米銀行最大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、多くのビジネスリーダーが知りつつも、とても口に出来ないジョークを言ってしまった。
11月下旬、ダイモン氏はボストン・カレッジのパネル討論会で、「(中国共産党よりも)我が社の方が長く存続する方に賭ける」と述べ、「中国でそんな事は言えないが、どうせ彼らは聞いているだろう」とコメントした。
ダイモン氏は後に、そのコメントは単なるジョークだったと話したが、思わず本音がこぼれたのかもしれない。しかし、中国共産党にとっては、党の寿命を云々することは許されない。
翌日、ダイモン氏は発言を撤回し、党への謝罪を余儀なくされた。後に、彼は再び謝罪コメントを発表し、「先日の発言を後悔している。どんなグループに対しても、ジョークを言ったり、誹謗中傷したりするのは決して正しくない」と述べた。
中国共産党に対するジョークは誰でも口にすることができる。しかし、ダイモン氏はそれを公の場で話してしまった。対中ビジネスが業績を大きく左右する企業のCEOとして、彼は自分の「ジョーク」の影響を知り、後悔したのだろう。
世界的なコンサル会社に勤める私の友人も、中国共産党の本質を知っている。彼は中国出張の際、携帯が盗聴され、ホテルの部屋が留守中に捜索されていることも承知している。中国共産党が人道に対する罪を犯してきた政権であることを、十分に理解しているのである。しかし、公の場でそれを口にすることはできない。彼は中国のビジネスリーダーや政治家との会合で、常に微笑みながら対応するのである。
私は彼やダイモン氏を擁護するつもりはない。しかし、これが多くの企業や政府が直面している現実である。彼らは、中国共産党に対する自分の考えを話すことはできない。
ダイモン氏に、中国共産党に立ち向かえと言うのは酷かもしれない。彼の肩には、過去20年間に築いた世界的な金融帝国の存続がかかっている。銀行での自分の地位や、家族の財産がかかっているかもしれない。彼ほどパワフルなビジネスリーダーであっても、中国共産党に対峙することは難しいだろう。
この残念な現実を変えるには、欧米政府が介入し、経済的かつ財政的な中国とのデカップリングが必要だ。貿易や商業の枠組みを変える必要がある。50年前、ソ連や共産主義に対抗するのは容易だった。当時はまだグローバル化も限定的で、経済的な利害関係がずっと少なかったからだ。
一般企業にとって、中国との利害関係は避けられない。しかし、欧米政府はそうではなく、またそうあるべきではない。政府部門は、ビジネス界からの影響を受けないようにするべきだ。デカップリングを実行するには長い時間がかかるだろう。企業の市場規模は縮小するかもしれないが、自国市場への投資を増やせば相殺される。これが経済的自由の代償である。
(文・Fan Yu/翻訳編集・郭丹丹)
オリジナル記事:「Dimon’s CCP Walk-Back an All-Too-Familiar Reality」より
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