しているのか?」
「われわれだ」
工場の横にある大きな駐車場に、ボロボロの車が3台置かれていた。訪問者が聞いた。「車の所有者は誰か?」
彼らは答えた。「われわれが所有しているが、一つは工場長、もう一つは政治将校、三つ目は秘密警察のためのものだ」
同じ訪問者がアメリカにやってきて、同様の質問をした。「誰がこの工場を所有しているのか?」
「ヘンリー・フォードだ」
「工場が建つこの土地を所有しているのは誰か?」
「ヘンリー・フォードだ」
「工場が生産した商品は誰が所有しているのか?」
「ヘンリー・フォードだ」

工場の横にある大きな駐車場に、さまざまなアメリカ車が並んでいた。「車の所有者は誰か?」と聞くと、彼らは、「それはわれわれだ」と答えた。

この話は、私有財産と国有財産の違いを明確に表している。国有のもとでは、資源と労働から得た利益は国に帰属する。そこには個人のやる気、努力、創造性を促す動機がなく、個人の財産に伴うはずの責任感もない。名目上、国有化とは富を市民に公平に分け与えることだが、実際には特権階級が富を独占し、彼らが優先されている。

経済成長の決定的な要素は人間である。財産の国有化は人々の活力を阻害し、生産性を奪う。道徳を堕落させ、非効率と消耗を促進する。ソビエトの集団農場から中国のコミューン、またカンボジアや北朝鮮での集産農業の大失敗まで、国有化のシステムは世界中どこでも飢えをもたらす。何万人もの中国人が、共産主義による人為的な飢饉のために亡くなった。

人間は労働を通して生活の糧を得なければならない。私有財産はその法則に準じているが、共同所有はそれに反している。私有財産は人間の善良な部分を養い、労働と倹約を促進する。一方、共同所有は人間の邪悪な部分を刺激し、嫉妬と怠惰を増長させる。

フリードリヒ・ハイエク(Friedrich Hayek)は、文明の発展は私有財産を中心とした伝統社会に依拠すると主張した。伝統が現代の資本制度を生み出し、必然的に経済発展が付随したのである。これはごく自然な、自発的な秩序であり、政府の介入を必要としない。しかし、共産主義と社会主義は、この自発的でのびのびとした秩序をあえて支配しようとする。ハイエクはこの政府介入を「致命的なうぬぼれ」と呼ぶ。【4】

私有財産と自由が切り離せないのと同様に、共同所有は専制制度や抑圧と一心同体である。共同所有は資源を国有化し、経済活動を低下させ、人々は国家の召使いあるいは奴隷となる。すべての国民は党中央の指示に従い、政権に異議を唱えれば経済制裁を加えられる。人々は国家権力の前に、なす術もなくなるだろう。

従って、私有財産を廃して共同所有を進めると、その行く末は全体主義である。集産国家(生産手段を国家が一元的に所有する)は国民の首に頸木を括り付け、自由を奪う。最悪なのは、親切になる自由も奪われることだ。国民全員が、共産党政権が示す道徳の定義に従わなければならない。

一部の人々は、権力を私有化してはならず、富を共有化してはならない、さもなければ大きな災いが降りかかると警告する。全くその通りである。

b. 必ず失敗する計画経済

計画経済のもとでは、社会全体の生産、資源の配分、生産物の分配はすべて国家の計画に基づいて決められる。これは、企業や個人の自発的な計画とは全く異なる形式である。

計画経済には明らかに、必然的な欠陥がある。第一に、効率的な生産分配を実施するには、大量のデータ収集を必要とする。大きな人口を抱える現代国家には、想像を超える膨大なデータが存在する。崩壊前のソビエト連邦の物価局は、240万個の製品に対する価格決定をしなければならなかった。【5】 実際、そのような計算は不可能である。

社会は複雑であり、常に変動している。単純な経済計画で解決できるものではない。【6】 現代のビッグ・データや人工知能を駆使したところで、人間の思考を変数に加えられるものではない。そのため、このシステムは常に不完全なのである。

経済学者のルートヴィヒ・フォン・ミーゼス(Ludwig von Mises)は、『社会主義共和国連邦の経済計算』(Economic Calculation in the Socialist Commonwealth)の中で、社会主義と市場の関係について論じている。【7】 彼は、真の市場がなければ、社会主義社会は妥当な経済計算ができないだろうと指摘する。つまり、合理的な資源の分配は不可能であり、計画経済は失敗する。

第二に、計画経済には国家による強制的な資源の支配が伴う。最終的には、絶対的な権力、割り当て制度、指揮系統が生まれる。経済は政治に左右され、人々の需要から離れていく。資本の分配が適切に行われず、多くの問題が引き起こされる。計画経済とは、絶大な権力と浅はかな智慧を持った政府が、神を演じるようなものである。これが失敗することは明らかである。

計画経済と抑圧的な政治は一心同体である。国家計画には必ず欠陥があるため、問題が発生すると、国内外からの圧力が生まれやすい。政権はプレッシャーを避けるため、政治的圧力と粛清で対抗しようとする。毛沢東がいい例である。彼は経済の法則を無視して大躍進を強行し、3年におよぶ大飢饉と数百万人の死者を出した。これが政権に更なるプレッシャーを与えたため、彼は文化大革命を引き起こしたのである。

