欧州連合(EU)は10月11日から、EUの重要領域の保護を目的とした、外国投資の審査制度「FDI」を全面施行した。
欧州委員会副委員長バルディス・ドンブロウスキス(Valdis Dombrovskis)氏は9日発表の声明で、「EUは引き続き外国からの投資に対して、オープンであり続けるが、この開放は無制限ではない」「今日の経済的課題に対応して、EUの資産および安全保障のために、そしてEUが開かれた戦略的自律性を獲得したいのであれば、EUとその加盟国は投資審査において緊密に協力しなければならない」と述べた。
この審査制度は、特に中国共産党(以下、中共)政府の背景を持つ中国企業を念頭においたもので、外国企業が投資を通じて主要技術を獲得するのを阻止する目的があると考えられる。
中国への「技術流出」はEU諸国の長年の懸念事項であった。同規則は、EU にとって戦略的に重要な産業分野に対する投資(買収)を、国家安全保障や公的秩序の視点から精査する。対象には、特定国政府と関係する国営企業による不透明な投資や、FDI に影響する EU のプログラムや事業を含む。
具体的な対応は、EU加盟国が自国の投資審査機構の通報、EU加盟国内で情報交換や分析ができる正式な連絡窓口と安全なチャンネルの確立など。
中国軍とつながりが深い通信大手・華為技術(ファーウェイ)の投資のような「敏感領域への外国投資」に関する懸念に対応しており、審査範囲は人工知能、ロボット工学、ナノテクノロジー、通信などの技術が含まれる。
FDI審査制度が正式に発足した時点で、一部のEU加盟国は投資審査の仕組みを改訂および見直している。
EU諸国は以前から、外国企業、特に中国企業が、欧州企業の買収を通じて重要な専門知識を獲得した後、不当な低価格での同商品やサービスの販売を常に懸念してきた。そして、戦略分野で外国投資を対象とした法制化を求めてきた。
たとえば、中国の家電大手・美的集団(マイディア・グループ)は、ドイツの製造業革新プロジェクトを主導した工作機械大手クーカ(KUKA)を2016年に買収することで「ドイツ製造」の技術移転を獲得した。当時、ベルリンもブリュッセルも技術保護のために対処しなかった。
中国企業は長年にわたり、欧州で大規模な投資を行っており、その多くの投資の背後に中国政府の影が見え隠れする。
オランダのコンサルタント会社Datenna BV社の最近の調査によると、2010年から現在までの10年間に、中国は欧州へ約650件投資しており、うち約40%が中国国有企業や中共政府によって管理している企業と関わりがあることが明らかになった。
また、米国の調査会社ロジウム・グループ(Rhodium Group)の調査で、中国からEUへ直接投資した1880億米ドルの約56%が、中国の国営企業によるものだとわかった。
これに対応して、米国政府は中共背景のあるファーウェイやSMICをブラックリスト入りさせるなどの制裁措置を講じた。また、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、日本などの国々も、ファーウェイの5G機器の使用を中止した。
約1カ月後の11月16日には、ベルリンでEU首脳会談が行われ、対中政策を協議する予定となっている。
(大紀元日本語ウェブ)
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