「貧富の差が歴然」 北京市の感染者行動履歴が話題

2022/01/21
更新: 2022/01/21

深刻化する中国の貧富の差は思わぬところで現れた。北京市がこのほど発表した感染者2人の行動履歴が話題を呼んだ。

同市衛生当局は毎日、感染者の行動履歴を公開している。19日に発表した40代男性の情報から、男性は毎日早朝まで働き詰めだったことがわかった。

男性は山東省の農村部出身。2020年8月、北京で行方不明となった息子(19歳)を探すために上京したという。建設現場で建材を運ぶアルバイトなどで生計を立てている。

行動履歴によると、男性は1~18日まで、23カ所の現場で仕事をしていた。夜中から早朝までの仕事が多かった。

身を寄せているのはわずか10平方メートル(約5.5畳)の部屋だった。家賃は毎月700元(約1万2600円)。

「50キロもあるセメントを1袋運ぶと、1元(約18円)の報酬を得る。3階まで運ぶと3元(約54円)、4階までは4元(約72円)をもらえる。北京市では昼間、交通規制が敷かれているので、深夜から夜明け前まで仕事していることが多い」と男性は中国メディアに語った。昼間は日雇いの仕事をしているという。

男性は、息子を探すため河北省など北京周辺の都市にも足を運び、ほとんどの収入を注ぎ込んだ。故郷には寝たきりの父親と病気の母親を残し、妻は海苔干しの仕事をしていて、1日の稼ぎは100元(約1800円)だという。

「全て生活や家庭を守るためだ。辛くても息子を見つけたい」と男性は話す。

中国版ツイッター、微博(ウェイボー)では男性について、「コロナ禍の中で最も大変な国民の1人かもしれない」「最もかわいそうな労働者」「政府は彼を助けるべきだ」などのコメントが投稿された。

いっぽう、15日に感染が確認された女性は過去2週間、高級ブランド「ディオール」を含む多くの高級ブランドショップや美容院に出入りしたり、友人とスキーリゾートへ出かけたりしていたという。

英ITV放送局アジア特派員のデビ・エドワード(Debi Edward)氏は20日の記事で、2人の追跡情報は、「所得格差の深刻さ」を浮き彫りにしたとの認識を示した。「貧富の差にSNS上ではユーザーらの怒りや不満が渦巻いている」と指摘した。

中国共産党政権は昨年末、「脱貧困」の目標を達成したと宣言したばかりだ。

(翻訳編集・李凌)