計画経済と共同所有が破滅的であることは、中国の国有企業をみれば分かる。近年、多くの国有企業は生産量が低下し、減収と破産に見舞われている。彼らは政府の補助金に頼り、銀行の資金を回してなんとか経営を保っている。多くの国有企業はすでに「ゾンビ企業」と呼ばれ、国家経済の寄生虫となっている。【8】

国有企業15万社のうち、利潤の高い石油や通信などの独占企業を除き、多くは微々たる利益しか出しておらず、大きな損失にあえいでいる。2015年末までに、国有企業の総資産は国内総生産(GDP)の176%に上り、負債は127%、収入は3.4%に留まった。これは深刻に資本制度を破壊する現象である。一部の経済学者が指摘するように、すでに中国経済はゾンビ企業に乗っ取られてしまったのである。【9】

計画経済は人々の自由を奪い、国家に対して彼らの面倒を見るよう要求する。その目的は、人々を奴隷にし、機械にすることである。国民すべての生活が国家に支配されるとどうなるか。それは見えない監獄であり、人々は自由意志を奪われ、神が人間に与えた生活方式から逸脱していく。これはまさに、共産主義が神に反乱を起こし、自然の法則に逆らった現れである。

 

5.善悪を反転して惑わすマルクスの搾取理論

 

マルクスは、労働のみが価値を生み出すと言った。例えば、企業主が1000万ドル投資し、その年の収益が1100万ドルだった場合、100万ドルは従業員が生み出したものである。マルクス理論によれば、資本(企業の店頭販売所、製品やその他の生産過程)は価値を生み出さないが、製品コストの一部として値段に転換されるだけである。企業の従業員が生み出した価値(1100万ドル)は、企業が支払った費用(従業員の給与を含む)より高い。マルクスによれば、100万ドルの利益は従業員が生んだ「剰余価値」であり、資本家がそれを不公平に搾取しているという。

この仕組みが、資本家が金を蓄える秘密であり、ブルジョアジー(資本家階級)の原罪、つまり搾取であるという。資本家による工場や会社への投資は明らかに利益追求のためであり、従って、プロレタリアート(労働者)は必然的に搾取される。これはブルジョワジーが支配する資本主義制度の、搾取という名の原罪である。そこで、この罪を根絶するために、資本社会全体を破壊するべきである。つまり、ブルジョワジーを根絶し、彼らから奪った財産を前衛部隊である党が集中的に管理する共産主義を樹立する。

マルクスの愚かな搾取理論は、二つの要素で説明できる。第一に、マルクスは単純に人々を二つの対立する階級に分けている。つまり、資本を持つブルジョワジーと、何も持たないプロレタリアートである。しかし、産業社会が発達した頃から、階級間の流動は活発になっている。例えば、マルクスの時代(1800年~1850年ごろ)の階級間の流動は、1970年代のイギリスやアメリカと同等であり、活発である。【10】 プロレタリアートとされる人たちも、会社の株を保有すればすでにプロレタリアートではなくなる。簡単に階級が変更できるのであれば、無理やり人々を二つにグループ分けするのは、単に階級闘争をけしかけるためだったのだと推定できる。

また、マルクスは巧妙にデザインした「理論」を並べたて、伝統的な道徳と粗悪な偽物の道徳を入れ替え、人々の善悪の基準を混乱させた。マルクスの理論で言うと、個人の良し悪しは、その人間の道徳や行為を見るのではなく、彼の(逆さまになった)資本主義の階級(ヒエラルキー)で判断できるという。資本家階級にいる人間は、プロレタリアート(労働者階級)を搾取するから悪い人であり、プロレタリアートは抑圧され、搾取されているから必然的に道徳心が高い。資本家にいくらひどい仕打ちをしても、プロレタロアートは全く気にする必要はない。これは、財産所有を犯罪とみなし、富の強奪を正義とする歪んだ考えであり、暴力的な収用を合法的に正当化するやり方である。これは正誤と善悪を反転させ、邪悪な行為を増長させる理論である。

中国や旧ソビエト、また東欧の共産主義国家では、共産党が地主をリンチして土地を収用し、資本家から工場を奪った。党は「階級の敵」に対して殺戮、放火、先祖代々の遺産の強奪、人間性の破壊を行い、国を巻き込む大規模なテロを起こした。これらは、すべてマルクス理論から生まれた鬼畜の所業である。一方、伝統的な道徳、神、聖人、その他の著名な学者や君子への信仰はすべて「搾取階級」に属するとして批判され、打倒された。

実際、マルクス理論は経済や哲学の分野で広く批判されている。【11】 マルクス理論の愚かな点を要約して下記に述べる。

マルクスは、労働が価値を生むことから、価値は生産に要した労働時間で決定すると主張した。これはばかげた理論である。商品の価値は、それ固有の性質だけに左右されるものではない。多くの場合、人間は商品に主観的な見方を加える。それが顕著なのが、需要と供給である。マルクスの偏狭な一元論と異なり、多くの経済学者は価値の生成にはさまざまな要素(土地、資本、労働、科学技術、経営、投資リスクなど)が伴うと指摘する。経済とはさまざまな生産チェーンが絡む複雑な活動である。ある生産分野は特定の経営体制を必要とし、さまざまな人々が異なる役割を果たす。それは、すべてのチェーンを包括するのに不可欠であり、「残余価値」を生み出すことに貢献するのである。

