対立深まる豪中関係 一戦交える可能性も=豪少将

2021/05/13
更新: 2021/05/13

豪中関係の対立が深まるなか、軍事衝突の可能性を指摘する声が豪軍から上がっている。特殊作戦部のアダム・フィンドレイ少将は4月、兵士に向けた演説の中で、中国とオーストラリアはすでに「グレーゾーン」の紛争を始めており、将来的には中国と実際に衝突する可能性もあるため、計画を立てなければならないと述べた。

豪日刊紙「シドニー・モーニング・ヘラルド」(The Sydney Morning Herald)がリークされた情報として5月4日に報じた。少将は、中国との緊張が今後も高まれば、海軍、陸軍、空軍のほか、サイバー作戦や宇宙作戦も視野に入れる可能性があると述べた。

少将は、中国はオーストラリアと「協力」すると言いながら、同時にロシア、北朝鮮、イランなどと手を組み、オーストラリアと「グレーゾーン」で競争していると指摘。中国は「戦略的な戦争」を重要視し「力を使わずに効果を得る」ことを望んでいると非難した。

ピーター・ダットン国防相もまた、中台関係とオーストラリアの関与の可能性に触れている。4月25日、ABCテレビのインタビューで、台湾問題における中国との対立は「軽視されるべきではない」と述べた。「中国は台湾を統一する野心をあらわにしており、(中略)中国と台湾の間には敵意がある」とも述べた。

オーストラリアと中国は資源の貿易で関係を築いてきた。去年、中国は2900万トンのLNG(液体天然ガス)をオーストラリアから輸入し、日本を抜いて世界最大のLNG輸入国となった。オーストラリアの輸出を国別で見ると、中国は2009年から日本を上回って以降、中国向けが最多となった。しかし、中国国家発展改革委員会は5月6日、オーストラリアとの経済的対話を全面的に「無期限停止」すると発表した。中豪間の緊張がさらに高まる見通しだ。

また、ブルームバーグによると、中国のLNG(液化天然ガス)輸入会社のなかには、規模が小さめの少なくとも2社がオーストラリアからLNGの新規購入を避けるよう、政府当局者から命じられているという。

しかし、豪シンクタンクのローウィー研究所(Lowy Institute)首席経済学者ローランド・ラジャ氏は現地紙オーストラリアンに対して、「中共の経済復讐はオーストラリアに対して大きな損をもたらしていない」と説明した。「ワイン以外に、オーストラリアの輸出の損は10億豪ドル以下であり、全額の輸出を考慮すると、鉄鉱石の価格高騰が復習措置による損失を完全に相殺している」と述べた。

また、オーストラリア北部のダーウィン港について、5月3日にオーストラリア当局は、中国・山東省のエネルギー・インフラ企業、嵐橋集団(ランドブリッジ)によって99年貸与している契約に対して見直すことを発表し、今年中に審査結果を出す予定だ。安全保障上の懸念が原因と見られる。契約が取り消される場合は、中豪関係はさらに悪化するとみられる。

ダーウィン港は商用・軍用の両用港であり、訪豪した米軍の船舶はダーウィン港に寄港している。2015年から中国嵐橋集団(ランドブリッジ)の管理下に置かれた。同社の豪州責任者によると、2015年に港湾を99年間賃貸する契約を5億600万豪ドル(約429億円)で交わし、全額を前払いしたという。西太平洋における中国の脅威が拡大するなか、2019年豪当局はダーウィン港に米軍海兵隊を収容できる軍事施設を作る予定があると発表した。

嵐橋集団の葉成(よう・せい)総裁は2013年、中国政府に「中国国防発展に関心を持つ十大人物」と評され、中国共産党や中国解放軍と深い関係にあると指摘されている。

(蘇文悦)