中国輸出管理法が12月1日に施行される。中国当局による恣意的な運用が懸念されるとして、日本の貿易・経済関連組織は経済産業省に対して、日米欧の三極政府が連携して対応するよう要請した。
中国輸出管理法は2017年6月に草案が初めて作られ、三度の草案の公表後、2020年10月17日中国全人代(国会相当)常務委員会で最終案が成立した。同法は輸入者、エンドユーザーを拘束する罰則と義務を規定している。さらに、中国の領域外にいる組織や個人を輸出管理規定の対象とする(域外適用)ことで、中国の管轄権が国家領域を超えており、世界貿易機関(WTO)規定違反との指摘もある。
このため三極の産業関連組織は草案公表から複数回に渡り、域外適用や報復措置、再輸出規制には国際貿易や投資の悪影響が及ぶとして意見表明し、変更の検討を求めてきた。しかし、懸念が払拭されるほどの修正はなかった。
ロイター通信によると、同法における輸出品目の管理・規制対象は、中国の「安全や利益を守る上で重要と考えられる品目」で、具体的には「デュアルユース品目、軍用品、核、国家安全と利益の擁護・拡散防止など国際義務の履行にかかわる貨物、技術、サービスなど」となっている。
11月10日、安全保障貿易情報センター(CISTEC)や日本経済団体連合会(経団連)など10の経済・貿易・産業関連組織は声明を発表し、中国輸出管理法についての懸念を改めて表明し、経済産業省に関係国間が政府レベルで対応するよう要請した。
10組織の懸念は複数事項に渡り取り上げられている。一つは、再輸出規制である。この規制により、中国から輸入した製品等を組み込んだものを日本などが再輸出する場合、中国政府の許可が必要となる。「中国との貿易・投資の前提が崩れることになりかねない」と指摘している。
さらに、第17条中国当局による日本の輸出先の最終用途・需要者(エンドユーザー)確認のための調査を行うとしている。これは「公権力の域外行使として国際法上問題となり得る」としている。
第44条には、外国組織・人に対する域外適用による責任追及条項が加わった。これについて、過去の日米欧の三極産業界からの意見書でも「国際法の属地主義の原則、罪刑法定主義の観点から疑問視される」として、削除を要請していたが、変わることはなかった。
全人代常務委草案の最終段階で、第48条「中国の安全と利益に危害を及ぼした場合に対等の措置をとる」との報復条項が追加された。ここには、「香港国家安全維持法上の外国勢力結託罪の適用」も含まれている。
中国では「国家安全」の概念が共産党による統制に基づいており、その管理対象は政治、軍事、経済、資源、科学技術、情報、宗教など幅広い。
CISTECは以前に発表した中国輸出管理法の解説文書のなかで、「通常の西側諸国の安全保障は、軍事的なものを指すが、中国は政治的立場や(党の)指導に従わない場合に、法の執行判断が降りる可能性がある」と強い危惧の念を抱いている。
(編集・佐渡道世)
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