例えば、資本家が100万ドルを投じて二人のエンジニアを雇用し、あるオモチャのデザインと生産を彼らに任せるとする。さらに、資本家は新しいオモチャのマーケティング担当者を雇用したとする。2年後、新しいオモチャの人気が上がり、5000万ドルの売り上げがあった。それでは、この5000万ドルの残余価値はエンジニアとマーケティング担当者が生み出したのだろうか? もちろん違う。新しいオモチャが売れたのは、人々の需要があったからである。資本家の市場動向に対する洞察力、会社を経営し管理する能力、またリスクを取る勇気、などなどがオモチャに価値を与えたのである。

または、そのオモチャを発明したのは片方のエンジニアだったとする。すると、資本家は残余価値5000万ドルを、エンジニアの創造性に感謝することもなく、全部搾取したことになるだろうか? もちろん違う。そのエンジニアは、自分の働きに見合うだけの報酬がないと思えば、もっと報酬の高い企業にいつでも転職できるのである。

自由市場において、職業のスキルと報酬は究極的に合致する。無理やり利益を追求する資本家は競争に負け、有能な人材を確保できない。資本家は投資した分の報酬をすぐには得られず、その間、彼は支出やその他の利益を犠牲にするわけだから、投資した利益を得るのは当然、資本家である。従って、資本家が余剰利益を報酬として受け取るのは理に適っている。これは、金利をつけてお金を貸し出すことと同じである。

また、商品の価値を決定するのは、「偶然」もあり得るだろう。この偶発的な要素は、伝統的な信仰や文化に残る伝説にしか説明できないのかもしれない。

時に価格は労働の有無とは関係なく、跳ね上がったり暴落したりするものだ。1000万ドル相当のダイヤモンドが、5千年前には誰にも相手にされない、全く価値のないものだったかもしれない。先祖代々の不毛の土地が、都市計画あるいは貴重な資源の発見により、突然100倍に値上がりするかもしれない。ここには、価値の上昇に労働は関わっていない。この予測不可能な巨万の富は、運としか言いようがない。洋の東西を問わず、昔からこれは神の恵みであると信じられてきた。

国有化の「妥当性」や「必要性」を示すために、マルクスは余剰価値を搾取理論で説明し、ごく自然な人間の生活の一部だった経済活動を、否定的で非倫理的な行為とみなした。マルクスはそれまでの経済秩序に対する憎しみと軽蔑をかき立て、現行のシステムを破壊しようとしたのである。

実際、資本家と従業員、また地主と農民は、同じ利益を追求するコミュニティーである。それは協調しながら相互依存する関係であり、存続するためには両方が相手を支える必要がある。マルクスはその関係性を意図的に絶対化し、まるで生死の分け目であるかのように互いの憎悪を挑発し、極端に誇張した。もちろん資本家の中にはいい人も悪い人もいるが、それは労働者も同じである。社会的な制裁を加え、世間に晒すべきものは、資本家でもなく労働者でもなく、健全な経済活動を阻害する人間である。人間の判断基準は富の多さではなく、道徳的な気質と行為である。

人間は努力を通して、経済的あるいは社会的地位を変えることができる。労働者も貯金すれば投資家になれる。投資家も失敗すれば労働者になるかもしれない。社会は川の流れのように絶えず変化している。現代社会において、労働者と投資家の役割は変化し、多くの人々がさまざまな役割を担っている。利潤を投資して将来の生産能力を高め、雇用と社会の富を増やし、公共の利益に貢献することもできる。アメリカ労働組合運動の発起人でさえ、「労働者に対する最大の罪は、利潤に基づく経営に失敗した会社である」と述べている。【12】

愚かなマルクスの「剰余価値理論」は、正常な地主や資本家の活動に「搾取」というレッテルを貼った。それは計り知れないほどの憎しみ、混乱した思考、闘争をかき立て、数千万人の命を奪ったのである。

 

6.憎悪と嫉妬ー絶対平等主義の根源とは

 

共産主義は絶対平等主義を主張する。人々は高潔な言葉に騙され、盲目的にそれを信じてしまう。しかし、この平等主義は同時に憎悪と嫉妬を誘発する。他人の成功、財産、よい人生、楽な仕事、贅沢な暮らしが許せなくなる。この社会ではすべての人間が平等でなければならない。他人が持っているものは自分も持ち、他人が貰ったものは自分も貰う。誰もが平等で、世界は均一になる。

絶対平等主義には二つの特徴がある。第一に、人々は平等でなければ、自分たちの経済状況に満足しなくなり、悪人がそそのかせば、すぐに嫉妬と憎悪に占拠されてしまう。人々は他人が持っているものを欲しがり、不適切な、あるいは暴力的な方法でそれを獲得しようとする。極端な例をあげると、他人を殺して財産を奪い、金持ちになる者も出てくる。この最悪のケースが暴力的な革命である。

不満をかき立てるために、マルクスは社会を二つの階級に分断した。生産方法を持つ者と、持たない者である。地方では、それが地主と農民だった。都市部では資本家と労働者である。その後で、権利をはく奪されたと主張する人々をそそのかし、階級闘争と暴力的な革命を起こす。地主は金持ちで農民は貧乏だ、だから彼らの財産を奪え!なぜ地主たちは金持ちなんだ? 全員が金持ちになるべきだ。中国共産党は農民たちに、「土地改革」を呼びかけた。つまり、地主を攻撃し、土地を皆で分ける。もし地主が反抗したら殺せばいい。中国共産党は、最初チンピラたちにトラブルを起こさせ、その後に農民をけしかけて地主を襲わせた。これにより数百万人の地主が虐殺された。

