北朝鮮で飢餓・貧困が発生 新型コロナで国境封鎖=国連報告

2021/03/30
更新: 2021/03/30

北朝鮮の人権問題を担当する国連特別報告者が最近発表した報告書によると、北朝鮮では餓死の例が報告されている他、路上で物乞いをする児童や高齢者が増加しており、法律違反で死刑になる危険を冒して中国からの密輸食品を入手しようとする国民も発生するなど、国による国民虐待は国際機関の介入が必要な状況に陥っている。

トマス・オヘア・キンタナ(Tomas Ojea Quintana)国連特別報告者がジュネーブで開催された国連人権理事会(UNHRC)定期理事会で発表した報告書には、「北朝鮮が長期間にわたり厳格に新型コロナウイルス感染症の拡大抑制措置を講じていることで、貿易・商業活動の大幅の減少と共に一般国民の間で深刻な経済困窮が生じ、食糧不安が増大している」と記されている。

同報告書には、「餓死の例が報告されており、家族が扶養できなくなった児童や高齢者が物乞いを行うケースが増加している」とも記されている。 食糧難に陥った人々は、射殺される危険を冒して、密輸や他の違法行為に積極的に関与して中朝国境に接近する。同報告書によると、パンデミック関連規則に違反した場合も厳しい罰則が科せられる。

同報告書には、「2020年12月、中国との違法取引に関与した容疑で50代男性が公開処刑になった言われている。報告によると、2020年11月には密輸に関与した容疑で国境警備隊員2人と兵員2人が処刑された。同月、平壌で有名な両替商も処刑されたとされている」と記されている。 これまでも常態化していた人権侵害がパンデミックにより助長されている模様である。

2020年1月、中国と北朝鮮は1,350キロにわたる中朝国境を閉鎖し、すべての貿易を停止した。 これにより、米国と国連の核制裁によりすでに二重苦に陥っていた北朝鮮経済に壊滅的な打撃が及ぼされた。北朝鮮の商取引の多くは中国からの輸入品売買に依存していたことから、国境閉鎖により地域全体の経済活動が停止し、国民から所得を得る手段が失われた。

国境が封鎖され人々の国内移動も極度に制限されていることで、「深刻な食糧危機」が発生する可能性があると、キンタナ国連特別報告者は懸念を表明している。しかも、パンデミックに伴う北朝鮮の孤立化により、国際的な人道支援活動が混乱状態に陥っている。 同国連特別報告者は、「国際連合安全保障理事会制裁委員会は人道支援の推進を図っているが、DPR[朝鮮民主主義人民共和国]への支援物資は輸入規制ために数か月間も中国国境に足止めされていることで、救命品の配給が遅延している」と述べている。

他の国連報告書に記載されているように、同報告にも北朝鮮の強制収容所における人権侵害が指摘されており、パンデミック関連規則違反者を収容する拘禁施設の構造に対する懸念が表明されている。 同国連特別報告者はまた、「安全保障理事会が北朝鮮の状況を国際刑事裁判所に付託する時期が来ている」と訴えている。

さらに、「新型コロナウイルス感染症パンデミックにより(北朝鮮の)孤立が深まっていることで、これまでも深刻な人権侵害に曝されてきた一般庶民の状況がますます孤立化する」と付け加えている。

同報告書には、国連安全保障理事会に対して「非人道的犯罪に関して最も責任のある者に的を絞った制裁制度を採用する」ことを促し、「一般庶民の人権に悪影響を与える制裁の解除を検討する必要性を訴える」内容が含まれている。

(Indo-Pacific Defence Forum)