英国の重点はインド太平洋に 英空母打撃群は関係国と連携深める

2021/07/21
更新: 2021/07/21

過去数十年の間で最大の空母打撃群を英国が展開した。このことは、復活した英国海軍が米国や欧州の同盟諸国、インド太平洋地域の提携諸国と協力を図りながら世界規模で展開できる有数の力を留めていることを表すものである。

2021年5月、英国の最新鋭空母「クイーン・エリザベス(HMS Queen Elizabeth)」を中核として構成された「英国空母打撃群21(CSG21)」が「オペレーション・フォルティス(Operation Fortis)」の一環として北大西洋の港を出港した。

英国空母打撃群は2021年12月まで2万6,000海里を航行し同年後半には日本にも寄港すると発表されているが、それまでに南シナ海を含むインド太平洋海域を航行する予定である。

南シナ海は毎年500兆円(5兆米ドル)を超える物品が貨物で通過する海域で、輸送品の多くは英国やその同盟諸国の産業と消費者に深く関係している。 今回の展開により、国連海洋法条約(海洋法に関する国際連合条約/UNCLOS)に規定される「航行の自由」の推進に取り組む英国とその同盟諸国の姿勢をインド太平洋地域の提携諸国に示すことができる。

2021年3月、英国政府は世界的な英国外交に係る今後10年の方針を包括的にまとめた「統合レビュー(Global Britain in a Competitive Age: The Integrated Review of Security, Defence, Development and Foreign Policy)」を公表したが、同方針に概説される通り英国国防省は今回の展開を軍事、貿易、外交の「重心」をインド太平洋地域に置くという英国の意図を実質的に実証する、と記されている。

英国のインド太平洋防衛の取り組みに関しては、同国はすでにオーストラリア、マレーシア、ニュージーランド、シンガポールと「5か国防衛取極(FPDA)」を締結している。

英国空母打撃群21には英国海軍のフリゲート2隻、駆逐艦2隻、潜水艦1隻の他、米国海軍の駆逐艦「ザ・サリヴァンズ(USS The Sullivans)」とオランダ海軍のフリゲート「エヴァーツェン(HNLMS Evertsen)」が含まれている。クイーン・エリザベス空母には英国空軍のF-35BライトニングII戦闘機8機と共に、米国海兵隊に所属する同戦闘機10機が搭載されている。

海兵隊公式ウェブサイト「MARINES」に掲載された記事によると、クイーン・エリザベス空母に乗船した米国上級将校のサイモン・ドラン(Simon Doran)大佐は、「今回の展開は世界規模で展開できる米英軍の能力と両軍の優れた相互運用性を象徴するものである」とし、「英国は最も堅固かつ有能な同盟国の1つであり、今回の展開により北大西洋条約機構(NATO)同盟国の抑止・防御力が強化される」と述べている。

同空母打撃群は航海中にフランスとイタリアの軍艦と連携を図り、中東において英国空軍と米国海兵隊のF-35戦闘機による過激派組織「イスラム国」への空爆を実施した。インド太平洋地域では自衛隊(JSDF)と航空・海事演習を実施し、インド、シンガポール、韓国などの他の主要防衛提携諸国にも寄港する予定である。

同空母打撃群は今回の展開ですでにいくつかの功績を挙げている。英国国防省の発表では、米国戦闘機が他国空母から発進して戦闘に参加したのは、6月のイスラム国過激派組織に対する空爆が第二次世界大戦以来初の事例となった。

この空爆はまた、英国海軍史上最大の艦船である空母クイーン・エリザベスからの初出撃でもあった。UPI通信社が報じたところでは、英国が正式に空母打撃群を展開したのも今回が初めてである。

英国のベン・ウォレス(Ben Wallace)国防相は声明を通して、英国空母打撃群21は「躍動する『グローバル・ブリテン』の象徴であり、日本とインド太平洋地域に対する当国の取り組みおよび国際秩序を乱す脅威に対抗する厳格なる姿勢を示すものである」と話している。 

(Indo-Pacific Defence Forum)