アングル:緊急事態延長、首相の解散戦略に打撃 9月困難の見方

2021/08/17
更新: 2021/08/17

竹本能文

[東京 17日 ロイター] – 新型コロナウイルスの感染爆発による緊急事態宣言の地域拡大と期間延長により、菅義偉首相が当初狙っていた9月中の衆院解散が難しくなったとの声が与党内で広がっている。その場合、自民党総裁選は、衆院選に先立ち9月に実施する方向で調整される見通しだ。22日投開票の横浜市長選の結果を踏まえ、週明け以降、党内の議論は一気に加速しそうだ。

首相はこれまで「総裁としての任期の中で機会を見て衆院解散・総選挙を考えないといけない」(4月23日)と述べてきたため、9月末の総裁任期前に衆院解散に踏み切る意向とみられてきた。

具体的にはパラリンピックが閉会する9月5日以降、早い時期に臨時国会を開き、経済対策の骨格のみを示して解散に踏み切るという構想だ。投開票日としてこれまで10月3、10、17日が候補として取りざたされてきた。

9月末までに実施することが党内規定で定められている自民党総裁選については衆院選後に先送りするのが首相の意向とされてきた。

しかし緊急事態宣言が来月12日まで延長されることで、与党内では「感染拡大中の選挙は国民の理解が得られない」(関係者)との声が出始めている。

日程としては、「宣言を延長しても、解散余地は4-5日残してある」(与党幹部)とはいうものの、情勢を考慮すると9月中の解散の可能性は低下したとの見方が多い。

衆院の任期は10月21日。任期満了選挙ならば、公選法は「任期満了による総選挙は任期が終わる日の前30日以内に行う」と定めるため、投開票日は9月26日、10月3日、同10日、同17日の4パターンとなる。

ただ、公職選挙法の例外規定により、10月21日の任期満了ギリギリで解散する場合、最も遅いと11月28日の投開票もあり得る。

衆院選前の総裁選の実施について与党内には賛否両論があった。仮に総裁を交代しても衆院選で大敗すれば「引責問題から再度交代論」(与党関係者)が出る可能性があるためだ。

しかし9月解散の可能性が低下し、総裁選を予定通り9月に実施する公算が大きくなった。自民党の選挙管理委員会は26日に日程を議論するが「9月17日告示、29日投開票を軸」(与党幹部)として調整が行われる見通し。

報道各社の世論調査で菅内閣の支持率は8月に入り3割前後と昨年9月の発足以来最低水準を更新しており、選挙基盤の弱い若手を中心に「選挙で勝てる顔」の総裁を新たに求める声も出ている。

「横浜市長選で首相肝入りの小此木八郎氏が落選すれば総裁交代論は高まる」(与党幹部)との指摘がある。 

(竹本能文 編集 橋本浩)

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