ドイツ連邦検察は6日、中国の機関に情報を提供していたとして、同国の政治学者のクラウス・L(Klaus L)被告(75)をスパイ容疑で拘束・起訴したと発表した。
検察によると、同被告は2010年6月~19年11月までの間「要人の公式訪問や国際会議の前後に、中国の情報機関に定期的に情報を渡していた」疑いが持たれているという。
また起訴状によると、被告は2001年から政治シンクタンクを主宰している。長年培われたネットワークにより、同シンクタンクは国際的名声を得ていたという。
クラウス被告は2010年6月に上海の同済大学を訪問した際、中国の情報機関が初めて接触してきたとされている。
それ以来10年間、同被告は政界上層部から得た情報を中国側に提供し、その見返りとして、中国の情報部門の会議や社交活動に参加するための「旅費」の名目で金銭を受け取っていた。捜査当局はこのほかにも謝礼金を受け取っていたと見ている。具体的な金額は公表されていない。
二重スパイスの身分
ARD(ドイツ公共放送連盟)の報道によると、クラウス被告は引退前、「ハンス・ザイデル財団(Hanns Seidel Foundation)」の国際安全保障政策部門の責任者を務めていたという。同財団はアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相のキリスト教民主同盟(CDU)の姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)と密接な関係にある。
クラウス被告は同時にドイツの情報機関のスパイとしても活動しており、50年以上ドイツ連邦情報局(BND)とも協力関係にあった。BNDからは報酬を受け取っていた。その後、同被告の妻も加入したとされている。
報道によれば、同被告は旧連邦国防省本部へ頻繁に出入りし、同部上層部と良好な関係を築いていたという。
クラウス被告の身元が明らかにされた後、「ハンス・ザイデル財団」はこの件について「何も知らなかった」と強調した。
また、報道によると、同被告は当時BNDに「自身をスパイにしようとしている」という中国側の動きを報告しており、BNDからも中国側と接触してその意図を探るよう指示されたという。しかし、同被告はBNDに自身と中国側の協力の程度について明かさなかった。
ドイツ警察は2019年から捜査活動を開始
ARDの報道によると、2019年11月23日の早朝、クラウス夫妻は中国の諜報員と会うためにマカオ行きの飛行機に乗ろうとして、空港に行く途中、警察に拘束されたという。
当局は夫婦の手荷物や住居を捜索し、すべてのデータキャリアと数百もの文書を押収した。
クラウス被告は1980年代から「ハンス・ザイデル財団」に勤務し、仕事上の便利さを利用して、旧ソ連や南アフリカ、南アジアなどに長く赴任し広く人脈を構築していた。引退後も依然として、被告夫婦はスパイ活動を続けていた。夫婦は様々な国際会議に参加し、BNDに情報を提供し続けた。
しかし、最終的に被告夫妻と中国との接触は、当局の目に留まった。
捜査官は、「中国はバーチャル世界で攻撃を実施することに加え、あらゆるチャンスを利用して諜報員を勧誘している」と警鐘を鳴らした。
(翻訳編集・李凌)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。