漫画など出版物の海賊版サイトでタダ読みされた作品の金額は、今年1月から10月まで、上位10サイトで計7827億円に及ぶ。海賊版対策を行う一般財団法人ABJの報告で明らかになった。
今年1月に改正著作権法が施行され、海賊版サイトからの出版物利用は違法となったが、海外拠点サイトへのアクセス数は抑制できていない。 総務省は、改正法で刑罰範囲が漫画に広がったことや、人気作品のキャラクターの呼びかけを通じた違法サイト忌避ムード醸成など、海賊版対策を実施している。
改正法により違法ダウンロードの対象範囲は、音楽、映像に加え漫画、書籍、論文、ソフトウェアのプログラムなど、全ての著作物に広がった。刑罰は2年以下の懲役、200万円以下の罰金が下る。また違法アップロードは10年以下の懲役、1000万円以下の罰金がある。
中共ウイルス(新型コロナウイルス)の流行に伴い巣ごもり需要が高まると同時に、出版物の違法サイトへのアクセスは増加した。ABJによると、大型違法サイト「漫画BANK」(11月に閉鎖)を含む10月の上位10サイトの合計アクセス数は3億を超えた。いっぽう、漫画BANK閉鎖以後もアクセス減少につながらず、ベトナム拠点の上位2サイトはアクセスが増伸したことから、ユーザーが他の違法サイトへ移動したと推測している。
ABJは、違法サイトの上位10サイトのうち、試算可能なサイトでタダ読みされた金額は、2021年1月から10月で7827億円と試算した。このまま抑制できなければ、年末には2020年の約2100億円の4倍以上になる見通し。
現在400サイトほどの海賊版サイトリストを作成するABJは、会員の出版社らと情報共有し、削除要請や広告出稿停止を伝えること、Googleなどに検索結果表示抑止を申し出るなどの対策を行なっている。
漫画家の努力にタダ乗りして大儲け…
ABJの資料は、29日に行われた総務省の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会(第5回目)で提供された。同会議では、日本漫画家協会の「新たな怒りポイント」と題された資料も共有された。同協会は「漫画家たちの努力にタダ乗りして大儲けする許し難い海賊版行為が横行している」と訴えている。
同協会常務理事の赤松健氏は、「海賊版の流通は減少しているものの、今もなおその存在が確認できる」と指摘。「違法サイトは、あたかも著作権が自分たちにあるかのように装い、漫画作品にサイトの透かし刻印を無断で押していたり、発売当日にサイト掲載されるなどの行為がある」と述べた。
同協会は、日本の特徴ある漫画文化を保護するための今後の対策として、国の支援を充てた正規版デジタルコンテンツの流通促進や、国をまたぐ警察の対策、著作権裁判の経験の共有、さらには違法な海賊版利用が忌避される印象付けといった「著作権教育の強化」などを挙げた。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。