インドネシアのエネルギー・鉱物資源省は1日、国内の発電所で石炭供給不足が起きていることから、1日から31日までの1カ月間に石炭の輸出を禁止すると発表した。世界最大の石炭輸出国である同国の輸出規制により、石炭価格が上昇する可能性がある。
インドネシア鉱物石炭局のリドワン局長は「ただちに石炭の輸出を停止しなければ国の広範囲で停電が起こりうる」と声明の中で発表した。インドネシアには、石炭の国内需要を満たすために年間生産量の4分の1を国営電力会社(PLN)に供給することを採掘業者に義務付ける政策「石炭国内供給義務(DMO)」がある。
エネルギー・鉱物資源省は輸出規制と同時に、国内発電所への石炭供給が完全に満たされれば、石炭輸出は正常に戻るだろうと付け加えた。
インドネシアの発電所向け石炭の輸出量は約4億トンで世界1位。主な輸出先は中国、インド、日本、韓国など。
昨年8月、インドネシアの炭鉱会社34社が石炭国内供給義務(DMO)政策に従わなかったとして当局から石炭の輸出停止措置を受けた。さらに、ウィドド大統領は今年1月3日、DMOを遵守しなければ事業許可を取り消すと鉱山会社に警告した。
輸出規制は石炭会社と輸出先との商取引紛争につながる恐れがあるとして、インドネシア石炭協会(APBI)は政府に規制撤回を求めている。パンドゥ会長は「輸出規制により石炭会社にとっては1カ月あたり3800万〜4000万トン程度の生産に影響が出る」と推定している。
同国マンディリ銀行のアナリストであるアフマド・ズフディ・ドゥイ・クスマ(Ahmad Zuhdi Dwi Kusuma)氏はロイター通信の取材に対して、インドネシアの輸出規制により石炭在庫が減少するため、今後数週間で世界の石炭価格が上昇すると予測している。
短期的には補えなくなる…中国の石炭不足
中国公式の税関データによると、オーストラリアからの石炭輸入を停止して以降、インドネシアが重要な石炭輸入相手となり、2021年11月末までの輸入量は全体の60%以上を占めている。
世界最大の石炭輸入国である中国は、2021年1月から11月まで2億9000万トンを輸入し、うち61%にあたる1億7800万トンがインドネシアからだ。
中国国盛証券の張津銘チームアナリストは、中国の輸入石炭は8%程度に過ぎず、インドネシアが輸出規制を実施しても影響は限定的とみている。しかし、オーストラリアからの石炭輸入制限に加え他国からの輸入量も限られていることから、短期的に不足分の石炭を補うことは困難になると指摘した。
インドネシアの石炭輸出規制発表を受けて、中国のベンチマークである一般炭先物は7.8%も上昇し、1トンあたり713.80元(468リンギット)で取引を終えた。ロイター通信によれば、1日の上昇幅としては1848元を記録した昨年10月19日以降で最大となった。
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