女性等を攻撃して、ウイグル人証言の信頼失墜を測る中国共産党

2021/03/19
更新: 2024/04/22

ロイター 中国北西部に位置する新疆ウイグル自治区のウイグル人や少数派イスラム教徒弾圧に対して世界的な圧力が高まる中、中国共産党は前代未聞の猛反撃を開始した。これには公の場で虐待を証言した女性に対するあからさまな攻撃が含まれる。

新疆ウイグル自治区における人権侵害への訴えの高まりに伴い、中国共産党の大量虐殺(ジェノサイド)を非難する西側諸国の議員等の数が増加している状況に対抗するため、中国は最近虐待を証言したウイグル人女性等の信用を失わせるという手段に出た。

中国当局は名指しで女性等の多産性に関する個人的医療データや情報を開示しただけでなく、一部の女性が浮気しており、1人が性感染症を患っていると非難した。中国当局の主張によると、こうした情報は女性等の信用の低さを示すもので、したがって新疆ウイグル自治区における女性虐待説の信憑性もなくなるというわけである。

中国共産党の反撃計画の一環として2020年12月に開催された記者会見で、新疆ウイグル自治区党委員会宣伝部の徐貴祥(Xu Guixiang)副局長は、「一部の報道機関による非常に不快な行為を排除するために、当局は一連の措置を講じた」と発表している。同会見では、新疆ウイグル自治区の住民や家族が独白している映像放映を含め、数時間にわたる説明が続いた。

ここ数か月にわたり実施された数十時間に及ぶ説明会や数百ページに上る文献、また専門家の取材記事を精査したロイター通信によると、中国共産党がこうした綿密かつ広範囲にわたる活動を実施している理由は、同党がこれまで演出してきた「新疆ウイグル自治区」像が崩壊することを恐れているためである。

米国のジョージタウン大学で中国史の教授を務め、新疆ウイグル自治区政策の専門家でもあるジェームズ・ミルワード(James Millward)博士は、「中国共産党がこうした女性等の証言を深く懸念している理由の1つは、こうした証言により、同党が当初から新疆ウイグル自治区の収容所について掲げてきた主張『テロ対策』が根底から崩れるためである」と説明している。

同博士はまた、「強制収容所には非常に多くの女性が拘留されている。全く暴力的には見えない女性も多い。これにより、こうした少数民族の拘束がテロとは何の関係もないことが分かる」とも述べている。

国連の推定に基づくと、中国中央人民政府がテロ対策と主張する新疆ウイグル自治区の強制収容所に拘留されている約100万人の大部分はウイグル人である。活動家や西側諸国の政治家等の訴えによると、強制収容所では拷問、強制労働、不妊手術などが行われている。

米国政府は同自治区のウイグル人に対する中国共産党の政策を「大量虐殺」と認定しており、カナダ議会とオランダ議会もこれに賛同している。 新疆ウイグル自治区の強制収容所に関する中国の政策に関しては、欧米諸国が国連の独立調査を要請しているが、中国政府はこれに猛反発している。

ジャーナリストや外交官等は政府の厳重な管理の下で収容所見学を行うことができるが、許可されている場所以外への立ち入りは禁止されている。しかも、見学に参加するには、数週間前に質問だけでなく、収容所の元拘留者や宗教家等による証言が収録された動画を提出する必要がある。

ウイグル人等の発言によると、人々は取材に応じることで課される報復を恐れている。

2021年1月には、在米中国大使館のTwitterアカウントに、「中国政府の収容所政策が功を奏して、ウイグル人女性はもはや『赤ちゃん製造機』でなくなった」という投稿があったことで、同アカウントが一時的に凍結されるという事態が発生した。 ミルワード博士は、「同投稿記事については、人間としてその生物学、生殖、性の側面が特にぞっとするほど恐ろしい」とし、しかも中国は「これを認識しているようである。そして同政府は今、下手な反撃に出た」と述べている。

2月下旬に開かれた記者会見で、中国外務省の汪文斌報道官は、新疆ウイグル自治区における性的虐待を証言した女性等の写真を掲げ、その内の女性1人の証言は「嘘であり、これは単なる噂」であると主張した。同女性が過去の取材では同様の証言をしていないというのがその理由である。

汪報道官は同女性の多産性についても詳細を発表している。 1月には、新疆ウイグル自治区当局が、外国報道機関の取材に応じた某ウイグル人女性は梅毒を患っているとして、医療記録の画像を公開している。これは某女性の人格には直接関係のない未承諾の情報である。 中国は収容所の拘留者数に関するデータの開示を拒否している。中国政府は当初、強制収容所自体の存在を否定していたが、最近は収容所を「職業訓練センター」であると説明し、全員が「卒業」したと主張している。 

(Indo-Pacific Defense Forum)