インド、54の中国製アプリを禁止 国家安全保障上の懸念

2022/02/15
更新: 2022/02/15

インド政府は13日、国家安全保障の懸念があるとして、中国製の54のアプリを禁止する命令を出した。2020年にヒマラヤの国境地帯で発生した人民解放軍との衝突でインド兵が死亡したことをきっかけに、インド政府は動画アプリ「TikTok」などを含む使用禁止令を相次いで出している。

インド内務省は声明で、携帯電話のカメラやマイクを通じてユーザーの機密情報を収集するなどスパイ活動や監視活動にアプリが悪用される可能性があると指摘した。

ニューデリーを拠点とする地政学的・戦略的問題の研究コンサルタント、パシクリット・ペイン氏は大紀元の取材に対し「インドの経済のデジタル化が進んでいることや、中国製アプリや中国製通信機器がもたらす脅威を念頭に、サイバーセキュリティをより慎重に考慮するようになった」と分析する。

今回禁止されたアプリにはテンセント・ホールディングス(騰訊)やアリババグループ、ゲーム大手シー(Sea)が所有するバトルロイヤルゲーム「フリーファイア」が含まれる。地元メディアによると、多くがインドで既に禁止されているアプリのブランド再生版だという。

米国と香港のゲーム業界で20年間の投資経験を持つ元ヘッジファンド・マネージャーのジェームズ・リー氏は、中国製アプリから収集したデータは、中国共産党政権が開発した人工知能(AI)プログラムに供給されると以前大紀元の取材で警鐘を鳴らしていた。

「中国製ゲームやアプリは、世界中の人々のメタデータを大量に収集し、中国共産党のAIに送り込んでいる。中国(共産党)がアプリだけでなく、メタデータも支配してしまえば、サイバー戦争を通じて、人間の心理、つまり人々が何を考えているかを微調整することが可能になる」

偽装されたアプリ

ニューデリーに拠点を置くシンクタンク「中国分析戦略センター(CCAS)」のアビシェク・ダルビー氏によると、インド政府が2020年から禁止してきた中国製アプリの多くは、別の企業の下でリニューアルや名称変更され、インドに入ってきていると指摘する。

その一例として前述のシー社の「フリーファイア」アプリを挙げた。同社は後にシンガポール国籍を取得した中国生まれの創業者がシンガポールで設立。筆頭株主は中国IT大手テンセントだ。「中国(共産党)がインドの膨大な消費者人口に目をつけ、あらゆる規制を巧みに掻い潜りインド市場に侵入している」とにダルビー氏は分析を示した。

ダルビー氏は、中国共産党が同国のアプリの海外進出を目論むいっぽう、中国国内ではフェイスブックやツイッターなどの海外アプリを禁止していることにも言及した。

「中国共産党は、国民が世界とコミュニケーションを取ることを望んでいない。中国共産党は海外のアプリ使用に厳しい規制を課すことで国民が情報を得る機会を阻み、同党の体制維持を図っている」と述べた。

グローバル市場調査会社グランドビューリサーチが20年に発表したレポートによると、インドと中国は今後もモバイルアプリの主要市場として、エコシステムに関わるすべての参加企業に大きな成長機会を提供すると予想される。

中国共産党は急成長するインド市場の支配を狙ういっぽう、国内市場も外資を排斥して独占したいと考えているとダルビー氏は語った。

米国をはじめ国際関係担当。