北極関与を宣言する中国 地域の優位性を高めるため米軍は軍事演習を展開

2021/05/17
更新: 2021/05/17

温暖化により氷結していた北極海航路が開くにつれてこの資源が豊富な地域はますます注目され、中国は2018年に北極圏から1500キロも離れているにもかかわらず自国を「北極近接国」と宣言した。米国は地域の優位性を維持するため、次世代戦闘を想定した訓練を行なっている。

2021年5月上旬、ノーザン・エッジ21演習の期間中に数千人規模の米国軍が北極圏と北太平洋地域の周辺に集結して空中、陸上、海上防衛の熟練度を実演し、さらに次世代の戦闘システムと全領域統合指揮統制(JADC2)の潜在能力にも焦点を当てた。

米インド太平洋軍が主催し、米太平洋空軍が率いた12日間の演習には約15,000人の空軍兵、海兵隊員、海軍兵、陸軍兵に加えて200機以上の航空機、航空母艦やその他の艦艇などが参加した。

北アメリカ航空宇宙防衛司令部(North American Aerospace Defense Command)とアメリカ北方軍(U.S. Northern Command)のメグ・ハーパー(Meg Harper)少佐は、サウスチャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post)紙に対して「この地域におけるロシアの活動の拡大と中国の野心は、北極圏の戦略的重要性を示している。競争は増大するだろう」と述べた。

米軍部の指導者は、この1年おきの演習は米国とその同盟国や提携諸国が現状を乱すことを意図している競合他国や他の敵対諸国に対して優位性を維持するのに役立つと述べた。 アラスカ軍および第11空軍の司令官であるデビッド・クラム(David Krumm)中将はサウスチャイナ・モーニング・ポストに、「南シナ海における中国は国際社会に認められていない領土主張を続けている。私たちは、中国が領土主張を正当化しようとするために一連の恐喝的、経済的、強制的な手法を使用していることを知っている。このパターンが北極圏で繰り返されないようにする必要がある」と述べた。 

演習のリードプランナーである空軍のマイケル・ボイヤー(Michael Boyer)中佐は「ノーザン・エッジは、統合軍が1つの大きな舞台でパズルのすべてのピースを組み立てる機会だ。これはハイエンドで現実的な戦闘訓練である」とアラスカ・パブリック・メディア(Alaska Public Media)に語った。

演習は2年に1度開催され、2021年ではフロリダ州のエグリン空軍基地に配備されている第53空軍本部からアラスカまで約7,000キロメートルを飛行した第4世代の戦闘機F-15EXイーグルII(写真参照)の運用試験が行われた。搭乗員は、脅威評価能力を強化する電子戦技術であるイーグル・パッシブ/アクティブ・ウォーニング・サバイバル・システム(EPAWSS)を評価することが期待されていた。

第53空軍からの他の参加機には、F-15CおよびE戦闘機、F-35戦闘機、B-52爆撃機、MQ-9無人航空機、U-2偵察機が含まれていた。演習のほとんどは巨大な共用太平洋アラスカ演習施設で行われた。第53空軍のスタッフ・ディレクターであるマイク・ベニテズ(Mike Benitez)中佐はニュースリリースで、「ノーザン・エッジで使用されているユニークな施設であり、通常とは異なり不慣れで複雑、現実的な運用環境でテクノロジーや戦術を試験することができる」と述べた。

ノーザン・エッジ21に参加した他の主要部隊は、USSセオドア・ルーズベルト空母打撃群と第11空母航空団、マキン・アイランド揚陸即応群と第15海兵遠征部隊、第4歩兵旅団戦闘団(空挺)、第25歩兵師団および第7野戦砲旅団だ。星条旗(Stars and Stripes)新聞によると、シナリオは配備を高速化し機動性を向上させるためのハブ&スポークのフレームワークを組み込んでいる空軍の機敏な戦闘活動や軍隊内のすべての情報を単一のネットワークに統一する国防総省のJADC2イニシアチブなどの概念を洗練させるために設計された。

ボイヤー中佐は、「通常、トレーニングは自分の部隊単位や軍隊単位で行われるが、現代の紛争で予想される量や動きは複雑だ。私たちが構築したシナリオは潜在的な敵が持つ近代的な能力を考慮したい」と述べた。

米国は紛争環境にある複数の場所へ迅速に再補給をすることができる。 現在のロシアそして崩壊前のソ連との長い競争の舞台となってきた北極圏と北太平洋地域は、米国の祖国防衛と広範なインド太平洋地域の平和と安定の鍵を握っている。ボイヤー中佐は、エア・フォース・タイムズ(Air Force Times)紙に、「明らかに我が国は北極圏における利害に対して多くの関心と価値を持っており、それらが適切な方法で保護および保持されるようにしたい」と述べている。

(Indo-Pacific Defence Forum)