不義理に真実を突きつけた 沖縄の活動家の姿捉えた映像 公開したエルドリッヂ氏に聞く

2021/02/22
更新: 2021/02/22

公道への集団座り込み、移設工事を妨害するためのブロック設置、警察や在沖米軍への暴言、左翼議員による地方紙を利用した反米世論の宣伝ー。沖縄の米軍基地反対運動を展開する過激派や共産党の活動はさまざまだ。これらの活動家の行動は、公安調査庁年次報告のなかでも毎年取り上げられている。活動家たちは島外、時に中国などの外国勢力を加えて扇動活動を行い、影響力を広げようとしている。

沖縄における活動家の動きについて、元沖縄米海兵隊政務外交部次長で政治学博士であるロバート・D・エルドリッヂ氏もたびたび、著書やエッセー、講演会を通じて指摘してきた。エルドリッヂ氏によれば、沖縄の反米軍基地運動は労働組合、教員団体、環境活動家、さらには中国や北朝鮮、韓国を背景にした組織など島外の外部勢力により構成されているという。

平和運動を主張する活動家たちの背景と動きに警戒心を抱いていたエルドリッヂ氏だが、6年前のある事案により、米軍における職を辞することになる。

2015年2月22日、沖縄県で反米活動を行う沖縄平和運動センターの山城博治議長が、米軍キャンプ・シュワブ内に侵入したとして米軍警備員に拘束された。沖縄県警察は山城議長を日米地位協定に伴う刑事特別法違反の疑いで逮捕した。

この事案に対して、共産党や社民党の議員をはじめ、地元メディアや人権団体は、山城議長の「(区域の境界線)黄色のラインを越えていない」との主張を根拠に、「弾圧」だとして米軍および日本当局を批判し、警察に山城議長の釈放を強く求めた。3月の衆議院予算委員会でも、共産党議員は「抗議活動に対する逮捕は不当」として政府を追及した。

活動家たちは、侵入していなかったのだろうか。この事案で何が起きたかを捉えた米軍基地側の監視カメラからの映像が、約3週間後の3月9日、動画共有サイトYouTubeで公開された。映像には、1メートル近く線を越えて抗議運動を続ける山城議長ほか数人の活動家が、駆け付けた警備員らともみ合いになる様子が映っていた。さらに、地元メディアが騒動の様子を記録していることがはっきりとわかる。

この映像の公開は、当時、沖縄米海兵隊政務外交部次長を務めたエルドリッヂ氏が関わっていた。同氏は映像流出の責任を問われ、退職を余儀なくされた。6年前の事案について、エルドリッヂ氏にあらためて話を伺った。

ー当時、活動家の侵入を捉えた米軍キャンプの監視カメラの映像を公開したことについて、今の考えをお聞かせください。

沖縄の「平和運動」やメディアの不健全さ、活動家の真の姿を伝えることができたと思う。全く後悔していない。仕事や生活は失ったが、誰かが言わないとダメだと考えた。

当時、皮肉なことに、私自身も辺野古への普天間移設は様々な理由で、長年反対してきた。戦略的、軍事的、政治的、財政的、環境的に、日米沖にとって最悪の案ではある。

しかし、だからといって、いわゆる「平和運動」家や環境保護団体の暴力行為や違法な行動は、許されるべきではない。公平さを掲げるメディアは、この問題について真実を報道していない。もっと知的に、政策的に議論すべきだが、フェイクニュースの蔓延や扇動的な活動は、民主主義、法の支配のある国にとって受け入れてはならないことだ。

沖縄の地元メディアは、真面目に仕事している日本人警備員の顔を映し出し、「県民の恥」と報じている。活動家は、警備員に対して「お前の家を知っている」「奥さんを知っている」などと脅している。さらにメディアは、地元のリベラル学者と共に米軍や日本政府を批判している。

2015年3月の国会予算委員会においても、共産党系の沖縄選出議員が事実と異なる意地の悪い質問をした。私は、テレビでこの国会生中継を観て、事態を解決しなくてはならないと危惧した。このため、真実を明らかにするために、担当部署から監視カメラの映像を受け取り、地元の友人を経由して、映像をオンラインで公開した。

在沖活動家は、国連人権理事会を含む国際機関を通じて、共産主義思想に基づく日本批判を行う場合もある。英字メディア・ジャパンフォワードによれば、2017年6月、山城議長はジュネーブで開かれた国連人権理事会の関連イベントで短い演説を行った。山城議長はこの前年の10月、沖縄防衛局職員に暴行を加え、また11月にはコンクリートブロックを積み上げて、工事資材の搬入を阻んだとして逮捕されているが、保釈期間中にスイスに渡った。

山城議長は、自身が受けた「不当な扱いは、政府の専制政治に反対する他の沖縄県民への警告であり、脅迫以外の何物でもない」と主張した。

この同じ席では、当時、沖縄のテレビ・ラジオ司会者を務めていた我那覇真子氏も演説した。我那覇氏は、山城議長が「暴力的な反米基地活動家」であり、演説は「国連悪用」だと反論。逆に、外部からの勢力により沖縄県民の「人権や表現の自由は、共産革命派、左傾化した報道機関によって脅かされている」と訴えた。

沖縄における中国の浸透工作

沖縄県のなかで、中国共産党による組織的な浸透工作の可能性は、日本の防衛省高官、そして米国議会委員会も認知している。前出の公安調査庁の年次報告には、「中国の大学やシンクタンクは、沖縄で『琉球独立』を求める団体関係者などと学術交流を進め、関係を深めている」と指摘した。こうした動きは、沖縄で「中国に有利な世論を形成し、日本国内の分断を図る戦略的な狙いが潜んでいる」としている。

