欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会は23日、大企業に対して自社のサプライチェーンが児童労働や強制労働などの人権侵害に関与していないか精査を義務付ける法案を発表した。新疆ウイグル自治区での人権侵害に厳しい措置を敷く米国に歩調を合わせ、サプライチェーンから強制労働の排除を図る。
対象となるのはEU企業の約1万3000社と、EU加盟国での事業で一定の売上高基準を満たす非EU企業の約4000社。対象企業は、デューデリジェンスを会社方針に盛り込むほかその有効性を監視するよう義務付けられる。報告を怠るなどした企業は罰金を科される可能性がある。
欧州議会と欧州理事会に法案を提出した後、採択されれば加盟国は2年以内に国内での法整備を進める。ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると対象企業は少なくとも年1回、強制労働や児童労働、職場の安全性の欠如などのリスク評価が求められるという。
レインデルス欧州委員は声明で「バリューチェーンで起きていることに、もう目はつぶれない。われわれの経済モデルを変える必要がある」と強調した。
いっぽうEUでは既にフランスなどが人権問題に注意義務を課す法律を先行導入しているものの、企業によって公表された計画の大半が簡潔な記述にとどまっているなど実効力には課題が残る。
米国は昨年12月、中国新疆ウイグル自治区からの輸入を全面的に禁止する「ウイグル強制労働防止法案」を成立。強制労働によるものではないと証明できた場合のみ輸入禁止の適用外とする。強制労働を助長している海外の団体や個人への制裁も可能になる。
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