中国、香港国家安全法を導入 民主派議員「一国二制度は死んだ」

2020/05/29
更新: 2020/05/29

中国の全国人民代表大会(全人代=国会)は5月28日、民主化デモを抑え込む「香港国家安全法」を制定する提案を採択して閉幕した。これを受けて、香港民主派議員らは、同法の導入で香港の高度な自治を保障する「一国二制度」が終焉したと批判した。

香港の立法会(議会)議員で、立法会民主派会議の召集人を務める陳淑荘氏は、香港国家安全法の制定は、香港の憲法にあたる「基本法」23条に基づく立法より、さらに悪質だとの認識を示した。「同法の導入決定は、一国二制度が死んだことを意味する。香港は今後、事実上一国一制度になるだろう」と述べた。

中国当局は香港政府に対して、基本法23条に基づき、反逆、国家分裂や政権転覆などを禁止する条例の制定を求めてきた。しかし2003年、50万人の市民が大規模な反対デモを行い、香港政府は基本法23条の立法を見合わせた。

中国当局は基本法23条の法整備が進んでいない現状に苛立っている。香港立法会議員、公民党党首の楊岳橋氏は、香港立法会を迂回して立法に乗り出したと批判した。「香港国家安全法の実質は、本土が立法して、香港政府が実施することだ」

中国当局の「香港国家安全法」は、国家分裂、政権転覆、テロ、外国勢力による干渉を禁止にした。しかし、明確な定義がなく、反中国共産党デモを行うこと、香港独立や英領香港時代の旗を掲げること、新聞やネットで「共産党独裁反対」「中国の民主化要求」「天安門事件の真相究明」などを主張する行為は罪に問われる可能性がある。

また、中国当局が香港で国家安全部門の出先機関を設置することが可能になる。香港行政長官は国家安全教育を推進することが可能になり、香港の外国人裁判官が国家の安全や治安に関する審理を担当できなくなる。

民主党党首の胡志偉氏は、「中国当局が堂々と香港で反体制活動家などを逮捕し、中国本土へ移送できる」と糾弾した。

政党「香港本土」所属の毛孟静議員は、「一つの時代が終わった」「香港は、中国本土の一つの町になった」と述べた。

「工党」所属の張超雄議員は、香港市民は抗議活動を続けていくとした。「将来、暗い時期があると思うが、香港市民は必ず勝つ」

民主派政党「香港衆志」は、同法の制定は、米政府が香港に対する貿易優遇措置を取り消すなど、国際社会の制裁を招き、長期的に中国経済に大打撃を与えるとした。

香港紙・蘋果日報5月28日付によると、香港市民の間で、香港ドルを米ドルや英ポンド、日本円に両替する動きが加速化した。外貨両替の専門店では、わずか45分の間に、100万米ドル(約1億740万円)が両替されたケースもあったという。一部の店舗では、米ドルのほか、英ポンドや日本円が不足した。

(翻訳編集・張哲)