また、2016年、米連邦議会の米中経済・安全保障検討委員会の報告書でも、中国による沖縄への影響力工作について指摘している。「中国は沖縄における日米の戦力動態を監視するというスパイ活動と、米軍の継続的なプレゼンスに対する(世論の)恨みを引き起こす扇動活動を行うことで、日米同盟を複雑にしようとするだろう」

防衛省情報本部長や防衛大学校教授を務めた太田文雄氏は2014年、米国防大学が発刊する教材JFQのなかで、「中国は沖縄の独立活動を支援してきた。親中派の沖縄県民とおそらく中国の工作員によって展開されたものである」と書いている。

また太田氏は、2012年9月の中国メディアが「2006年の琉球市民の住民投票結果」として「75%が日本からの独立と中国との自由貿易の復活を支持している」と虚偽情報を流していることを指摘した。当時、沖縄でこうした住民投票は行われておらず、沖縄県民の大多数は日本の一部であり続けることを望んでいる、と太田氏は書いている。

ー沖縄で反米基地運動の問題に直面した際、外国勢力の背景についてどう分析していますか。

外国勢力は活動資金の提供をはじめ、後方支援をしている。人の動員、情報操作や印象操作の情報戦への協力、海外の団体との連携の斡旋、旅費や会場などの手配までさまざまだ。

これは基地反対運動だけではなく、沖縄独立運動のために使われている。政治家や経済界の多くも、いわゆる「ハニー・トラップ」や、収賄、その他の不正が行われている。このため、中国をはじめ外国勢力に対して、ものを言えないとの話も聞いている。

日本当局は、特に、活動家や団体の資金集めなど、口座をはじめ、中国などから日本に入国する者の荷物、資料などを徹底的にチェックすべきだ。今はほとんどしていない。

沖縄の緊張の度合いを増す海警法

拡張主義をとる中国共産党政権は、南西諸島と東シナ海においても影響を与えている。沖縄でみられるような社会や政治に対する浸透工作といった非暴力手段に加え、中央軍事委員会傘下の海洋警察局は2月1日、外国籍の船舶に対して武器を使用する可能性を記載した「海警法」を施行し、力を背景にした現状変更を試みようとしている。

太田氏は2月15日、国家基本問題研究所での寄稿文で、中国海警法に対抗して、日米4部隊(海上自衛隊、海上保安庁、米海軍、米沿岸警備隊)の共同訓練は、有事の備え、そして抑止力としても有効であると書いている。また、海上保安庁法第25条で禁じられている、軍事用の指揮・統制・通信・情報機材の海保船舶への搭載が許可されるような法整備も必要だと主張している。

ー中国海警法施行により、日本の安全保障に影響しています。日本はどう対応すればいいでしょうか。意見をお聞かせください。

中国海警法問題について、元自衛官で参議院議員の佐藤正久氏が最も詳しいと思う。議員の主張する、海上自衛隊と海上保安庁との連携強化などの法整備や相互運用性の向上が欠かせないとの考えを支持したい。また、以前、私が寄稿文で紹介した、八重山防衛協会の海上自衛隊の誘致を最優先すべきだと思う。実現するまで、日米の艦艇の石垣への寄港を交代で行う。そして、QUADの日米豪印の海軍、後に、イギリス、フランス、ドイツも寄港するようにするべきだ。

また、私が長年提言している、航空自衛隊の下地島(宮古島市)移転は必要だ。那覇は、尖閣周辺上空へのスクランブル(緊急発進)には遠過ぎる。

いずれの場合も、これらを現場職員に一任するとの方針は間違っているだろう。これまで、中国を刺激しないように遠慮してきた日本政府は、尖閣諸島は、間違いなく日本の固有領土だという本当の姿勢を示せないといけない。これを自信をもって行っている政権は、沖縄返還以降49年間、まだ表れていない。

第11管区海上保安本部によると、尖閣諸島の領海内に中国海警局の船が侵入したのは、中国海警法が2月1日に施行されてから21日までの3週間で、6回を数える。このなかには、砲らしきものを搭載した公船も含まれている。

海上保安庁の奥島高弘長官は17日、尖閣諸島周辺の領海警備で外国船が武器を使用する場合、海上保安庁の船が「国際法で許容される範囲で武器を使用することは、排除されない」との認識を示した。海上保安庁法第20条で定める通り、警察官職務執行法第7条に基づくとした。

米国も中国海警法に懸念を表明している。米国務省のプライス報道官は19日の電話記者会見で、中国海警局は同法をもとに、東・南シナ海で「近隣国を脅かす可能性がある」と批判した。さらに、中国に「脅しや武力の行使」をやめるよう求めた。報道官は、「米国は、日本とフィリピンとの同盟国としての義務を貫く」とも強調した。


ロバート・D・エルドリッヂ

1968年米国ニュージャージー州生まれ。政治学博士。フランス留学後、米リンチバーグ大学卒業。その後、神戸大学大学院で日米関係史を研究。大阪大学大学院准教授(公共政策)を経て、在沖アメリカ海兵隊政治顧問としてトモダチ作戦の立案に携わる。2015年から国内外の数多くの研究機関、財団、およびNGO・NPOに兼任で所属しながら、講演会、テレビ、ラジオで活躍中。防災、地方創生や国際交流のコンサルタントとして活躍している。主な著書・受賞歴に『沖縄問題の起源』(名古屋大学出版会、2003年)(サントリー学芸賞、アジア・太平洋賞受賞)、『尖閣問題の起源』(名古屋大学出版会、2015年)(大平正芳記念賞、国家基本問題研究所日本研究賞奨励賞受賞)など多数。

(聞き手、文・佐渡道世)

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