新疆問題、豪シンクタンクの中国系研究員が新たに非難の標的に

2021/04/05
更新: 2021/04/05

新疆問題をめぐって、中国のネット世論工作員は豪シンクタンク、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の中国出身の女性研究員、許秀中(Vicky Xiuzhong Xu)氏を新たにやり玉に挙げた。許氏は、ASPIが昨年発表した中国当局によるウイグル人への強制労働に関する報告書の作成に関わった。

ASPIが昨年2月28日に発表した調査報告書「売りに出されたウイグル人(Uyghurs for sale)」によると、中国当局はウイグル人をはじめとする少数民族の人々を、西部の新疆ウイグル自治区から全国の工場に大量に送り出している。ウイグル人らは、Apple、BMW、GAP、Nike、Sony、Volkswagen、adidas、ファーウェイ、サムスンなど、スマホやアパレル、自動車分野の少なくとも82の世界的なブランドのサプライチェーン工場で強制労働させられているという。

同報告書は、2017~19年までに、8万人以上のウイグル人が新疆ウイグル自治区から全国の工場に移送されたと示した。

中国当局は3月24日、1年前に新疆綿を利用しないと発表したH&Mへのボイコット運動を呼びかけた。中国ネット上ではボイコット運動が広がり、他の外資系アパレル企業にも飛び火した。しかし、対米関係上で、中国当局は欧州連合(EU)を懐柔する必要があるため、共産党機関紙・人民日報の胡錫進・編集長らは3月末、SNS上でボイコット運動を沈静化する必要があるとの主張を展開した。

しかし、中国ネット世論工作員(五毛党)は3月31日から、「『新疆綿』の話題を煽った黒幕だ」「妖女」「売国奴」などと批判の矛先をASPI研究員の許秀中氏(26)に向けた。動画共有サービス大手のYouTubeでも、許氏を中傷する動画が投稿されている。

非難を受けて、許氏は今月1日にツイッター上で複数回投稿し、「ウイグル人への強制労働が終焉するまで、(報告書を)書き続ける」と表明した。

許氏は投稿の中で、メルボルン大学在学中の2017年に、新疆ウイグル自治区での人権問題に興味を持ち始めたと語った。同氏は学生時代、米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿していた。大学卒業後、オーストラリア放送協会(ABC)に入社し、豪州のウイグル人住民を取材した。同氏は「私にできることは事実を書くことだ」という。

同氏は、ASPIが新疆問題をめぐる報告書を発表した後、中国当局からどう喝を受けたと明かした。中国国内にいる同氏の親族や友人が連行され、取り調べや嫌がらせを受けたという。

中国ネット世論工作員の非難について、許氏は「私は新疆綿について書いていない。強制労働を書いたのだ」「実際、多くのアパレル企業、電子機器企業、医療用具メーカー、食品企業ですら、ウイグル人の強制労働に関与している。この問題は新疆綿より深刻だ」と反論した。

許氏は2019年の香港民主化運動で、香港のデモ参加者への支持を表明した。同年8月に同氏は、駐オーストラリア中国大使館の指示で集まった中国人留学生らが、シドニーで香港民主化デモに反対する集会を行っている様子をツイッター上で生中継した。その数日後、許氏はシドニー・モーニング・ヘラルド紙でこの集会を報道し、五毛党から受けた攻撃・中傷に言及した。

同氏は記事で、自身がオーストラリアに渡った当時、中国共産党を擁護する「民族主義者だった」と明かした。大学の授業でレポートを書くために、オーストラリアに亡命した中国の反体制活動家を取材することをきっかけに、中国当局への認識が変わったという。

許氏は2014年に留学でオーストラリアに渡り、現在同国の永住権を取得している。

(翻訳編集・張哲)

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