[ブリュッセル 19日 ロイター] – 欧州連合(EU)は19日、オンラインで外相会合を開き、インド太平洋地域でEUの利益を守り、中国の覇権に対抗するため、安全保障や通商などさまざまな分野を通じて同地域での影響力を高めることで合意した。9月に戦略の具体案をとりまとめる。
声明に中国についての直接の言及はなく、外相らも戦略が「反中国」を意図したものではないとした。しかし、EUとしては独裁的強権主義の拡散には反対することを中国政府に示すのに、新たな戦略を用いていく狙いがある。今回の声明は、バイデン米政権の中国対抗策への支持もにじませた。
新戦略構想はフランスやドイツやオランダが主導。声明はEUが同地域での戦略を強化することについて、「民主主義と法の支配、人権、国際法」の促進に基づくものだと指摘。同様の志を持つパートナー国などや安全保障、防衛の組織と連携を深めるとした。
EUは今後、新戦略の下でインド太平洋地域の問題に対する外交的関与を強めたり、同地域への投資を強化したりする可能性がある。領海問題などで係争中の南シナ海への船舶派遣や、オーストラリアによる海洋警備活動への参加なども検討する可能性がある。
EU外相らによると、インド太平洋地域諸国もEUに対し同地域でのプレゼンスを高めることを望んでおり、同地域諸国が中国でも米国でもない選択肢を確保できることを願っている。
声明は同地域での海洋安全保障への関与の必要も打ち出した。ただ、EUが実際に安全保障面でどこまで意欲を見せるかは不明。
EUは新たな貿易協定を重視しようとしており、オーストラリアやインドネシア、ニュージーランドとの自由貿易協定(FTA)締結が課題になっている。中国が他のアジア太平洋諸国と来年にも発効させる地域的な包括的経済連携(RCEP)協定をにらみ、EUが取り残されることへの危機感もある。
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