第二に、絶対平等主義は、だいたい「平等な」状態のグループの中で起こりやすい。もし利益があったら、全員でそれを共有しなければならない。誰かが突出していれば非難される。勤勉な者も、少し劣っている者も、また怠惰な者さえも、すべて同じ扱いを受けなければならない。

しかし、人間は外観が似ていても、互いの個性が全く異なるのは事実である。性格、知性、身体能力、道徳心、職業、役割、教育、生活状況、困難に耐え堅持する能力、創造性など各方面の能力は異なり、社会への貢献度も千差万別である。それにも関わらず、全員が同じ結果を求めることに意味があるのだろうか。この点から見れば、不公平は本当の公平であり、共産主義が求める公平は本当の不公平である。中国の先人たちは、天は勤勉な者に恵みをもたらし、その努力に応じて報酬を与えると言った。絶対平等主義など実社会では不可能なのだ。

絶対平等主義のもとでは、どんなに上手くやってもやらなくても、勤勉でも怠惰でも、結果は同じである。平等主義の仮面のもとで、怠惰な者は利益を得るが、勤勉で有能な者は嫉妬と憎悪の対象となる。平等にするために、全員がスピードを落としてノロノロ働く人に歩調を合わせる。これにより全員が仕事を怠けるようになり、他人の貢献に乗っかることを期待する。何もないのに得ることを求め、他人が持っているものを欲しがる。その結果は、道徳の急速な低下である。

共産主義の経済的な悪のルーツは、絶対平等主義を求める憎悪と嫉妬である。人間は本来、善と悪の両方を合わせ持つ。西洋の宗教は七つの大罪に言及し、東洋の宗教は、人間には仏性と魔性があると説く。親切、忍耐力、思いやりなどが仏性である。魔性とは、利己心、怠惰、嫉妬、悪辣、略奪、憎悪、怒り、色欲、横暴、貪ること、命を軽んじること、分断とトラブルをけしかけること、噂を広げること、などに現れる。共産主義の経済観念は故意に人間の魔性を刺激し、人々の嫉妬心、貪欲、怠惰など邪悪な心を増長させる。人々は人間性を失い、数千年も培ってきた先人の智慧を放棄するようになる。それは人間の悪の心を拡大し、彼らを革命分子に生まれ変わらせる。

アダム・スミス(Adam Smith)は『道徳情操論』(The Theory of Moral Sentiments)の中で、人間の繁栄の礎は道徳であると言った。この普遍的な道徳の法則を維持することは、「人類社会自体の存続のために必要であり、もし人類がその重要な行動基準に対して、尊敬を持って感銘を受けないならば、(人類社会は)瓦解する」と述べた。【13】

アメリカ国家経済会議委員長のラリー・クドロー(Lawrence Kudlow)は、経済的な繁栄は道徳を基礎としなければならないと指摘する。彼は、もしアメリカ国民が主要な原則、つまり建国の基礎となる道徳的価値観を遵守できるなら、アメリカは限りなく発展するだろうと述べている。【14】

絶対平等主義を推進する国家は災いに見舞われる。共産主義は政権を利用して他人の財産を奪い、その権力とイデオロギーを強化する。一方で、人々はタダで利益を得ることを覚え、それを当然の権利だと思うようになる。これが、共産主義が人々を騙す仕組みである。

a. 経済的平等の推進ー共産主義への布石

絶対平等主義の影響から、欧米では社会公正を始めとして、最低賃金法、アファーマティブ・アクション(差別是正)、同一労働同一賃金などさまざまな主張がある。これらの要求の背後にあるのは、結果の平等に対する追及であり、つまり共産主義である。油断すると、人間はその罠にはまってしまう。

共産主義者から見れば、社会的弱者が平等になろうが、彼らの地位が向上しようが、そんなことはお構いなしだ。共産主義者たちにとって、それは憎しみをけしかけるためのエサに過ぎない。欲しいものを手に入れたら、彼らは新たな要求を突きつけてくるだろう。もし欲しいものが手に入らなければ、彼らは世論を動かして憎しみを駆り立て、人々に社会公正という概念を植えつける。この概念を足場として、彼らは世論に多大な影響を与えていく。

共産主義はさまざまな分野で、多様な方法で憎しみをけしかける。その憎悪が同時に爆発した時、社会動乱や革命を起こすことも可能だ。共産主義者はいつでも弱者グループに目をつけては彼らが経済的に不平等であると主張し、絶対的な平等を達成するまでそれを続ける。このいわゆる「社会公正」に対する要求は、共産主義へ進むための布石である。自由社会の欧米諸国もこの共産主義イデオロギーに侵されている。

しかし、これらの政策を実施しても、結果は期待に反することが多い。これらの政策で保護されるべき人々が、かえって差別されたり、攻撃されたりする。そのいい例が最低労働賃金法である。この法律の表面的な目的は、労働者の権利を守ることである。しかし、実際には多くの工場がコスト削減のために従業員の雇用を減らし、そのため多くの人が失業してしまったのである。

仕事のスキルは、すぐに獲得できるものではない。継続した前進の過程が必要であり、その後に働きがいや能力の向上が生まれる。一方、強制的に最低賃金を設定すると、人々は低賃金で経験すべき訓練の過程、また仕事のスキルの向上と共に給与が上がるという仕組みが崩れてしまう。さらに、政府による画一的な取り決めは経済理論に反し、過剰な政府介入を招く恐れがある。

