[25日 ロイター] – イスラム主義組織タリバンが実権を握ったアフガニスタンで25日、米欧諸国は来週の軍撤収期限を前に退避活動を加速させたが、首都カブールの空港周辺の治安について懸念がある中、米大使館が米国民に空港に移動しないよう警告を発出するなど緊迫した状況が続いている。
バイデン米大統領は8月末とする米軍の撤収期限を堅持しており、欧州の同盟国はアフガン戦争で北大西洋条約機構(NATO)に協力したアフガン人の退避にさらなる時間が必要だと訴えている。西側諸国は多数のアフガン人協力者が国内に取り残される可能性を認識している。
タリバンがカブールを制圧して以降の10日間に米国と同盟諸国は過去最大級の退避活動を展開し、これまでに8万8000人超を国外に移送。このうち1万9000人は過去24時間に移送した。米軍によると、39分毎に航空機が離陸している計算になるという。
バイデン氏は、米軍の駐留が長引けば、身の危険が増すことになると強調した。
米ホワイトハウスはこの日、バイデン氏がアフガン退避に関する危機対応策のほか、過激派組織「ISIS─K」がもたらす脅威について説明を受けたと発表した。
カブールの米大使館は警告を出した理由を明らかにしていない。
英外務省は、アフガンへの全ての渡航中止を勧告した。現地では「テロ攻撃の高い脅威」があると警告した。
ブリンケン米国務長官は、政府は8月半ば以降、4500人以上の米国民とその家族をアフガニスタンから退避させたと述べ、同国に残る約1500人の米国民に連絡を試みていると明らかにした。
長官は、外国人を含め、アフガンからの退避を望む人を支援する活動に期限はないとし、「必要な限り」継続すると表明した。
米軍は一方、31日の期限前の最後の2日間は米兵士の撤収が優先されると明らかにしている。
タリバンの報道担当を務めるソヘイル・シャヒーン氏はツイッターへの投稿で「外国軍部隊は期限までに撤収すべきだ。そうすれば民間航空便の再開が可能になる」と主張し、「法的な書類がある人は8月31日以降、民間航空便で渡航できる」と続け、許可を得ていれば民間便での出国を認める考えを示した。
欧州の米同盟国のうち、英国のラーブ外相は期限ぎりぎりまで退避活動は続けられると強調。フランスは、可能な限り長く退避を進めるが、数日内に終了させる可能性が高いと認めた。ドイツのメルケル首相は、8月末以降も、国外退避を希望するアフガン人への支援に努めると表明した。
<アフガン市民に広がる不安>
タリバンのカブール制圧移行、何万人ものアフガン人が国外脱出を図るために空港に押し寄せてきた。
支援団体は、国内に取り残されたアフガン人は食料不安や感染症による脅威にさらされ、悲惨な状況にあると指摘。国連世界食糧計画(WFP)によると、約1400万人が飢餓の脅威に直面している。
タリバンによる投降したアフガン治安部隊や市民の処刑を含む深刻な人権侵害も報告されている。タリバンは報告に関して調査を行うと表明している。
国連はアフガニスタン支援ミッションのアフガン人職員約3000人を現地に残すことになる。ロイターが確認した国連の安全保障関連資料は、8月10日以降、国連事務所に対する多数の脅迫や略奪、職員の暴行があったと報告している。
タリバンはNATOに加盟するトルコに外国軍撤退後のカブール空港運営で技術的支援を求める一方、トルコ軍の8月末までの完全撤退も要求した。トルコ政府は25日、軍撤退を開始したと明らかにした。ただ、タリバンに空港運営で技術的支援を提供するため、文民専門家は現地に残る可能性があるとした。
タリバンは一方、主要閣僚の任命に着手。現地通信社パジュワクによると、国連の制裁対象になっているグル・アーガー氏が財務相に任命された。
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