6月9日に開催された日豪外務・防衛閣僚協議(2プラス2)では、自由で開かれたインド太平洋の維持に焦点が当てられた。 オーストラリアの外相と国防相および日本の外相と防衛相は、中国の違法な海洋権益主張と中国内で発生している人権侵害に反対することを確認し、中国が最近制定した「海警法」に対する懸念を表明した。
4大臣はまた同盟国の米国、提携諸国、多国間組織・機関と継続的に協力を図ることで同地域における共通の価値観と利益を推進することを誓約している。 仮想形式で実施された協議の後の記者会見で岸信夫防衛相(写真参照)は、「日豪防衛協力はもはや二国間に限らず、インド太平洋地域の平和と安定に一層積極的に貢献するものへと更なる深化を遂げていかなければならない。
防衛省・自衛隊としては『自由で開かれたインド太平洋』の維持・強化に向けて、豪州との防衛協力を『新たな次元』へと更に引き上げていく考えである」と述べている。
共同声明には、「民主主義、人権、自由貿易、法治に基づく国際秩序」に対する日豪の取り組みを、国際法を無視して南シナ海で活動を続ける中国の行為と対比させた内容が含まれている。同声明の中で4大臣は、ますます進む中国人工島の軍事化、中国海警局と海上民兵の船舶による危険行為の増長、近隣諸国の漁業と採掘活動の妨害行為に言及している。
2016年にハーグに所在する常設仲裁裁判所が中国の領有権主張は国連海洋法条約(海洋法に関する国際連合条約/UNCLOS)に違反するとの判決を下していることから、中国政府が主張する広大な海域を「防御」するために中国海警局が武器使用などの武力を行使することを認める海警法は無効であると指摘した4大臣は、南シナ海の紛争解決と行動規範の確立において国連海洋法条約を基盤とすることを再確認した。
さらに平和、安定、繁栄を維持する方法として、共通の目的を掲げる両国間の協力を強調している。 共同声明には、「我々はインド太平洋のための我々の前向きなビジョンを実現するため、日米豪戦略対話や日米豪印(クアッド)等の枠組の下でのインドおよび米国との協力を含め、同志国と引き続き協力していく」と記されている。
また、同声明には、ASEAN(東南アジア諸国連合)、特に2009年以降は参加国18ヵ国により年次開催されている東アジアサミット(EAS)の重要性を支持する内容が含まれている。最新、欧州諸国と欧州連合(EU)が自由で開かれたインド太平洋への支持を表明したことに対する歓迎の意も明示されている。
これは「英国空母打撃群21(CSG21)」の展開、日米豪により日本国内で実施された多国間大規模演習へのフランスの初参加やドイツによる太平洋へのフリゲート派遣といった欧州の活動を指すものである。
共同声明には、中国による新疆ウイグル自治区のウイグル少数民族の弾圧や香港における取り締まり強化を批判する内容も盛り込まれた。 さらに共同声明には、「我々は中国に対し、国連人権高等弁務官を含む独立した国際的な視察団に緊急かつ有意義で自由な新疆へのアクセスを許可するよう求める」および「我々は香港の民主的制度を弱体化させ、香港基本法および英中共同声明で保障された権利や自由を損なう最近の動向について重大な懸念を共有する」と記されている。
(Indo-Pacific Defence Forum)
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