人々は「同一労働同一賃金」を言い訳に、社会変革を訴える。彼らは統計を引用して、黒人男性の平均賃金は白人男性のそれより低いとか、女性の平均賃金は男性のそれより低いと主張し、このギャップは民族差別あるいは性差別だと訴える。実際、そのような比較は全く適切ではない。

二つの全く異なるものを比較しても意味がない。ある学者の調査によれば、黒人家庭の夫婦が二人とも高学歴の場合、彼らの収入は似たような状況の白人家庭よりも高い。【15】 このような黒人家庭が少ないため、民族の全収入を単純に比べるとギャップが生じるのだ。正確で常識的な比較は意義があるかもしれないが、共産主義が単に分断と対立をしかけているのであれば、人々は誤った現象しか見えないだろう。

共産主義者は弱者グループの幸福など望んでいない。人々を引きずりおろし、共産主義へと導くスローガンに興味があるだけである。しかし、その先は破滅である。

b. 労働組合を利用して自由社会を阻む共産主義

アメリカの製造業における失業率の高さはよく知られている。しかし、その原因が労働組合にあるということは、あまり知られていない。労働組合は労働者の利益を保護すると主張しているのに、なぜその反対のことが起こるのか? それは、労働組合の歴史を振り返り、その変貌ぶりを分析すれば明らかになる。

労働組合はもともと、労働者階級の人々およびスキルの低い単純労働者たちが、経営側と交渉するために設立された団体である。労働組合は労働者と資本家の仲介役であり、ある程度、両者の対立を解消する役割を担っていた。しかし、いつの間にか共産主義が労働組合を乗っ取り、共産主義運動を推進する道具に変えてしまったのである。

エンゲルスは次のように述べている。「労働者階級が賃金の値上げと短時間労働について認識する時がすでに迫っている。そしてすべての労働組合で行われていることは、それだけで終わるものではない。それは不可欠で効果的な手段であり、高い目的に向かうための、いくつかの手段のうちの一つ。(高い目的とは)つまり、賃金制度の完全な廃止である」【16】

レーニンは、労働組合の形成と合法化は、労働者階級が資本家階級から指導権を奪い、民主的な革命を起こすのに重要な手段であると主張していた。同時に、彼は労働組合が共産党の柱となり、階級闘争の主要なカギになると認識していた。彼は演説の中で、労働組合は「共産主義の学校」であり、共産党と大衆をつなぐパイプだと説明している。組合の日課は、大衆を説得して資本主義から共産主義への移行に巻き込むことであり、「労働組合は、国家権力の『貯蔵庫』である」と述べている。【17】

19世紀中ごろから末期にかけて、共産主義者らは労働組合をけしかけて大規模なストライキを行った。資本家に冷酷な要求を突き付け、機械や工場を破壊するなどの暴力的な手段を使うこともあった。労働組合は共産主義が資本主義と戦い、政治的な闘争を続けるための強力な武器となった。

1905年10月、170万人を超えるロシアの労働者たちが全国で政治的なストライキを起こし、国の経済を麻痺させた。この頃、より過激な労働組合ペトログラード・ソビエトが設立された。レーニンはこれを革命政府の誕生であるとし、ロシア政治の中心を担うと信じていた。つまり、1917年の10月革命時に樹立されたソビエト政権の由来は、労働組合なのだ。【18】

欧米を始めとする先進諸国の労働組合もすでに共産主義に侵され、利用されている。本来、労働者と資本家は共生の関係であったが、共産主義者らは両者の対立を広げ、誇張して挑発した。彼らは労働組合をけしかけて、経営陣と労働者の交渉を激化させ、階級闘争に持っていく。彼らは闘争を強め、彼らの存在は正当で合理的だと主張する。その後、今度は労働組合が労働者たちの不満を焚きつけ、どんな問題でも資本家を批判し、両者の対立を深める。これが、労働組合が存続するための手法である。

もちろん、労働組合は、労働者に短期間の、ほんの少しの利益をもたらすかもしれない。しかし、長期的に見ると、共産主義者らが扇動した組合運動による最大の被害者は労働者である。なぜならば、もし資本企業が潰れれば、失職して困窮するのは労働者たち自身だからである。表面的に、労働組合は労働者の利益のために戦っているかもしれない。しかし、実際には、組合は会社の競争力を弱めているのである。それには、二つの理由がある。

第一に、組合の要求通りにすると、会社は怠慢な、あるいは無能な従業員を解雇することが難しくなる。なぜならば、労働組合が労働者の権利と利益を守るという名目を掲げているからだ。これは不公平であり、怠惰な社風を生み出すと同時に、勤勉な従業員も積極的に働かなくなる。従業員の質を保つことは会社の成長に欠かせない。もし労働組合が怠惰な従業員を保護するならば、会社は競争力を失ってしまうだろう。

第二に、労働者の福利厚生(年金や健康保険など)を守るという名目で労働組合が継続的に会社に要求するため、必然的に会社のコストが上がっていく。会社は研究開発のコストを削減せざるを得ず、競争力を失う。さらに、福利厚生のコストが上がれば、その会社の製品の価格が上昇し、消費者に不利益をもたらす。研究によれば、トヨタやホンダなど労働組合が存在しない企業の製品は低価格で高品質だが、デトロイトにあったアメリカの自動車工場は労働組合の存在が大きく、その見返りとして競争力を失ったという。【19】

