「福島産の農産品は安全だ」と主張した中国広東省科学院の陳能場研究員の講演動画は中国のネット上で非難され、取り下げられた。
土壌専門家の陳研究員は4月27日、政府系シンクタンク「中国科学院」が主催したフォーラムで放射線物質に汚染された土壌が除染作業を経て、安全な農作物を栽培できるのかについて講演した。その際、福島県を例に挙げ、「安全な農産品の生産が可能だ」と述べた。
6月23日に公開された動画で、陳氏は福島第一原発事故が起きた2011年には、日本の2.2%のコメから基準値を超えるセシウムを検出したが、翌年からこの比率が大幅に下がり、15年以降、基準値越えの放射線物質は検出されていないと指摘した。日本で講じられた措置と検査データを挙げ、「福島産の農産品は安全だ」と結論づけた。
ネットユーザーは陳氏の主張は「中国の食品が安全ではない」と暗に批判しているとコメントを書き込んだ。なかには陳氏は日本政府の資金を受けたため、中国を侮辱しようとしていると疑っている人もいる。陳氏は現在、鹿児島大学日本学術振興会外国人特別研究員を勤めている。
講演の主催者は内容が不適切だとして動画を取り下げ、再発防止に努めると謝罪した。
近年、「辱華事件」(中国を侮辱した事件)が多発している。
ソニー中国は今月7日に新製品発表イベントを開催する予定だった。しかし、日中戦争のきっかけとなった盧溝橋事件と同じ日のため、「辱華」と叩かれ、イベントをキャンセルした。
中国の動画配信サイトBilibiliで登録者数55万人を有する日本のVTuber花園セレナが5日、配信中に表示した中国地図に国境の紛争地域を「未確定国境線」と表記したため、ネットユーザーから批判され炎上した。中国はインド国境の隣接地域、南シナ海で所有権を主張している。
花園セレナはすぐ、「中国の国家主権や領土保全については理解しており、これを教訓に似たトラブルが起きないよう気をつける」と謝罪のコメントを出した。
オーストラリアのモナシュ大学ケビン・キャリコ( Kevin Carrico)講師はこの現象について、「辱華事件」の多発は中国国内で高まる民族感情の反映だとニューヨーク・タイムズの取材に語った。中国共産党の「外国人は中国を軽蔑している」とのプロパガンダはこの民族感情を増幅させたと分析した。
「批判のほとんどが難癖の域を出ていない」という。
(翻訳編集・李沐恩)
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