[ワシントン/北京 17日 ロイター] – 米中両国は18日、アラスカ州で外交トップ会談を開催する。対面式の米中高官協議はバイデン政権発足以来初めて。
米政府高官は16日、バイデン政権は結束し「より強硬な姿勢」で臨む考えであり、関係改善への期待を表明している中国に「言葉ではなく行動で」示すよう求めると発言した。
中国は、過去十数年で最悪の状態に陥っている両国関係のリセットを呼び掛けているが、米政府はアラスカの会談は1回限りのものであり、今後の米中関係は中国が行動を改めるかどうかに左右されると主張している。
来日したブリンケン米国務長官は17日、「中国の行動に対するわれわれの懸念の一部を中国側に明確な形で示す機会を楽しみにしている」と語った。
今回のアラスカ会談には、ブリンケン国務長官、サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、中国の外交担当トップである楊潔チ・共産党政治局員と王毅国務委員兼外相が出席する。
アラスカ会談に先立ち、ブリンケン長官は同盟国である日韓を訪問。中国が台頭するインド太平洋地域に米国がコミットしていることを強調した。
ブリンケン長官は16日、南・東シナ海問題などを念頭に、中国に対し「圧力や攻撃」を用いないよう警告。そうした手段によって目的を達成しようとすれば「われわれは必要に応じて反撃する」と表明した。
アラスカ会談は、外交辞令とは無縁で、具体的な成果を得られない可能性が高い。新型コロナウイルス対策で、食事会も計画されていない。両国の思惑の違いも浮き彫りになっている。
中国外務省報道官は、今回の会談を「ハイレベルの戦略的対話」と表現。北京の関係筋によると、中国政府は、個別の問題の解決ではなく、両国関係の再開に向けた幅広い枠組みづくりにつなげたいと期待している。
一方のバイデン政権は、アラスカ会談は通常の対話の再開を意味するものではないと明言。
ホワイトハウスのサキ報道官は記者団に対し、今回の協議は「大きな見解の相違がある問題を含め、多岐にわたる案件について話し合う機会になる」と述べた。
<ボクシングの第1ラウンド>
バイデン政権は同盟国との関係を重視しており、米中関係を取り巻く環境は、少なくとも理論上は変化している。
米国、日本、オーストラリア、インドは先週、4カ国首脳会談(クアッド・サミット)を開催し、ワクチン配布や気候問題、安全保障について緊密に協力することを約束。名指しは避けたものの、中国を念頭に「民主主義的な価値観に支えられ、抑圧によって制約されない、自由かつ開放・包括的で健全な地域を目指す」と表明した。
米政府高官によると、バイデン政権は「欧州向けの巡回宣伝」に着手しており、日々、欧州の政府と連絡を取り、中国の台頭について協議している。
オバマ政権でアジア専門家として活躍し、現在ジョージタウン大学で教鞭をとるエバン・メデイロス氏は、アラスカ会談を「ボクシングの第1ラウンド」にたとえ、主要な問題の解決につながる公算は小さいが、両国が将来、判断ミスを犯す可能性が低下するかもしれないと指摘。
「全体として両国が互いに不満を表明する形になるだろう」と述べた。
サリバン大統領補佐官は先週、アラスカ会談について、第1段階の米中通商合意や、関税・輸出規制の詳細が、主要議題になるとは想定していないと発言。詳細な合意の成立に必要な経済専門家の多くは、会議に出席しないと述べた。
同補佐官は、今回の会談で米国の戦略的な意図と、中国の行動に対する懸念を伝えると表明。香港の民主派排除、新疆ウイグル自治区の人権問題、台湾問題、オーストラリアへの経済的な威圧行為、尖閣諸島周辺での嫌がらせを挙げた。
中国政府は、こうした問題について米政府が介入すべきではないと主張している。
中国人民大学の時殷弘教授は「たとえ気候変動対策など具体的な問題でとりあえず協力姿勢が示されたとしても、両国はあらゆる分野で競争と対決に直面しており、好影響はわずかなものにとどまるだろう」と述べた。
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