ヘリテージ財団の創設者エドウィン・フールナー(Edwin Feulner)は、組合について述べている。「(組合は)、会社にとって頭痛の種だ。彼らは会社の柔軟性や、市場変化の需要に適応する能力を奪っていく」【20】

この現象が進むと、今度は労働市場が組合によって独占される。組合がビジネスの意思決定に干渉するようになり、その影響は往々にして有害である。彼らの要求を飲まない企業は闘争の標的となり、労働組合がストライキやデモを起こす。その結果、ビジネスは多大な損害を被る。

デトロイト市の全米自動車労働組合(UAW)は、定期的にストライキを行った。2008年の金融危機以前、組合は時給70ドルの賃金を要求していた。その結果、アメリカの自動車産業はほぼ倒産の危機に直面していた。【21】

アメリカの製造産業で雇用が下がっているのは周知の事実だが、労働組合がそのきっかけをつくり、多くの失業者を生み出したことを知る人は少ない。ヘリテージ財団によると、1977年から2008年にかけて、組合を持つ製造会社の雇用は75%減少しているのに対し、組合を持たない製造会社の雇用は6%上がっている。製造業以外の分野でも同じ傾向が見られる。建設業を例にとると、「製造業と違って、1970年代から建設産業は急速に伸びている。しかし、その成長は労働組合のない仕事に集中しており、1977年から159%も伸びている」【22】

実際、共産主義者にとって、労働組合は会社内で平等主義を推進するための単なる道具である。ヘリテージ財団によると、組合は従業員の勤続年数に応じて賃金を払うべきだと主張するが、その従業員の貢献度や実績は考慮されないという。その結果、有能な従業員の賃金が下がり、無能な従業員の賃金が上がる。【23】

この仕組みの裏にあるのは共産主義である。絶対平等主義というスローガンのもと、社内で富の再分配が行われている。社内の意思決定に対する干渉、および労働市場の独占が、自由市場を深刻に脅かしている。

組合の過剰な要求は、時に一部の労働者を優遇し、企業や経済全体を停滞させることもある。2005年に行われた調査によると、「組合に加入する多くの家庭はアメリカの労働組合に賛成していない」し、また「不賛成の理由については組合の広報で公に協議されず、また代表者会議で話し合われることもない」という。【24】

よく観察してみれば、この仕組みの中の被害者は勤勉で有能な労働者であり、真の勝者は共産主義であることが分かる。つまり、共産主義が労働組合を利用して自由市場を破壊し、資本主義を転覆させ、人間の通常の生活手段を奪っていったということである。

進歩主義運動の影響のもと、共産主義に染まった労働組合は、徐々に一種の利益集団を形成する。それは、自分の利益を優先する利益追求型の大企業にも似て、汚職や腐敗がはびこっていく。【25】

共産主義者たちの目的は資本主義との闘争であり、民主主義国家において、労働組合は彼らの単なる道具である。彼らは「社会正義」や「公正」を主張し、社会保障の負担を社会と企業に押し付ける。それは製造業の改革や効率性を甚だしく阻害し、またその悪影響はサービス業、教育業界、行政にまで及ぶ。時期が熟すまで彼らはひっそりと身を隠しているが、状況が有利になると、社会運動を引き起こして目的を達成しようとする。共産主義は労働組合という楔を打ち込み、自由社会を分断させた。

 

7. 人間を自滅へと誘導する共産主義の「理想」

 

共産主義の理論は欠陥と矛盾だらけであるにも関わらず、いまだに騙される人がいる。マルクスが世界中の人たちに幸福をもたらすと言及したからである。これこそが、最大の空想であり、妄想である。マルクスはその世界を「驚くほど物質的に豊かであり」「より高い道徳の基準があって」「各人は必要に応じて働き、必要に応じて受け取る」と描写する。その世界には私有財産がなく、貧富の差も、支配階級も搾取もない。自由と平等が保障され、各人はその能力を最大限に伸ばすことができる。人生は素晴らしい、とマルクスは力説する。

この絵に描いた餅に騙された人たちが、闘争しようと躍起になる。多くの欧米人は、共産主義社会のもとで暮らしたことがない。彼らは共産主義の楽園に憧れ、共産主義者や社会主義者が扇動する主張に乗せられてしまう。マルクスが描写した楽園は、単なる妄想に過ぎないということを分かっていないのである。

マルクスは、共産主義社会の人たちは物質的な豊かさを享受すると約束した。しかし、人間の欲望と願望には限りが無い。人間の智慧と資源は有限であり、労働時間を減らせば、それだけ資源の枯渇と奪い合いが生まれる。これは経済学の基本である。豊かな物質が保障されているならば、人々は効率的な生産方法を模索する必要もない。無制限に提供される物質を、思うままに消費できるのだから。

マルクスはさらに、共産主義社会では道徳が著しく向上すると指摘した。マルクスが教えたのは、無神論と階級闘争であり、それは人間の悪の部分を拡大させた。彼の世界では信仰の自由がなく、宗教は共産主義の単なる道具になる。さらに、共産主義社会において、宗教組織は圧政を支え、世界を欺く道具となった。神に抵抗し、反抗し、人々を神から引き離す役割を担うようになった。すべての共産主義国家の指導者は暴君である。傲慢で下劣であり、倫理観など全くない。指導者がそんな有様であるのに、市民の道徳を向上させるなど無理な話である。実際、人間には善と悪の両方が存在する。道徳の向上は、伝統的な信仰や価値観、および自己修養の努力があって初めて達成される。

