半導体受託生産の世界最大手・台湾積体電路製造(TSMC)が、中国通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)からの新規受注を止めたという。日経新聞が5月18日、複数の関係者の話として報じた。
報道によると、米政権が15日にファーウェイに対する輸出規制を強化する新規制を設けたことによる。TSMCが新たな措置の前に受注したものや、すでに生産中のものは影響を受けない。9月中旬までの出荷なら、継続して受注できる可能性があるという。
世界で最先端の半導体委託製造ラインを持つのはTSMCと韓国サムスン。TSMCはファーウェイの主要サプライヤー企業だが、この新規受注停止になれば、次世代通信規格「5G」向けのスマートフォン開発などに影響が出る。さらには、ファーウェイが抱える数百ものサプライヤー企業は打撃を受ける。
ファーウェイは米国からの半導体を含む供給網(サプライチェーン)がすでにいくつか断たれている。ハイテク覇権を巡る米中対立が激化し、供給網の分断リスクが鮮明になっている。
TSMCは15日、米アリゾナ州に約120億米ドル(約1兆3000億円)を投資して最先端の半導体工場を建設すると発表した。ポンペオ国務長官は15日の記者会見で、TSMC米国新工場の計画は「中国が最先端技術を独占し、重要産業を支配しようとしている重要な時期」に発表されたと述べた。また、米国政府の「強力なパートナーシップ」により半導体工場は建設されるとした。「ファーウェイは信用できない業者で、中国共産党の道具」「米国は中国からの経済的自立を高めることになり、米国と台湾の関係強化につながる」とも付け加えた。
TSMCは日経新聞に対し「顧客の注文の詳細を開示していない」と述べた。ロイター通信によると、ファーウェイは、TSMCの新規受注停止は「噂話に過ぎない」と報道内容を否定した。
米トランプ政権は2019年5月、ファーウェイに対する事実上の禁輸措置を打ち出した。しかし、米国由来の技術やソフトウエアが一定以下であれば、規制の対象外となり、海外から輸出可能だった。これを米政権は「抜け穴」とみなし、このほど米商務省は規制範囲を拡大。外国製の半導体でも、米国の技術をもとにした製造装置などを使っていれば、ファーウェイに供給できないようにする。ウィルバー・ロス商務長官は新規制について「米国の安全保障に有害な活動に、米国の技術が悪用されるのを防ぐため」と述べている。
中国政府はこの規制強化に報復措置を示唆しており、アップルやシスコに対する中国市場での活動制限、さらにボーイングの航空機購入の取りやめをほのめかしている。
ファーウェイの部品に使用されているのは、例えば同社最新の最上級機種「MATE30」5G版には、TDKや太陽誘電、村田製作所、旧東芝メモリのキオクシアなどが搭載されている。米国の新規制は、これらの日本企業にも影響が及ぶとみられる。
(編集・佐渡道世)
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