IOC、「毛沢東バッジ」問題を調査 中国CCTVは再放送で映像を加工

2021/08/05
更新: 2021/08/05

東京五輪の表彰台で、自転車・トラック女子チームスプリントで優勝した中国選手2人が中国の元最高指導者である「毛沢東のバッジ」をつけて表彰台に登壇したことで、物議を醸した。海外からの批判を受け、中国国営中央テレビ(CCTV)は表彰式の再放送時に、バッジを隠す画像処理を施した。

中国の鮑珊菊(23)と鍾天使(30)の両選手は2日、同種目で金メダルを獲得し、その表彰式で、毛沢東バッジをつけて登壇した。この行為は、いかなる五輪大会会場においても政治的、宗教的、人種的な宣伝活動を禁じるという五輪憲章第50条に違反したとされる。第50条は、いかなる形の宣伝も、選手のユニフォームや装飾に現れてはいけないと定めた。違反した者は、大会の参加資格証をはく奪される可能性がある。

国際オリンピック委員会(IOC)のマーク・アダムス広報部長は3日の記者会見で、鮑選手らが毛沢東バッジを着用したことについて、「調査している」と述べた。

中国では、毛沢東バッジをつけることは個人崇拝の象徴である。特に1960年代において、毛沢東が大規模な政治運動、文化大革命を起こしてから、すべての中国国民は毎日、毛沢東バッジをつけるよう強いられた。バッジを着用することで、中国共産党と毛沢東への忠誠を誓うことを示す。

目的

中国スポーツ界に詳しい鞠賓氏は、誰かが意図的に鮑選手らにバッジをつけさせたのではないかと大紀元に語った。鞠氏は、中国の元スポーツ選手で、現在カナダでバスケットボールのコーチを務めている。

「中国当局は、国内のスポーツ選手の行動と思想を統制している。選手が(政治体制などに関して)自分の主張を公にすれば、中国の国家代表に選ばれることはなく、直ちに処分を科される」

同氏は、中国当局の情報統制によって、鮑選手らのような若い中国人スポーツ選手は、毛沢東が崇拝された文化大革命について「ほとんど知らない」と指摘し、したがって、「毛沢東バッジは誰かにつけさせられた」と推測した。

鞠氏は、黒幕となる人の目的は「オリンピックという大きなイベントで騒ぎを起こし、何らかの影響を与えようと思ったのだろう。これによって、大会が終わり中国に帰国したら、功労を表彰されたいと思っているのだろう」と述べた。

映像編集

IOCが調査に乗り出したことを受けて、国営CCTVは表彰式の映像を加工し、毛沢東バッジを消して再放送した。また、中国版ツイッター、微博(ウェイボー)の「熱捜話題(トレンド)」から、この話題が削除された。

海外SNS上では、中国人ネットユーザーは両選手が毛沢東バッジを付けて表彰台に登場したことを非難し、「中国共産党の代表である毛沢東の亡霊を呼び出そうとしている」とした。

オーストラリアに住む中国出身の政治風刺画作家、巴丟草氏は、祖父母が文化大革命で迫害されて死亡したことを紹介し、「毛沢東のせいで数千万人の中国人が亡くなった」とした。

バスケットボール中国代表を務めた陳凱氏は、国際社会において毛沢東はヒトラーやスターリンなどと同じく悪名高いが、「中国では当局の洗脳と情報隠ぺいで、多くの人は毛沢東を救世主だと信じている」と話した。

「鮑選手らは毛の統治時代や文化大革命を経験したことがない。バッジをつけたのは上層部の命令かもしれないし、自分から進んでつけたかもしれない。後者であれば、両選手が完全に洗脳されて、善悪の分別ができなくなったということだ」

いっぽう、中国国内の毛沢東支持者らは、当局のこうした対応に不満を示し、SNS上で「CCTVは何を恐れているのか?」と糾弾した。

(記者・李韵、翻訳編集・張哲)

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