中国情報収集艦の偵察に怯まず タリスマン・セーバーで米豪および同盟諸国が関係を強化

2021/07/30
更新: 2021/07/30

オーストラリア国防軍(ADF)が主導する演習「タリスマン・セーバー21(Talisman Sabre 21)」により、太平洋諸国の軍隊はこの最大の軍事演習を通じて米国との同盟関係を深化する機会が得られた。

オーストラリア国防軍が発表したニュースリリースでは、オーストラリア国防軍の展開型合同部隊本部(DJFHQ)を率いるジェイク・エルウッド(Jake Ellwood)少将は、「タリスマン・セーバー演習により、要求の厳しい環境においても早急に協力態勢を整え非常に複雑なマルチドメイン作戦を実施できる米豪軍隊の能力を実証できる」とし、「全体的にこうした訓練により、地域内外の友好国や提携・同盟国との広範な相互運用性を開発できる優れた機会が得られる」と述べている。

2021年7月から始まった今年の演習の水陸両用上陸作戦と広範な戦略的訓練にはカナダ、日本、ニュージーランド、韓国、英国の部隊も参加している。今回の多国籍演習には敵軍に対する高度な陸上戦闘訓練が含まれていたが、その間に少なくとも2隻の中国人民解放軍海軍(PLAN)情報収集艦が付近海域から偵察を実施している。

中国の偵察に怯むことなく訓練は継続されたが、「警戒は怠らない」とオーストラリア放送協会(ABC)に語ったエルウッド少将は、「演習参加軍隊すべての安全性を常に確保できる方法で作戦を実施している」と話している。 軍事専門家等の説明によると、防衛環境においては偵察する側が存在し、偵察される側がそれを認識しているという状況はそう珍しいことではない。

オーストラリア国立大学で教授を務める元オーストラリア海軍少将のジェームズ・ゴールドリック(James Goldrick)博士はニューズ・コーポレーションに対して、大半の部隊はこの類の戦術が「ニュー・ノーマル(新たな常態、常識)」であることを認識していると説明している。

インドのニュースサイト「Daijiworld」が報じたところでは、自由で開かれたインド太平洋を支持する諸国が、中国による潜在的な侵略と攻撃的な行動から太平洋島嶼国を保護できる能力を実証することがタリスマン・セーバー演習の目的の一環である。

参加国の軍隊を見ればタリスマン・セーバー演習がいかに実質的に戦略的であるかが理解できると指摘したゴールドリック博士は、「中国には明らかに戦略に対する懸念を高めている」とし、「中国は偵察という手段で、極力多くの情報を収集したいと考えている」と述べている。

米国太平洋艦隊(USPACFLT)が発表したところでは、タリスマン・セーバー演習に参加している提携諸国の軍隊は、危機への対応および紛争海域環境における相互の部隊・装備の運用と維持において、総合により発揮される強靭性を成功裏に実証した。

米国太平洋艦隊によると、米国海軍・第7遠征打撃群(ESG-7)を率いるクリス・エングダール(Chris Engdahl)少将は、「インド太平洋地域で発生している事態を考慮すれば法治に基づく国際海事秩序を確保する上で存在感を高めることがいかに重要かを理解できる」とし、「タリスマンセーバー21により自由で開かれたインド太平洋地域を推進する共同の取り組みの一環として米国は提携・同盟諸国と共にあらゆる不測の事態にも対応できる能力を強化することができる」と話している。

米豪同盟関係には100年以上の歴史があり、タリスマン・セーバーは2005年から隔年で実施されている。

米国太平洋艦隊の発表では第11水陸両用戦隊を率いる米国海軍のグレッグ・ベイカー(Greg Baker)大佐は、「信頼性と即応性の高い部隊を整えることで平和の維持と紛争の防止を実現できる」とし、「タリスマン・セーバーのような演習を実施することで、効果的かつ集中的な訓練により短期間で部隊の能力、相互運用性、展開可能性を確実に改善することが可能となる」と述べている。

(Indo-Pacific Defence Forum)

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