台湾産パイナップル 中国が突然禁輸措置「決してたじろがない」桃園市長に支持集まる

2021/03/02
更新: 2021/03/02

中国の税関当局は2月26日、台湾パイナップルの輸入を3月1日から禁止すると突然発表した。パイナップルの産地である台湾桃園市の鄭文燦市長は2月26日、ツイッターで「美味しくジューシーなパイナップルは、台湾のみならず、日本の方にも愛されています。ぜひお試しください」と、日本への輸出促進を日本語で行なった。数日前の輸入停止という中国側の決定にも「決してたじろぎません」と毅然とした態度を示した市長の書き込みは、大きな反響を呼び、9.4万ほどの「いいね」を獲得した。

鄭市長の書き込みに多くの日本ユーザーが反応した。「私も台湾のパイナップル大好きです!パイナップルの季節には植物検疫を通して日本へ持って帰ったほどです」「金鑚パインで検索するとネットでも購入できるとのこと」「今年はもっとたくさん、日本に輸出して下さい。もっと宣伝して下さい」と肯定的なコメントが大半だ。

中国の税関当局は26日、台湾産パイナップルから「害虫が確認された」として3月1日から輸入を禁止すると発表。「2020年に台湾から何度も有害生物が輸入されていた」と主張した。しかし、台湾当局は、パイナップルの検疫合格率は99.79%であり、本格的な収穫時期を迎えるころに突然、禁輸措置を取るのは不合理だとして中国を批判している。

同時に、蔡英文総統をはじめ閣僚や各市長は農家の保護のために、台湾パイナップルの長所を日本語や英語で宣伝し、輸入と販促のキャンペーンを展開している。

台湾のパイナップル生産量は年間40万トン前後で、9割が国内で消費される。残る1割程度が輸出されており、その97%が中国本土向けだ。台湾の陳吉仲農務水産相は27日の会見で、海外のバイヤーから3万トンの輸出が確保できれば、今回の禁輸の影響をカバーできるという。台湾のパイナップルは現在、オーストラリア、ベトナム、シンガポール、日本などに輸出されている。

日本における台湾の外交窓口機関である台北駐日経済文化代表処もまた、パイナップルの販促キャンペーンに加わった。28日、台湾屏東産パイナップルの日本向け輸出便が前日に出発したと通知して、「お店で見かけたら手にとってくれるかなー?(原文ママ)」と関心を向けるよう呼びかけた。

禁輸措置は不公正な貿易慣行

台湾の蔡英文総統は26日、「豪州産ワインの次は、台湾産パイナップルを標的にした」とし、禁輸措置は中国の不公正な貿易慣行だと批判した。

中国政府は昨年8月、豪モリソン首相が中共ウイルス(新型コロナ)の出所をめぐる独自調査を呼びかけたことに反発し、オーストラリアからの農産品輸入を制限する動きを強めた。食肉や大麦への規制に加え、ワインを対象に反ダンピング(不当廉売)調査も始めた。これを受けて、日本を含む18カ国の国会議員が所属する「対中政策列国議会連盟(IPAC)」は、議員たちが豪州産ワインを飲む動画を作成するなどして、中国の報復措置を批判すると同時に、民主主義的価値を共有する国による販促キャンペーンを行なった。

台湾メディア聯合報は28日、黄偉哲・台南市長が禁輸措置を受けて「台湾が負けることはない」と表明したと報じた。台湾がオーストラリアのワイン購入を支援してきたことから、オーストラリアに対して台湾産パイナップルの輸入の働きかけを試みるとした。同時に、台湾には文旦やマンゴーなどの様々な農産物があり、台湾でも関心の高いオーストラリアのチーズや牛肉の交渉など貿易拡大も検討したいと述べた。黄市長は、今後も台湾の農作物が禁輸措置の対象になる可能性は十分にあるとして、陳吉仲農務水産相とともにマーケットの分散を図りたいと述べた。

台湾に対する中国共産党による政治的圧力は、ワクチンの輸入にも及んでいる。台湾の陳時中・衛生福利部長(衛生相)は2月17日の記者会見で、独ビオンテックのワクチン調達を中国が妨害したとほのめかした。「独バイオ製薬ビオンテックと約500万回分の新型コロナウイルスワクチンを調達することで合意していたが、干渉で契約できなくなった」と述べた。

ビオンテックの中華圏における代表を務める中国製薬大手・上海復星医薬が、台湾との契約締結を拒否したという。中国側は、上海復星を通さないビオンテックとの取引を「ルール違反」とし、台湾のワクチン輸入交渉を妨げた。

(佐渡道世)