米海軍大学(U.S. Naval War College)の研究者がこのほど発表した調査報告書は、中国当局は軍事行動の水陸両用作戦で使用するために民間フェリーを改造していると指摘した。これにより、中国当局が台湾を武力侵攻した場合、中国海軍の水陸両用攻撃能力が大幅に高められる可能性があるという。
米メディア「ディフェンス・ニュース(Defense News)」5日付によると、米海軍大学の中国海事研究所(China Maritime Studies Institute)の講師を務めるコナー・ケネディ(Conor Kennedy)氏は7月、シンクタンク、ジェームズタウン財団のウェブ誌「チャイナ・ブリーフ」で同報告書を発表した。
報告書によると、2019年以降、中国海運最大手、中国遠洋運輸(集団)公司(COSCO)が所有し運営している1万5560トンのRO-RO(Roll-on/Roll-off)フェリー、「棒棰島号」には、沖合で水陸両用装甲車を乗降できるように改造スロープが取りつけられている。これにより、中国の船は専用の港湾施設がなくても車両を乗降できることを意味する。
ケネディ氏は、海上でのスロープ使用には「多くの課題が残る」が、技術的アプローチが機能するという中国のエンジニアと船舶運航者の自信を反映したと示した。
報告書は、油圧システムとサポートアームを組み合わせて使用することで、この新しいスロープは軽い海況への対応のほうがより適しているとの見方を示した。
米シンクタンク、新アメリカ安全保障センター(Center for a New American Security)の研究員であるトーマス・シュガート(Thomas Shugart)氏は、ディフェンス・ニュースに対して、水陸両用輸送船として民間フェリーを利用するという中国軍の取り組みは、「世界クラスの中国の商船を水陸両用攻撃部隊に統合する試みの一部だ」と述べた。
「成功すれば、中国軍は台湾海峡を越えて海上輸送能力を大幅に増強する可能性がある。これで、台湾侵攻において中国側の主要な障害の1つを取り除くことになるだろう」とシュガート氏は示した。
台湾研究者「中国の水陸両用部隊は最大の脅威」
台湾国防部(省)のシンクタンクである国防安全研究院が公表した最新研究報告書は、台湾侵攻を目指す中国軍の水陸両用戦闘能力について分析した。
同研究院の欧錫富研究員は報告書の中で、台湾侵攻に備えている中国軍の水陸両用作戦艦艇は、「075型水陸両用強襲揚陸艦(兵員1687人、ヘリコプター30機と726型エアクッション揚陸艦2機を搭載)、071型ドック型輸送揚陸艦(兵士600~800人、各種車両35~45台、ヘリコプター4機と726型エアクッション揚陸艦4機を搭載)、072A型揚陸艦(兵士250人、戦闘車両10台)、072-II型揚陸艦(兵士200人、戦闘車両10台)、074A型汎用揚陸艦(各種車両6台と150トンの貨物を搭載可能)などがある」とした。
欧氏は、近年、中国軍の水陸両用軍艦の数が急増しているにも関わらず、ヘリコプターや726型エアクッション揚陸艦、水陸作戦部隊の兵力が依然として不足しているとの見解を示した。
「726型エアクッション揚陸艦に関しては、海上訓練中に搭載量が足りていないという問題が起き、パワー不足との情報が入っている。また、中国軍の水陸作戦部隊の兵力不足に関しては、中国軍が海を越えて台湾に上陸作戦を展開する際、第一陣の兵力は40万人程度と言われている。台湾国軍の厳しい防衛力に対して、中国軍の兵力はまだ十分ではないと言える」
「それでも、中共軍の水陸作戦部隊は台湾にとって最大の脅威だ」と欧氏は警告し、台湾側としては深く注視し、対策を練る必要があるとした。
(翻訳編集・張哲)
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