<米騒乱>暴動を強調する中国メディア 参加者に寄り添う警官の姿に触れず

2020/06/03
更新: 2020/06/03

米国では反警察運動と人種差別が扇動され、各地で店舗の破壊、略奪、暴力が相次いでいる。中国国営メディアは騒乱だけを取り上げているが、米国の警察官が各地区で、平和的デモの参加者に寄り添い、平和を促す様子を映していない。また、警官に取り押さえられた際に死亡した黒人市民のフロイドさんに、複数の前科があることも報道していない。

5月30日、米ミネソタミネアポリス警察は、アフリカ系米国人で強盗や脅迫、薬物使用などの前科があるジョージ・フロイドさんを偽札の使用容疑で逮捕を試みた。白人警察官が抵抗したフロイドさんの首を数分にわたり圧迫し、数分後フロイドさんは死亡した。当時の様子を映した写真や動画がインターネットに拡散し、黒人市民を中心に怒りの声が上がった。この事件で米各地で反警察、人種差別反対デモが発生した。

デモの発端となった事件に関わった警察関係者3人は解雇され、フロイドさんの首を圧迫した警察官は、過失致死と第3級殺人の罪で起訴された。

騒乱がエスカレートするなか、ミシガン州フリントタウンシップのデモを警備した保安官のクリス・スワンソンさんの行動が注目された。「ヘルメットを脱いで棍棒を下ろし、抗議を平和的なパレードに変えよう」とデモ参加者に語りかけた。「私たちがここにいる唯一の理由は、あなた方が確実に声をあげられるようにするためだ。ここにいる警官たちはあなた方を愛している」と訴えた。スワンソンさんの呼びかけに歓声があがった。

米当局は、騒乱には混乱と暴力をあおる極左集団・アンティファが関わっていると指摘している。国土安全保障省は、米国の都市を席巻している暴動は、多くの外国勢力によって扇動され、支持されていると述べた。

ツイッターでは、米国政府の人種差別を攻撃する内容を英語で多数投稿されている。ABCワールド・ニュース・トゥナイトに出演した専門家は、これらのユーザーは中国共産党の背景を持つ疑いがあり、実際に街頭での暴力的な抗議行動をあおる中国勢力もあると指摘している。

ミネアポリス警察の組合長であるボブ・クロール氏は6月2日、署内内部文書のなかで、死亡したフロイドさんの「凶悪な犯罪歴」を強調した。また、事件をめぐる抗議活動は極左集団・アンティファなどの「テロ行為」だと例えた。

米警察の記録を引用した英デイリー・メールの報道によれば、フロイドさんには複数の前科がある。2007年に女性宅に押し入り、女性の腹部に銃を突き付けて薬物と金品を探したとして5年の有期刑が下った。また、2005年と2002年にコカイン所持で有罪判決が下っている。2002年、1998年にも不法侵入および窃盗の罪で逮捕されていた。

中国官製メディア 「息ができない」「無法地帯」と米国騒乱を強調する

米国内で起きている混乱について、中国官製メディアは、積極的に暴力性を強調して報道している。いっぽう、ミシガン州で保安官がデモ隊に同調したり、ニューヨークやフロリダ州マイアミなどで警察官が抗議デモにひざまずき、故人を弔う姿勢を見せ、悲しみの共感を示したことなどは一切報じていない。

中国外交部の華春瑩報道官は、フロイドさんが訴えた「 I can’t breathe(息ができない)」をTwitterに書き込んだ。中国のユーザーは、華報道官を「中国の警官が同じことをしても、華氏は『息ができない』と言ってくれるのか」と皮肉った。また他のユーザーは、中国国内の警察署で取り押さえた若い女性の首を、ひざで圧迫する男性警官の様子を収めた過去の映像を流した。

環球時報は連日、「無法地帯アメリカ」「白人至上主義の台頭により民族間の対立が深まっており、トランプ氏はそれを政治的利益のために利用している」などと報じている。

北京のメディア関係者・賀氏は6月1日、ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し「6月4日の31周年が近づいている。中国のプロパガンダの意図は国内の注意をそらすことである。もう一つは、これまでのように米国を悪魔化(demonize)し続けることだ。中国国内が安定していると思わせるために、米国の問題を強調している」と語った。

中国政法大学法学部の元講師で、米国在住の人権派弁護士・滕彪氏は、RFAの取材に応じた。新華社通信などの中国官製メディアが、米国警官が警棒を置いてひざまずいたりする行動を報じないのは、米国警官の正義を打ち消す狙いがあるとした。

「共産党のプロパガンダは、党の政権安定のためにある。中共ウイルス(新型コロナウイルス)の流行から米国の反人種差別暴動まで、言論の自由とメディアの監視がない中国では、官製メディアが一方的な物語をずっと繰り返す」「米国と中国という2つの全く異なる政治体制において、法の執行方法の違いが浮き彫りになっている。中国には救済と賠償の仕組みがなく、苦しむのはいつも国民だ」と語った。

また滕彪氏は、「中国全体の政治体制が変わらなければ、中国の警官が人民のためにひざまずいたりする光景を見ることはないだろう」と述べた。

(翻訳編集・佐渡道世)