中国のオンラインショッピングサイトでは、「躺平(寝そべり)」という社会現象に言及した商品が削除されている。「寝そべり」は就職、住宅購入や結婚など抑圧から逃れる若者の新しい生き方として、学者は「ポストモダン的な流れだ」と評していた。しかし、中国共産党(以下、中共)は競争を避け発展に繋がらないイデオロギーとして警戒し、検閲を行なっている。
淘宝(タオバオ)や京東(ジンドン)では、ここ数日、寝そべりのスローガンが書かれたTシャツや携帯電話ケースなどが削除されていると、ネットショップの店員がラジオ・フリー・アジア(RFA)に語った。
オンラインの解説では、寝そべりを支持する若い世代は「家を買わない、車を買わない、結婚しない、子供を産まない、消費しない」と従来の社会的な圧力を避けて生きるライフスタイルを言う。
浙江省を拠点とするタオバオの顧客である朱英さんは、「『躺平(寝そべり)』や 『只要躺得够平就不会被割韭菜(横にならなければニラのように切り取られてしまう)』などのスローガンが書かれたTシャツはたくさんあった。マグカップやスマホケース、バンパーステッカーなどにもプリントされていた」と述べた。
「でも、今はみんな消えてしまった」と彼女は語った。
6月22日にタオバオで 「躺平T恤(寝そべりTシャツ)」というキーワードで検索したところ、完全に一致するものはなく、「新青年」や 「軟萌兔」などのスローガンが書かれたTシャツしか見つからなかった。
朱さんは、「権力者たちは、消費や労働、結婚を拒否して、ただ寝そべるべきだという考えを、特にタブー視している。だからこそ、彼らは検閲したのだろう」と述べた。
この「寝そべり」という概念は、2年間失業していた若者の投稿によって始まった。この投稿者は、食や労働、社会的地位に構うことなく、競争しないで生きることを奨励し、「寝そべりはまさに賢者の運動。躺平は万物の尺度だ」と主張した。
中共が厳しく統制している国営メディアは、この投稿と概念が広まると、「恥ずべき態度」だと批判した。南方日報は、このような態度は「毒入りチキンスープ」のようだとする論説を掲載した。
光明日報は「青春を大切にして働くように指導する」と題した記事で、躺平は明らかに多くの面で経済・社会の発展を阻害していると指摘した。 その後、中国共産党中央委員会は、微博で「大荒波の中、若い世代は使命を持ってこの国で生きている。 信念や夢、苦労、献身があり、決して横たわることを選んだわけではない」などと、あらゆる面で「寝そべり主義」を批判した。
北京在住の独立系学者である季風氏は、中共は「寝そべり」という概念を、権威的な支配に対する非暴力の抵抗になぞらえているのではないかと指摘した。
「中共は、寝そべりを権威的な支配に対する非暴力の抵抗になぞらえている可能性が高い」「人々がこのようなことをすれば、経済が悪化し、(中共の)プロパガンダに水を差すことになる」と李氏は述べた。「これは非常にポストモダン的なことであり、中共が投げかけるものを解体する方法だ」と分析している。
広東省在住の人権派弁護士の隋牧青氏も、この行為は本質的に反抗的であると述べた。「個人的にネガティブで反抗的な動機を持っている若者もいるので、政府はその点を非常に警戒している」と隋氏は述べた。
「(寝そべりは)刺激がないから寝るという話ではない。若者のライフスタイルや思考にも介入してくる全体主義的な社会に生きていることへの現れ(反発)だ」と同氏は見ている。
台湾の国立成功大学の政治学教授である梁文韜氏は、今の20代の人々は、より良い生活のために親の世代が生涯をかけて闘ってきたことをすでに目撃していると述べた。
「ボトルネックのように、チャンスがどんどん少なくなっている。それと同時に、彼らは自分の子供だけでなく、親も養わなければならないことを自覚している」と彼は述べた。
RFAの広東語サービスで放送された論評の中で、梁氏は「このような非協力的な態度に直面しても、中共は何の対策も提案せず、不適切な行為を説くことにしている」と書いた。
彼はまた、「しかし、中共は、大多数の労働者がこのような否定的な精神状態のままでは、自分たちが重視する経済発展のレベルを維持できないだろう」と書いた。
(翻訳・小蓮)
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