インド、中国との平和的共存は「ない」=専門家

2021/08/01
更新: 2021/08/01

米国のブリンケン国務長官は28日、インドのジャイシャンカル外相、ナレンドラ・モディ首相と訪問先のニューデリーで会談した。両国は中国の名指しは避けたものの、日米豪印による協力枠組み「Quad(クアッド)」の連携を深め、防衛協力を強めることで一致した。

モディ首相はブリンケン氏との会談後、「印米戦略パートナーシップを強化するというバイデン大統領の強いコミットメントを歓迎する」とツイッターに投稿した。

印シンクタンクCentre for Land Warfare Studies(CLAWS)の研究員で、『The Concept of Active Defence in China's Military Strategy』の著者であるアムリタ・ジャッシュ氏は、大紀元のインタビューで、権威主義体制を敷く中国の脅威の高まりに各国が連帯することは、米印をはじめとする地域内外の国々を結び付ける「大義」であると述べた。

また同氏は、2020年に起きた、インド北部と中国西部の国境地帯に位置するガルワン渓谷での中印衝突により、「(インドと中国の)平和的な共存は失われた」と語った。

インドを挑発

インドと中国の間には、実効支配線(Line of Actual Control: LAC​)が引かれており、中国はLACで「常にインドの心意を試し、挑発しようとしている」とジャッシュ氏は指摘する。

両国国境を巡る対立は1962年の軍事衝突に端を発する。それ以来、LACで続いていた緊張状態が、ここ数年著しく高まっている。2017年には、ブータンの国境付近のドクラム地域で、中印両軍の一触即発のにらみ合いが1カ月以上にわたって続いた。きっかけは、中国軍がインドの同盟国ブータンの主張する実効支配線を越えて、道路を建設したことだった。

中印両軍は2020年6月にもガルワン渓谷で衝突し、双方に死者が出た。これまで両軍の間には銃器を使用しないとの合意があったが、中国兵は有刺鉄線を巻いた金属バットや釘を埋め込んだこん棒を用いた。

「中国が扇動したということは、非常に明白である」とジャッシュ氏は述べ、中国共産党政権の武器使用はLAC沿いにおける中印間の「すべてのプロトコルを破った」と指摘した。

同氏は著書の中で、「インドと中国の国境沿いでの中国の行動パターンは、南シナ海で見られるような、紛争地域を侵食して支配する『サラミ・スライス』戦略に準拠している」と述べ、中国は漸進的な小さな行動を積み重ね、目標を達成しようとしていると指摘した。

しかし、インドは中国の挑発と侵略に対して毅然とした態度で臨んでいるし、「現在の状況を考えると、誰も1インチの土地も譲ることはないだろう」と述べた。

中国は何を与えなければならないのか

ジャッシュ氏は、権威主義的な中国は、インドと中国の国境沿いで強さを誇示しようとしている。いっぽう、中国共産党の一党支配を根本的に脅かす国内外の大きな問題に直面しているという。

中国国内では、経済成長の鈍化や、チベット、新疆ウイグル自治区、香港における中国共産党の支配に対する広範な抵抗が挙げられる。対外的には、米国、インド、日本、台湾など世界の自由民主主義諸国や、「一帯一路」構想に参加して多額な負債を抱えた国々との経済的・軍事的な緊張関係が生じている。

ジャッシュ氏は、中国のリーダーである習近平氏が全体主義的な方向に舵を切ったことが、問題の要因であると語った。

「中国でワンマン支配が行われると、必ず大きな影響がある。毛沢東の時代には、大躍進政策が飢饉や文化大革命につながった」とし、現在の習近平氏の独裁はより大きな抵抗や恨みにつながると指摘した。

また、中国による中共ウイルス拡大の隠蔽や、インドの中共ウイルスをめぐる深刻な状況を嘲笑するなど、中国共産党政権下での中国の国民性に関する根本的な問題についても触れた。

「中国は超大国を目指している。ならば、世界に示すことができる特徴が必要だ。アメリカは自由を与えた」「中国は何を与えられるのか」と疑問を呈した。

同氏は、インドの約14億の人口、地域における軍事的存在、世界最大の民主主義国家としての地位などを挙げ、中国が大国を目指す上で、インドは大きな障害になっていると語った。

日米豪印「クワッド」

ジャッシュ氏は、2002~20年にかけて米印間で結ばれた軍事情報保護、軍事ロジスティックス共有、通信の安全保障、標的と航行情報の提供に関する「4つの基本合意」 を挙げ、米印関係は「時間とともに強化されている」と述べた。

同氏は、米印関係に貢献しているもうひとつの大きな要因は、「自由で開かれたインド太平洋」を支持する日米豪印4カ国による、安全保障協議の枠組み「クアッド」にあると述べた。さらに同氏は、中共ウイルスの大流行を受け、4カ国の関係は「かつてないほど強固になった」と強調し、「英国、カナダ、フランス、ドイツなどの国々が、インド太平洋のビジョンに少しずつ賛同するようになってきている」と語った。

ジャッシュ氏は、インド洋におけるインドの圧倒的な存在感と、中国政府が「一帯一路」構想の一環としてパキスタンのグワダル港を確保したことや、スリランカのハンバントタ港が99年間にわたり中国にリースされることを比較した。スリランカは同港の建設に向け、中国から数十億ドルを借り入れたが債務を返済できず、「債務の罠」にかかった。

「インド洋に進出しようとしている中国とは違って、インドこそインド洋の主要な担い手だ」と述べた。

(翻訳編集・蓮夏)