マルクスの主張はさらに、「全員平等」である。すでに何度も述べているが、社会主義の末路は全体主義である。資源の分配は権力に左右されるが、全体主義体制における権力の分配は最も不公平である。従って、全体主義体制において、資源の分配は最も不公平になるだろう。社会主義を信奉する国家では、特権階級が存在し、貧富の差が極端であり、国家による圧力が顕著である。

マルクスの言葉「各人は必要に応じて働き、必要に応じて受け取る」【26】もまた、最大のペテンである。社会主義経済は、権力に左右される。一般市民は基本的な自由もないのだから、もちろん彼らの能力に応じて行動することもできない。人間の欲望は限り無く、世界一金持ちの人間でさえすべてを手にいれることができないのだから、一般市民など尚更である。本来、資源は不足しており、何もないところから豊かな物質など得られるはずがない。物質が必要な所に分配されることなどありえないのである。

共産主義はまた、社会のメンバーすべてが自分の能力を最大限に発揮できると約束した。マルクス理論によると、分業は疎外感を招くという。しかし、いかなる社会においても、労働の役割分担は必須である。アダム・スミス(Adam Smith)は『国富論』(The Wealth of Nations)の中で、分業は労働の効率性を高め、繁栄を促進すると指摘している。分業による役割分担の違いは対立ではなく、また疎外感や個性の喪失でもない。すべての社会層が自分のいる場所で道徳を向上させ、社会に貢献できる。どの社会層に属していても、人間は社会に幸福をもたらすことができる。

共産主義の経済概念は、反道徳である。その悪影響は、社会主義国や共産主義国に広がっている。善意を装った共産主義的な経済政策が、欧米社会を蝕んでいる。共産主義が全体主義、貧困、飢餓を生み出すのは必然である。共産主義は、常に人間の邪悪な側面を拡大させ、道徳を破壊する。これは歴史上、最も邪悪で非道な思想なのである。

過去100年の歴史を振り返れば、共産主義の本質がよく分かる。それは、憎悪の扇動、大虐殺、邪悪である。すべての共産主義国家で市民が経験したのは、残酷な殺人、個人の自由のはく奪、人権無視である。軍事目的のために、資源は枯渇している。特権階級を潤すために、人々の財産は強奪される。大衆は貧困の中で労働に明け暮れる。

共産主義運動は人々の生活を踏みにじるだけでなく、伝統的な価値観や文化を徹底的に破壊する。特に顕著なのが、中国である。中国人の道徳は恐ろしいほど堕落しており、そのレベルは想像を絶する。健康で善良な修煉者の身体から臓器を摘出する臓器売買がすでに国家産業にまでなっているのである。共産主義は、人間を悪魔に変えてしまった。病人を助けるはずの医師が、邪悪な殺人鬼に変えられた。経済的利益を理由に、海外諸国は中国の人権侵害に対して何も言えない。中国共産主義の魔の手は海外におよび、世界中を黙らせている。

かつて共産主義者たちは本来の共産主義思想を説いて、労働層や知識層、若年層を引き込んでいた。しかし、東欧の共産圏が崩壊すると、残存する共産主義諸国は本来の暴力的なイメージを払拭し、資本主義経済を導入した。それらは高い税金、高水準の社会保障、富の分配を実施する政権へと変貌した。それらの政権は市民の生活水準を向上させ、人々は社会主義の「いい時代」を享受していると主張する。この形式で、共産主義は引き続き人々を騙し続けている。

共産主義は人間の善を求める心につけ込み、彼らを共産主義イデオロギーの熱狂的な信者に仕立てる。善の追及をスローガンに掲げて、人々を神から強く引き離す。共産主義は人々の精神を汚し、邪悪な心を養い、あらゆる犯罪を行わせる。人々は物質的な快楽に溺れ、高尚で高貴な信念と人生の真の目的を忘れてしまう。共産主義は人の血を流し、汗をかかせる。その見返りとして、人は心を毒され、殺される。もし世界中の人々が目覚めなければ、さらに恐ろしい結末が待っているだろう。

 

結論:道徳のみが繁栄と平和をもたらす

 

幸福を追求するのは人間の性である。経済の繁栄は幸福をもたらすが、何もない所から生まれるものではない。倫理や道徳から逸脱した経済成長の行く末は、経済危機である。単に豊かなだけの社会は喜びも幸福ももたらすことはできないし、短期間しか持続しない。倫理や道徳の土台が破壊されたら、その後には大きな災いが起こる。

2010年、人民日報は、近年の経済成長にも関わらず、国民総幸福量の平均値が落ちていると報道した。世界第二の経済大国は腐敗、環境汚染、毒食品に見舞われ、中国人の生活は不安に満ちている。つまり、富は増大したが、道徳や幸福は減少したのである。

これは、共産主義に決定的な欠陥があることを示している。つまり、人間は単なる肉の塊ではなく、それを遥かに超えた心や精神を備えた生命であることが分かっていないのである。人間が世界に降り立つ前に、神は人間が生活するための糧を整えた。中国では、「一口、一杯のすべてが定められている」という言い伝えがある。欧米人たちも同様に、食事の前に、神の恵みに感謝する。神を信じる人たちは、富は神から与えられた恵みだと認識している。彼らは謙虚で感謝を忘れず、常に生活に満足しており、幸せなのだ。

