日台韓で中国本土移植ツアーの防止を 東京大学でシンポジウム

2019/12/12
更新: 2019/12/12

11月30日、日本と台湾、韓国から 9人の医療、法曹、生命倫理の分野の専門家が東京大学に集まり、臓器の違法取引と移植ツーリズムに関するシンポジウムを開催した。各国の専門家は、人道犯罪が疑われる中国への移植ツアーを阻止するために、法整備や各国の取り組みについて意見交換した。

特集:中国の臓器狩り

日本や中国を含む65カ国が加盟する国際移植学会(TTS)が2008年に実質的な渡航移植防止を宣言した「イスタンブール宣言」から11年経つ。これに合わせ、3カ国の有志者組織は東京大学の山上会館で、「臓器移植ツーリズム防止」をテーマにした、アジア初の国際シンポジウムを開催した。共催は日本移植ツーリズムを考える会、SMGネットワ​​ーク、台湾国際臓器移植医療協会(TAICOT)、韓国臓器移植倫理協会(KAEOT)、大韓弁護士協会、高麗大学校国際人権センターなど。

1990年代以降、医療技術と医学の発展に伴い、世界の臓器移植の数は徐々に増加した。2000年以降、中国での移植手術件数は、爆発的に増加した。2006年には国際的な調査により、中国では良心の囚人などから臓器を強制的に摘出するという「臓器バンク」の存在が指摘された。2008年、TTSはトルコの首都イスタンブールで、臓器移植および移植観光の商業化を厳しく禁止すると宣言する「イスタンブール宣言」を採択した。これは、さまざまな国で、臓器提供および移植の倫理的指針となっている。

日本医学会の前会長で自治医大前学長、東京大学名誉教授の高久史麿氏が登壇し、臓器移植ツーリズムの問題について懸念を表明した。高久氏は、インターネットの普及により海外移植を選ぶ人が増加したと指摘した。また、国内法の改正により、海外で移植手術を受ける人の数は減らすことができるが、依然としてその数を把握することは難しいと述べた。

日本医学会の前会長で自治医大前学長、東京大学名誉教授の高久史麿氏(新唐人テレビ)

シンポジウムは、4つのトピックに分けて、意見が交された。1部はイスタンブール宣言以降の世界情勢、2部はアジアにおける臓器売買および移植ツーリズムの状況、3部は同議題における倫理的問題、4部はアジア主要諸国の法整備状況について。

国際人権弁護士で、カナダの勲章受章者、2010年のノーベル平和賞候補のデービッド・マタス弁護士は、次のように述べた。「無実の良心の囚人に加えて、犠牲者は主に信仰を持つ法輪功学習者であり、最近ではウイグル人の犠牲者も含まれる」

「イスタンブール宣言から11年経つが、中国は依然として臓器移植を乱用しており、良心の囚人が犠牲となっている」とマタス氏は語った。また、宣言を機能させるための効果的な基準と規制が必要だと述べた。

沖縄の琉球大学名誉教授で移植外科医である小川由英氏は、日本人の移植希望者は以前はアメリカだったが、2006年以降、中国が主要な渡航先となったと述べた。

国立台湾大学病院雲林分院の泌尿器科代表・黄士維医師は10年以上、中国における臓器移植問題を観察および研究してきた。臓器移植のために台湾から中国に渡航した数百人の患者、移植医師、医薬品業者にインタビューした。「大量に供給された出どころ不明の臓器の背後には、人道危機が潜んでいる」と指摘した。

「臓器移植は非常に専門的な問題で、徹底的な研究がなされなければ、共産党に騙されてしまう」「調査の結果、今日まで中国の移植臓器の出どころは、主に法輪功学習者などであると考えられる。彼らは非人道的に迫害されている弱者グループである」

黄医師は、過去20年間で、台湾から少なくとも4000人が本土に行き、肝臓および腎臓の移植を受けたと述べた。一例として、ある男性患者のために、非常に短い期間で8回の腎臓移植が相次いで行われた。ほかにも、少なくとも7人が旅行代理店を通じて、臓器移植を受けた。

台湾では臓器強制摘出が暴露され、広く知られるようになった。そのうえ、国際臓器移植医療協会の積極的なアプローチにより、2015年、「人体臓器移植法改正法案」が公布され、渡航者に登録を義務付けた。以後、渡航移植者は大幅に減少したという。

2016年に韓国臓器移植倫理協会に加盟した韓国の高麗大学医学部のハン・ヒチョル教授は、韓国の臓器移植状況を説明した。韓国では平均臓器の待ち時間が4年以上、米国でも4年、カナダでは6~7年かかるが、中国では数週間や数カ月であることは不自然だと指摘した。

ハン教授は、中国で移植を受けた韓国人の数は2003~05年にピークに達し、それ以後は減少していると述べた。中国の情報統制により、渡航者データを取得することはできないが、全国民を対象とする国民健康保険サービスからデータを照会したいと述べた。また、調査結果に基づき、議会と政府に違法な臓器移植を阻止するための法的措置を講じるよう求めていくと語った。

日本のジャーナリストである野村旗守氏は、日本のメディアや政界が中国での臓器取引など、人権問題についてほとんど報道していない理由を分析した。野村氏は、日本のメディアが持つ中国への贖罪意識、そして、さまざまな分野への中国共産党の浸透が原因で、日本のメディアはこの問題を避けていると考えていると述べた。

