参院による「抜け落ち」のない対中人権非難決議に期待=長尾敬前衆議院議員

2022/02/06
更新: 2022/02/06

北京冬季五輪開幕式が行われた2月4日、長尾敬前衆議院議員は抗議活動に参加し、人権侵害を続ける中国共産党に開催資格はないと批判した。長尾氏は参院でより強い文言の非難決議が採択されることに期待を寄せる。日中国交正常化50年や主権回復70周年となる今年、台湾問題や日中関係をしっかり振り返るべきだと提唱した。

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長尾敬前衆議院議員(清雲/大紀元)

ーー本日は北京冬季五輪の開幕式が行われる。中国の人権弾圧が注目されるなかの開催についてはいかがお考えか。

出場されるアスリートの皆さんには全く関係のない次元の問題であることが前提だ。北京五輪に向けて最高のパフォーマンスを出し切ることができるように色々な調整をされた選手の皆さんには全力で戦っていただきたい気持ちに一点の迷いもない。

中国共産党は人権侵害や力による変更を繰り返している。こうしたなか、オリンピック憲章の基本的原則に即した国家なのかと問われれば、まったく即していない。五輪を実施できる資格はないということはおそらく全世界が認めているところだと思う。

ただ、スポーツの祭典とはいえ、ビジネスなども絡んでくる。色々な矛盾を抱えながらオリンピックが開催されたことには評価しようがない。このような状態で北京で五輪を開催してよいのかと繰り返し疑問を呈し反対を示した立場の一人としては、忸怩たる想いだ。

ーー衆院本会議で中国人権決議が採択されたことについて。

今回採択されたいわゆる12月原案と、6月原案、実は幻の3月原案とが3種類あった。結果的に「人権侵害」の文言が「人権状況」に置き換わり、「非難決議」がただの「決議」になり、「人権侵害を直ちに中止せよ」という言葉が抜け落ち、また「マグニツキー法に例示されるような制裁法を国会として作るぞ」という意志表示など、大事なところがすべて抜け落ちた。全会一致を目指したもののそうではなかった。

議員側からすれば、確かに決議されないよりはされたほうがいい。この気持ちは分かる。ただ決議の内容は、非難決議ではないということについて、日本の国会としての対応を世界がどう分析するだろうか。

日本は周回遅れの状況で人権問題に取り組んでいる。先進国家としてはこれから尊敬されなくなるのではないかという心配を抱いている。参院で北京オリンピック後に採択されるといった新たな動きがあるので期待したい。

長尾敬前衆議院議員(清雲/大紀元)

ーー参院でも同様の決議を行うとのことだが、文言や内容に変化はあるのか。

まず(前述の修正が行われる前の)6月原案で検討していただきたい。取材はすごく多いが、これまでの経緯を報道した報道機関は少ない。2月1日の国会決議についてはこぞって報じられたが。

一体なにに気を使っているのか、はなはだ疑問だ。衆議院で採択されたものではなく、6月原案で議論を進めてほしい。すべての報道機関に逐一報道してほしい。報道するところが数えるところしかない。

ーー日本国内では、人権DD(デューデリジェンス)のように、ビジネスと人権の関わりが注目されている。日中間の貿易の往来が多いなか、何ができるのか。

ビジネスと人権という概念は、多くの経営者は頭ではわかっていると思う。ただ、このままではいけないと思うものの、大きく舵を切ることができない。

いい意味での経済的な利益を追求することは企業体の責務だが、人権侵害の上に経済が成り立ってはいけないということは世界の潮流だ。ビジネス界に判断を委ねるのではなく、政治が色々な責任を担うべきだと考える。法的根拠をもって財界やビジネスに方向性を示す。人権リスクにより発生しうる経済的な損失や、あるいは必要な施策に対する予算措置なども政治がしっかりやらないといけない。

実際、法的根拠や必要な予算をきちんと講じてくれれば対処すると言ってくれる財界役員は相当割合いることは事実だ。国が主導して方向性を指し示していくことが必要だと思う。

ーー日中国交正常化50周年を迎えるなか、安倍晋三元首相は台湾関連で多くの発言を行っている。今後の日中、日台関係にどのようなビジョンをお持ちか。

「台湾有事は日本有事」であると、安倍元首相は非常に積極的な、かつ当たり前の、極めて世界的な常識レベルの言葉を発せられた。安倍元首相の発言は影響力があるので発信を続けていただきたい。

日中国交正常化50周年と同時に、今年は我が国にとって主権回復70周年であり、沖縄本土復帰50周年である。むしろこちらの方が大事だ。この70周年や50周年の意味合いを考えれば、台湾問題がどのような形であったのか、日中はどのような関係であったのか、今一度振り返る良い機会になると思う。主権回復70周年や沖縄本土復帰50周年に重きを置いた国民世論を必要とする状況なのではないかと思う。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。