その中の一人が、タイタニックと共に沈んだジョン・ジェイコブ・アスター4世(Jacob Astor IV)である。彼はタイタニック号30隻を所有できるほどの大富豪だったが、事故に遭った時、彼は道徳心に恥じぬ行動で女性や子どもたちを守り、自分の救命ボートの席を譲ったのである。【27】 同様に、百貨店メイシーズの創設者イジドー・ストラウス(Isidor Straus)は、「他の男性たちよりも先に(ボートに)乗るわけにはいかない」と表明し、また彼の妻も夫と離れることを拒否し、お手伝いのエレン・バードに救命ボートの席を譲った。【28】

彼らは自分の財産と命を救うチャンスがありながら、伝統的な価値観や信仰を優先した。彼らの道徳心や正義は、輝かしい人類文明と人間性の一端である。高貴な人格は命より価値があり、それが富より尊いのは言うまでもない。

法輪大法の創設者である李洪志が「富ありて徳もある」の中で、次のように書き著している。

「民を富ますことは統治者と高官にとっての道であり、金銭を尊ぶのは下の下の振る舞いです。富があって徳がなければ衆生に害を及ぼし、富があって徳があるならば、すべての人が望むことです。ですから、富があるのであれば、徳について講じなければなりません」

「徳は生前に積むものであって、国王、大臣、富豪、尊い身分になることは、すべて徳から生じているのです。徳がなければ得られず、徳を失えばすべてを失います。ですから、権力や財を求める者は必ず先に徳を積まなければならないのですが、苦を嘗めて善を行えば、多くの徳を積むことができるのです。このため、必ず因果関係があるということを知り、これをはっきりと理解するならば、官僚と一般大衆は自制することができ、天下は富んでいながら平穏となります」【29】

もし人類が、上記のような富と人生に対する価値観を維持できるならば、人間の貪欲、怠惰、嫉妬が減少し、必然的に経済危機も回避できる。人間が己の欲望を自制できるならば、共産主義が人間の心を誘惑することはできなくなる。神が人類に高い道徳基準を与え、それによって理想的な経済社会が生まれるだろう。世界は繁栄し、人間の心は落ち着き、社会は平穏となる。

共産邪霊は人類を壊滅するために、綿密な按排を仕組んだ。邪霊による経済の按排は、それの全計画の一部である。共産主義の支配から抜け出し、彼らの「理想」の裏を見抜くには、まずわれわれが陰謀を公にし、詐欺の言葉を暴露し、彼らの破滅的なイデオロギーに希望を抱かないことである。一方で、われわれは伝統、道徳、美徳を取り戻すべきである。そうすれば、人類は永遠の繁栄と幸福、真の平和が得られる。人類文明はさらに輝きを放ちながら、活力を取り戻すだろう。

 

参考文献

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[20] Edwin J. Feulner, “Taking Down Twinkies,” Heritage Foundation Website, November 19, 2012, https://www.heritage.org/jobs-and-labor/commentary/taking-down-twinkies.
[21] James Sherk, “What Unions Do: How Labor Unions Affect Jobs and the Economy,” Heritage Foundation, May 21, 2009, https://www.heritage.org/jobs-and-labor/report/what-unions-do-how-labor-unions-affect-jobs-and-the-economy.
[22] 同上.
[23] Sherk (2009) 同上.
[24] Steve Inskeep, “Solidarity for Sale: Corruption in Labor Unions,” National Public Radio, February 6, 2007, https://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=5181842.
[25] 同上.
[26] Karl Marx, “Critique of the Gotha Programme,” https://www.marxists.org/archive/marx/works/1875/gotha/ch01.htm.
[27] Children on the Titanic (a documentary, 2014).
[28] Isidor Straus, Autobiography of Isidor Straus (The Straus Historical Society, 2011), 168–176.
[29] 李洪志先生:〈富ありて徳もある〉,《精進要旨》,https://ja.falundafa.org/book/html/jjyz_J_content.html.

つづく 第十章 法律を利用する邪悪

 

悪魔が世界を統治している

目次

 

序章
第一章   人類を壊滅する邪悪の陰謀
第二章   始まりはヨーロッパ
第三章   東側での大虐殺
第四章   革命の輸出
第五章   西側への浸透(上)
第五章   西側への浸透(下)
第六章   神に対する反逆
第七章   家族の崩壊(上)
第七章   家族の崩壊(下)
第八章   共産主義が引き起こした政治の混乱(上)
第八章   共産主義が引き起こした政治の混乱(下)
第九章   共産主義がしかけた経済的な罠(上)
第九章   共産主義がしかけた経済的な罠(下)
第十章   法律を利用する邪悪
第十一章  芸術を冒涜する
第十二章  教育の破壊(上)
第十二章  教育の破壊(下)
第十三章  メディアを乗っ取る
第十四章  大衆文化―退廃と放縦
第十五章  テロリズムのルーツは共産主義
第十六章  環境主義の裏にいる共産主義(上)
第十六章  環境主義の裏にいる共産主義(下)
第十七章  グローバル化の中心は共産主義
第十八章  中国共産党のグローバルな野望(上)
第十八章  中国共産党のグローバルな野望(下)
おわりに