英仏独の海軍、インド太平洋への関わりを相次ぎ表明 中共の拡張主義に対応

2020/12/07
更新: 2020/12/07

フランス、英国、ドイツの海軍はこの数カ月、インド太平洋地域の安全保障への関与を相次ぎ表明している。欧州主要国は日米の安全保障政策に協調して、中国共産党の拡張主義に対応し、地域のルールに基づく貿易保護や国際秩序の維持に加勢する。

日本メディアの報道によると、フランスは2021年5月、尖閣諸島周辺など日本の離島付近で日米とともに初の陸海合同演習を実施する。また、英空母打撃群は同年はじめ、南西諸島を含む西太平洋に派遣され長期滞在するという。

産経新聞12月6日付によると、離島における日米仏の防衛・奪還作戦を含む水陸両用の共同演習は初。演習は、尖閣諸島の周辺海域で行われる予定で、同海域の領有権を主張している中国を牽制する狙いがある。

フランスは2019年11月、インド太平洋防衛政策を発表した。フランスは、海外領土駐留部隊と地域の常設軍事施設によって、ヨーロッパ諸国の中で唯一のプレゼンスを確保している。同政策のなかでは、パートナー諸国とともに地域の安定に貢献するとされている。

フランスのピエール・バンディエ海軍参謀長は10月14日、2021年の国防予算の支出問題について、議会の国防委員会が主催した公聴会に出席。中国の軍事力について「2010年代以来、中国は高速度で軍事力を高めている」「中国海軍はすでに遠洋の核抑止力を持ち、2021年までに3隻目の空母を進水させるとしている。次世代ステルス戦闘機・殲20の艦載機の整備も宣言している」と中国軍事力の拡大に危機感をあらわにした。

バンディエ氏は2020年11月末の訪日時、産経新聞のインタビューで、中国の脅威に対抗するインド太平洋地域の安全保障枠組み「クアッド(QUAD)の共同訓練に、フランス軍も参加する意向を岸防衛相と山村海上幕僚長に伝えたという。

英国もまた、軍事を含むインド太平洋への関与を推進する動きがある。11月19日、ボリス・ジョンソン首相は議会の演説で、英国の最新空母「クイーン・エリザベス」の打撃群をインド洋や東アジアに派遣し、日米両軍の共同訓練や航行の自由作戦に参加すると述べた。   

この演説から2週間後、英海軍クイーン・エリザベスの打撃群は日本の南西諸島を含む西大西洋に2021年初めにも派遣されると報じられた。日経新聞12月6日付が複数の日本政府関係者の話として伝えた。

ジョンソン首相は11月、英国は今後4年間で防衛費を10%増やし、計165億ポンド(約2.2兆円)を、装備のアップグレードや軍事能力の向上のために投資すると発表している。首相は、欧州だけでなく世界に英国の影響力を復活させるという意思を表明した格好だ。

英国の有力シンクタンク、ポリシーエクスチェンジは11月22日、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)後もインド太平洋地域に関与すべきだと政策提案する報告書を発表している。

ドイツは9月2日、インド太平洋地域を「外国政策の優先課題」とする地域政策を発表した。政策は軍事的側面を強調したものではなく、人権や貿易保護から、地政学的な権力構造の変化がドイツに直接影響を及ぼすとして、地域への積極的な関与を表明した。

ドイツのクランプカレンバウアー国防相は11月2日、豪紙シドニー・モーニング・ヘラルドの取材に応じ、インド太平洋で豪独海軍の共同演習を検討していると語った。「領土問題、国際法違反を含む中国の世界覇権を狙う野心には、多国間でアプローチするほかない」と国防相は語っている。

ドイツ政府のインド太平洋政策文書は、欧州連合(EU)の役割に焦点を当てている。「インド太平洋地域に関する我が国のガイドラインは、将来のEU戦略の基礎となることを期待している」と書いている。

(編集・佐渡道世)

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