北朝鮮の国営テレビ放送、朝鮮中央テレビは25日、平壌市民への街頭インタビューの様子を放送した。1人の市民は、最近、金正恩総書記の痩せた姿を見て「胸が痛かった」と話した。一部の専門家は、北朝鮮当局が指導者の体重減少を政治宣伝に利用し、指導者が国民と苦楽を共にしているというイメージを強調したいためだと指摘した。
韓国ソウルに本部を置く北朝鮮関連ニュースサイト「NKニュース」は8日、金氏が今月初め、約1カ月ぶりに姿を見せた際、腕が明らかに細くなり、腕時計のベルトも以前よりきつく締められていると分析した。このため、金氏の健康状態に関して憶測が広がった。
ロイター通信28日付によると、北朝鮮当局の動向を分析する米国情報サイト「38ノース(38 North)」のジェニー・タウン(Jenny Town)ディレクターは、金正恩氏の体重減少は病気によるものか、それとも同氏が体を鍛えようと思ったかは不明だとした。しかし、「痩せたことを強調するかのように、金正恩氏にあんな似合わない服を着せるのはおかしい」と同氏は述べた。
金正恩氏は15日、労働党中央委員会の会議で、国内の食糧状況は「厳しくなりつつある」と発言した。中共ウイルス(新型コロナウイルス)の流行に伴う国境封鎖や移動制限で、中国との貿易が滞り、国内経済がさらに悪化した。
韓国ソウルにある北朝鮮情報分析企業、コリア・リスク・グループ(Korea Risk Group)の最高経営責任者(CEO)、チャド・オキャロル(Chad O'Carroll)氏は、金氏の体重減少は、国民に対して宣伝価値があると指摘した。同氏は、北朝鮮当局は国民に対して、最高指導者でさえ食糧不足に耐えているとアピールしているとの見方を示した。
オランダのライデン大学の北朝鮮問題専門家、クリストファー・グリーン(Christopher Green)氏は、国民が最高指導者の健康状態に強い関心があることを北朝鮮当局もわかっていると指摘した。同氏は、国営メディアが放送した「街頭インタビュー」は当局のメディア戦術であると強調した。その目的は「本物のように見せかけ、政権を美化するためだ」とした。
(翻訳編集・張哲)