野村氏は2016年に臓器移植を考える会、2018年にSMGネットワーク(Stop Medical Genocide)を立ち上げた。また日本政府に何度も中国臓器移植問題に関する懸念を伝えた。一連の働きかけにより、11月には自民党の山田宏参議員が国会で同問題を取り上げた。外務省は、国際社会から非難の声が上がっていることを認知していると回答している。さらに、120人近くの地方議員がSMGネットワークに賛同し、これまで、86の地方自治体が移植法整備への意見書を可決したと野村氏はこれまでの取り組みを紹介した。

国立台湾大学医学部教授で、生命倫理センター所長である蔡甫昌博士(新唐人テレビ)

国立台湾大学医学部教授で、生命倫理センター所長である蔡甫昌博士は、1999年~2009年にかけて、台湾の健康保険データベースを調査したところ、3000人の患者が海外で肝臓および腎臓の移植を受けたと述べた。

蔡博士は、臓器の出どころに関する中国政府の主張に疑問を呈している。中国当局は、死刑囚の臓器の使用について説明を二転三転させているため、中国側の説明は納得できるものではないと述べた。

蔡博士は中国での臓器強制摘出が2006年に明るみになって以降の各国や国際機関の動きを紹介した。たとえば、2010年に世界保健機関(WHO)が、ヒト組織、細胞、臓器移植に関する指針に「透明性とトレーサビリティ」という2つの原則を追加した。2016年7月、欧州議会は、中国での良心の受刑者からの臓器収奪停止に関する宣言を通過させた。スペインとイスラエルは臓器移植法を改正し、海外移植渡航を禁止にした。

台湾政府は、過去10年間にわたって臓器移植法を改訂してきた。蔡博士は、国際社会が違法臓器取引や移植ツーリズムと闘うために協力し、良心の囚人からの臓器摘出を完全に停止するまで、中国に圧力をかけ続けなければならないと述べた。

韓国の延世大学医学部のイ・ドンヒョン教授は、違法な移植ツーリズムを撲滅するという医師のコミットメント、そして患者に対する医師のコミットメントは対立していないと指摘した。生命の尊厳、正義、平等という前提の下で、すべての人々の尊厳、ドナーとレシピエントの平等という角度から考えても、移植ツーリズムなどの違法行為と闘うべきだという。

台湾の「臓器移植規制」の改正を推進した台湾国際臓器移植医療協会の朱婉琪弁護士は、移植ツアーと違法な臓器摘出を撲滅するための国際法の整備を紹介した。最近、移植ツーリズム、臓器取引、本人の意思に反する臓器摘出と利用に焦点を当てて国際法の整備が進んでいると述べた。 

海外で臓器移植を受けた患者は必ず帰国後も、免疫抑制剤の投与などアフターケアを受けなければならない。2015年、台湾人体臓器移植法改正では、移植希望患者は、移植臓器、渡航国、病院名、医師の証書などを当局に提出する必要がある。違反者には罰則が課される。

韓国の水原地方裁判所の金松裁判官は、違法な臓器取引、移植ツアーの事例を紹介したうえ、韓国議会には臓器移植法修正案が提出されたと述べた。現行法では、韓国であるかどうかに関係なく、臓器取引は禁止されており、ブローカー、臓器売買に関わった人は刑罰の対象だとした。

2000年、韓国の裁判所では、臓器移植のために訪中した人に対して刑事罰が下った例がある。「ドナー」の情報は不明で、臓器は中国の病院での健康診断後わずか2〜3週間で入手できるなどの点を踏まえて、違法性が認められた。

金氏は、現行の臓器移植法の問題点は、臓器移植ツアーを審査する仕組みがないことだと指摘した。金裁判官は、患者が帰国してアフターケアを受けたとき、医師は海外での移植例であることを報告し、海外渡航移植を受けた人が享受する国民保険給付を減らすべきだと提案した。

中国問題に詳しいジャーナリストの河添恵子氏は「中国共産党は、年間1万~1万5000件の臓器移植症例を公式数と発表している。しかし、海外で収集されたさまざまなデータでは、毎年6万~10万件の手術が行われているという。臓器はどこから来たのか?日本の議会、日本のメディア、NGO、人権団体および司法当局は、真実をより広く調査する必要がある」と語った。

欧州と米国は、中国共産党による強制的な人の臓器摘出行為を強く非難している。2016年、米下院は、中国共産党は法輪功の迫害を直ちに停止し、法輪功学習者などの良心の囚人の臓器の強制摘出を停止するよう非難する決議案343号を可決した。

2019年6月、人道犯罪について第三者による調査と結果を示す「民衆法廷」の中国臓器収奪問題・最終裁定が6月17日、英ロンドンで開かれた。50人以上の証言と1年に渡る調査の結果、議長は、中国では移植手術の供給のために臓器収奪が行われているとの事実は「存在する」とし、主な犠牲者は法輪功学習者であると結論付けた。

このほど東京に集まった日本と台湾、韓国の医療と法曹、報道の専門家たちは、アジアの国々に対して、当地の国民が、中国共産党による非人道的な臓器収奪に関わらないよう呼びかけ、臓器移植関連法の修正に働きかけ協働することで、意見を一致させた。

(文・浦恩慧/翻訳編集・佐渡道世)