1月に入ってから合計7回のミサイル発射実験を行った北朝鮮。米専門家らは、中国が北朝鮮の軍事的挑発を利用して、東アジアにおける米国の防衛同盟を分裂させる可能性があると警鐘を鳴らした。
米シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI) の外交・防衛政策専門家のオリアナ・スカイラー・マストロ氏と、ダニエル・K・イノウエ・アジア太平洋安全保障研究センターの東アジア防衛専門家のチョ・ソンミン氏は、米中対立が先鋭化する中に起きた北朝鮮の相次ぐ軍事挑発は、米国の対中抑止力に影響を与える可能性があるという見方を示した。
2人の専門家は米誌「フォーリン・アフェアーズ(Foreign Affairs)」の寄稿で見解を詳述した。
米軍のアフガン完全撤退に際して、バイデン大統領は、米政府は「中国との熾烈な競争」に精力と資源を再配置する必要があると説明した。
また、米国、英国、オーストラリアの3カ国は、中国を念頭に新たな安全保障の枠組み「AUKUS」を結成した。
いっぽう、北朝鮮のミサイル脅威が強まれば、日本と韓国は、中国政府に北朝鮮を宥めることを期待し、アジアにおける米国のその他の活動支援を減らすであろうと両氏は分析する。
韓国については、「北朝鮮以外に軍事勢力を配置することに消極的になるであろう」と予測した。
日本については、「北朝鮮による安全脅威は中国よりもっと現実的なものであり、北朝鮮の軍事挑発が続けば、日本が米国に全面的に協力して中国に対抗することは難しくなる」と分析した。
1月21日の日米首脳テレビ会談で岸田文雄首相は台湾について一度だけ言及したのに対して、両首脳ともに北朝鮮には3回も言及し、最近のミサイル発射問題を議論した。このことからも、北朝鮮問題の重みが垣間見えるという。
2人の専門家は、常軌から逸脱した北朝鮮の軍事挑発は、いまの中国政府にとって「とても好都合である」と指摘し、中国政府は、北朝鮮の挑発行為に対する米国の反応をじっくり観察しているはずとみている。
両氏は、米国が同盟国の固い結束を図るには新しい対策を練り出す必要があると助言した。
北朝鮮のミサイル脅威が中国共産党の外交切り札にならないようにするには、バイデン政権はより強固な対北朝鮮戦略を策定すべきという。
韓国とはより緊密な関係を築き、原子力潜水艦の開発など攻撃力の強化を支援する必要があるとしている。
また、米国は日本と韓国に緊密な協力関係を促すべきだと両氏は説いた。
長い間、植民地時代の問題により関係が冷え込んでいる両国に対して、「この安全保障環境の変化に対処するために、日米韓はより協調を取り、中国政府と北朝鮮にとって瓦解できない同盟となるべきである」と進言した。
(翻訳編集・叶子静)
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