豪州、中国は「安全保障上の脅威」9割が中共に否定的=世論調査

2021/09/01
更新: 2021/09/01

豪シンクタンク・ローウィー研究所が行った世論調査で、オーストラリアが中国を「経済パートナー」ではなく、「安全保障上の脅威」と見なす人が、去年の41%から63%に急増したことが明らかになった。中共ウイルス(新型コロナウイルス)をめぐり、豪州産の石炭や農産物などに輸入制限措置を実施した中国へのオーストラリア国民の対中感情を反映する形となった。

この調査は2005年から実施されており、今年はオーストラリアに住む成人2222人に対し調査が行われた。調査では、3分の2のオーストラリア人が中国人や中国の文化、歴史に対して肯定的な意見を持っている一方で、90%のオーストラリア人が中国の共産主義的な政府体制やオーストラリア領域での軍事活動に強く反対していることも明らかになった。

また、中国がオーストラリアに内政干渉しているとの懸念が80%以上に達し、海外からのサイバー攻撃がオーストラリアの重要な利益に対する最大の脅威であると認識されていることも判明した。

2021年8月20日のローウィー研究所のデータをもとにDatawrapperで作成したグラフ(青が中国を経済パートナーと考える割合、黄色が安全保障上の脅威と考える割合)
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米中関係の専門家であるシドニー大学准教授のサルバトール・バボネス氏は、オーストラリア人の共産主義政権に対する姿勢の変化は「驚くべきことではない」とし、「外国からの攻撃に直面した場合、自国を守るだろう」と大紀元に語った。

しかし、ローウィー研究所の外交政策プログラム・ディレクターのナターシャ・カッサム氏は、国家に対する見方が短期間でこれほど急落するのは珍しいとコメントした。

「香港での弾圧、ウイグル人の拘束、オーストラリア産業への制裁、中国に住むオーストラリア人の窮状など、二国間の対立や懸念すべき事柄が後を絶たない。このことが、関係を悪化させ、世間の(中国に対する)認識をどん底に突き落としている」とカッサム氏はABCに語った。

世論に影響を与える中国共産党の動き

いっぽう、オーストラリアの対中感情が悪化する中、中国はオーストラリアの中国語メディアやソーシャルネットワークへの影響力を利用して、流れを変えようとしているとバボーンズ氏は警鐘を鳴らした。

「中国語メディアを通じて行使される中国の影響力は、ソーシャル・ネットワークを通じて起こることよりもはるかに危険だ」と、バボネス氏は大紀元に語った。

また同氏は、すべての国がある程度世論に影響を与えようとしているが、中国は「嘘と欺瞞によって」秘密裏にそれを行っていると指摘した。

「米国はボイス・オブ・アメリカ(訳註、米政府傘下の報道機関)で世界の世論に影響を与えようとしている。しかし、ボイス・オブ・アメリカは嘘をつくことは許されていない。だが、中国の(国営)メディアは嘘をつくことが許されている。これが問題だ」

オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は2020年に、中国共産党が20年以上にわたってオーストラリアのメディアに浸透するため「粘り強い取り組み」を行っており、その取り組みは「オーストラリア政府の同じ分野での取り組みをはるかに上回っている」と指摘した。

ASPIは、「チザムやベネロングなど、中国語を話す人口が多い選挙区では、中国メディアへの干渉が全国的に重大な問題となる可能性がある」と述べた。

ASPIはまた、オーストラリアの中国語メディア24社のうち17社が、海外の中国メディアを対象とした統一戦線工作部のフォーラムに参加していたことを明らかにした。さらに12社は、以前統一戦線工作部グループに所属していたメンバーが幹部を務めており、少なくとも4人は中国共産政権から財政支援を受けているという。

ASPIは、「統一戦線工作部は、中国人コミュニティの代表をコントロールし、親中共の政治的動員を促し、より広範な政治干渉活動のためのプラットフォームを構築しようとしている」と指摘した。
 

(翻訳編集・Nhung Tran)