オランダのイングリット・ファン=エンゲルスホーフェン(Ingrid van Engelshoven)教育・文化・科学相はこのほど、中国の孔子学院(CI)が学問の自由を侵しているとし、オランダの大学に同学院との提携ををやめるべきだと呼びかけた。16日の議会で孔子学院に関する質問に書面でこう回答した。
オランダの独立調査報道メディア「Follow the Money」は5月7日、中国共産党との提携は経済的損失をもたらすだけでなく、学問の自由も制限を受けていると報じた。その後、同国の政党「キリスト教民主アピール」が議会で孔子学院について問題提起した。
中国人教授「中国のイメージを損なう言動しない」と約束
現在、オランダにある孔子学院は2校だ。それぞれフローニンゲン大学(University of Groningen)とザウト応用科学大学(Zuyd University of Applied Sciences)と提携している。オランダ最古の高等教育機関、ライデン大学(LeidenUniversity)は、2019年に契約満了をもって、同大の孔子学院を閉鎖した。
オランダ放送協会(NOS)は5月、フローニンゲン大学の中国人教授は孔子学院との契約書で、「中国のイメージを損なう言動をしない」と約束したことを報じた。また、同教授の報酬の一部は中国政府教育部(文部科学省に相当)傘下の国家漢語教育指導弁公室(国家漢弁)から支払われている事が分かった。国家漢弁は孔子学院の本部でもある。
その後、フローニンゲン大学は、孔子学院との提携継続に反対する署名活動を開始した。
これを受け、同国のエンゲルスホーフェン教育相は議会の質問に対して、「フローニンゲン大学は国家漢弁から資金提供を受けている中国語と文化の講義を中止する予定だ」と書面で答弁した。
同大学も「国家漢弁」との契約を更新しないと表明した。契約は2016年からの5年契約となっている。
表向きで中国語教育の普及を目的とする孔子学院は、米連邦捜査局(FBI)から「学術活動を破壊し、学問の自由を損なっている」と指摘され、捜査の対象にもなっていた。中国共産党政権は孔子学院を巨大経済圏構想「一帯一路」の教育アクションの重要部分に位置付けている。
デルフト工科大学と 中国・「国防七大学」の提携
オランダでは孔子学院以外にも、中国の大学との学術交流が問題となっている。
3月26日、オランダのデルフト工科大学(TUD)は同校が中国軍とつながりのある中国の4つの大学と協力しているとのレポートを発表した。
デルフト工科大学は、オランダで最も古く、最大の総合工科大学である。設立以来3人のノーベル賞受賞者を輩出しているオランダを代表する研究型工科大学であり、多くの高等機関において高い評価を得ている世界トップレベルの名門校の1つである。航空宇宙工学科をはじめとする9つの学科で構成されており、15,000人を超える学生と、2,700人以上の研究者が在籍している。
同大学の科学者はしばしば中国の研究者と協力して、中国軍に利益をもたらす技術の研究行っている。
デルフト工科大学は、中国の「国防七大学」に数えられる北京航空航天大学、北京理工大学、ハルビン工業大学、西北工業大学と共同研究を行っている。
デルフト工科大学のレポートによれば、過去15年間、同大学はこの4大学と学生交換、研究協力などの協定を締結している。特にデルフト工科大学の航空宇宙工学部もこの4大学と協定を締結しているという。
豪シンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」は報告書で、中国の「国防七大学」は民間大学ではあるが、中国軍と密接な関係があり、その研究予算の少なくとも半分は、ミサイルや顔認識技術、軍用機や衛星の開発などの軍事研究に費やされていると指摘した。
デルフト工科大学の一部の科学者らは、「リスクが大きすぎる」とし、「国防七大学」とは今後協力しないと表明した。
(翻訳編集・李凌)