「どの国も免れない」中国共産党が海外メディアに影響拡大=米シンクタンク

2021/02/08
更新: 2021/02/08

米シンクタンク全米民主主義基金(NED)は2月5日発表の報告書で、中国共産党(以下、中共)の海外メディアへの影響力拡大が深刻な脅威となっていると世界各国に警告した。その主な手法は情報の歪曲などを通じて相手国を弱体化させる「シャープパワー」というものだという。

「世界のメディアにおける中国の足跡:権威主義的影響力拡大に対する民主主義的対応」と題されたこの報告書は、中共政権がいかに「プロパガンダ、偽情報、検閲、情報伝播の主要な経路への影響力」を活用し、世界中で中共を美化するメディアコンテンツを形成する努力をしてきたかを示している。

外交交渉と武力行使の間には、「シャープパワー(Sharp Power)」と呼ばれるグレーゾーンが存在している。これは、中共政権が欧米社会の開放性を悪用し、自分たちの利益のために海外メディアの内容を操作するための手段である。

中共は2013年頃から「中国を語る」ことの重要性を語り始めた。中国の習近平国家主席は、2013年8月の全国宣伝・思想工作会議で、「中国の声」を広め対外プロパガンダをうまく行うことが重要だと発言した。

今、パンデミックが広がる中、中国政府はプロパガンダ機関に、中共ウイルス(新型コロナウイルス)との戦いの「サクセスストーリー」を「中国のナラティブ」として伝えるよう求めている。

昨年7月に中国共産党機関紙「人民日報」のウェブサイト「人民網」に掲載された記事によると、「中国のナラティブ」の核心は「中国共産党のナラティブ」である。したがって、「なぜ歴史が中国共産党を選んだのか」「中共政権がどのように国民に奉仕し、知恵を絞って国を治めているのか」を示すべきだという。

報告書は、中共が世界に向けて中国のナラティブを書き換えようとする戦略は、過去10年間で大きく拡大したと指摘。「世界中の何億人もの新聞読者は、中共によって制作された、あるいは中共の影響を受けた情報を定期的に見たり、読んだり、聞いたりしているが、多くの場合、その出所を知らない」

報告書の著者で国際人権団体フリーダム・ハウス上級アナリストのサラ・クック(Sarah Cook)氏は、報告書の中で、「彼ら(中共)の鋭いエッジはしばしば民主主義の規範を損ない、国家主権を侵食し、独立メディアの財政の持続可能性を弱め、現地の法律に違反する」とし、「どの国も免れない。ガバナンスが弱く貧しい国から豊かな民主主義大国まで、すべての国が標的になる」と警告した。

あらゆる隙きにつけ込む

報告書は、西側諸国の既存の弱点が、中共による世界のメディアへの影響力拡大に拍車をかけていると指摘している。

それによると、地元メディアは資金不足のため、中国の国有企業からの提携や広告取引を拒むのが困難だ。現地の役人やシンクタンク、民間団体は中共に対する深い認識が欠けている。中共の外交官は、海外の中国語メディアをコントロールし、ネガティブな報道を検閲するために、長い間、浸透工作を行ってきた。中国人コミュニティでのWeChat(ウィーチャット、微信)など中国発アプリの利用拡大、一部の国での反欧米感情の高まり、政治的二極化などは、すべて中共に利用されているという。

台湾、南アフリカ、チェコ共和国では、中共に買収された現地メディアが中共の編集方針を忠実に反映しているという。

報告書はまた、欧米メディアの報道に影響を及ぼす重要手段として、中共が外国人記者のために何千回もの無料旅行を催したことにも言及している。旅行中、記者たちは通常、厳重に監視され、中共が指定した周遊エリアしか見ることができないという。

ブリュッセルを拠点とする国際ジャーナリスト連盟が昨年6月に発表したアンケート調査によると、会員の三分の二が、中国が自国のメディアに「目に見える存在感」を作り出していると考えていると明かした。また、少なくとも8カ国のジャーナリスト組合は、コンテンツ共有、ジャーナリスト交流プログラム、中国政府の活動への参加など、複数の中国の機関と契約を結んだという。

「過去10年間に世界中で起きた数百件の事件が示したように、中共が情報発信の足場を固めると、あらゆる機会を利用して情報を操作している」

クック氏は、報告書の中で、中共によるメディアへの浸透工作に対抗するため、各国政府が選挙前の報道と中国語メディアの精査を強化し、中国発アプリの検閲とセキュリティチェックを行うこと、そしてメディアの所有権および中共との利益関係を調査し、国民と議員に注意喚起するなど、戦略を練るべきだと提言。

中共政権が「社会全体を支配する権威主義的なアプローチ」を採用しているため、欧米からの強硬な対応が必要であるとしている。

(翻訳編集・王君宜)