中国西安市「千人計画」の文書流出、米国の一流大学教授ら関与

2021/09/29
更新: 2021/09/29

中国の地方当局から流出した文書によると、米国の大学に所属する複数の著名な教授が、卓越した技術や知能を持つ高度人材を招致する中国国家プロジェクト「千人計画」に参加していたことが分かった。

今回流出した文書は、中国陝西省の西安市当局から入手したもので、海外から採用した専門家の名前、資金調達の詳細、現地での「千人計画」の目的などが記載されている。教授のうち2人はカーネギーメロン大学、もう1人はカリフォルニア大学バークレー校に勤務。3人とも、バイオメディカルの研究開発を専門とする。

中国共産党中央組織部が率いる、海外ハイレベル人材招致「千人計画」は2008年に始まった。この計画では、著名研究機関の研究者や大手企業で上級管理職を経験した人物などを中国に高待遇で招き入れ、技術を中国に取り込む政策だ。

「千人計画」のほか、中国は多数の海外人材招聘プロジェクトを実施している。海外の高い技術力の入手を狙う共産党が主導する招致について、米国では近年、知的財産や技術の流出の問題があるとして取り沙汰されている。この計画との関係を隠して連邦政府からの助成金を受け取ったとして、起訴された米国人および中国人研究者も少なくない。

大紀元特集・千人計画

著名な教授

リーク文書に名前の記載があった1人は、カリフォルニア大学バークレー校の副学部長。この教授は、国立衛生研究所や国立科学財団から多額の助成金を受け取っている。オンライン記録によると、2007年以降、少なくとも590万ドル(約6億5000万円)の研究費を得ているという。同教授は西安のバイオテクノロジー企業の技術責任者と、上海生命科学研究院などが発行する雑誌「Molecular Plant」の編集者でもある。

バークレー校のウェブサイトには、同教授と「千人計画」の関係は記載されていない。

千人計画に関与していたカーネギーメロン大学の1人は、化学工学の著名な教授。同大学の研究機関でもトップの地位にある。もう1人の教授はアメリカ国立科学財団が出資している高分子研究センターでトップの地位を務め、世界で最も引用されている化学者の一人だ。

西安ニュースの2017年9月7日付の報道によると、この2人の教授は西安の西北工業大学で名誉教授の称号を授与され、医用工学研究所(IBME)の設立に向けた取り組みを主導するようになったという。

また、西安当局が策定した「『一帯一路』人材育成政策」によると、医用工学は2番目に力をいれている分野だ。専門知識や研究開発能力が不足している西安では、教授たちに格別な支援を行い、多額な研究費と施設を提供しているという。

カーネギーメロン大学はコメントを控えた。カリフォルニア大学バークレー校、教授3人は本記事の発表までに回答がなかった。

「千人計画」インセンティブ

「西安市の人材採用状況」と題されたある流出文書によると、同市は国家レベルの人材を243人採用し、重要な技術分野で515人のトップクラスの専門家を採用した。また、ハイテク産業、先進製造業、生物医学工学、航空宇宙工学、グリーンエネルギーなどの専門知識が強く望まれると記されている。

西安市高新区の「千人計画」に関する中国政権のリーク文書のスクリーンショット(The Epoch Times)

さらに、トップクラスの人材には、住宅の無償提供、子供の優先入学、配偶者の雇用支援、特別な医療サービスの、費用負担がある年次休暇など、さまざまな特典が得られる。

トップクラスの人材を採用した地元の企業や機関には、約1700万円の報酬が支払われる。また、科学研究プロジェクトが収益性の高いビジネスへと成長した場合は、約870万円〜1億4000万円のボーナスが支給される。

米国の対応

近年、米国は人材獲得計画により知的財産や先進技術が中国へ流出することを懸念し、学術界を標的にする中国に厳しい対応をとっている。

FBIクリストファー・レイ長官は2020年、千人計画を通じて「中国は、米国の大学の科学者に資金を提供し、米国の知識や技術革新を密かに中国に持ち帰っている」と指摘。「これは米国の納税者が中国の技術開発の費用を実質的に負担していることを意味する」と述べた。

いっぽう、連邦政府から助成金を受け取りながら、中国機関や千人計画との関係を隠蔽したとして起訴される米国の学者も少なくない。2020年には、中国政府との関係を隠したとして、ハーバード大学の化学研究部門でトップを務めるチャールズ・リーバー教授が虚偽申告の罪で起訴された。中国当局は被告に月5万ドル(約550万円)の報酬や、約15万8000ドルの生活費を払っていた。

ノーベル賞候補化学者の失墜 中国「千人計画」で厚遇 報酬は月500万円

米上院は6月、中国の人材獲得計画を念頭に、技術競争に備え、ハイテク分野の研究・生産を強化するため包括的な法案「米国イノベーション・競争法案(USICA)」を可決した。

(翻訳編集・山中蓮夏)